女子会。
「――第一回、巫代ちゃんから根掘り葉掘り聞こうの会~!」
「「「いぇーい!」」」
星摩さんがわざとらしく賑やかすと、他の人まで拍手する。
「……何ですか?」
バレンタインの借りで、ファミレスに一緒に来ていた。
そしたら、見覚えのある女子グループがいたのだ。
当然、事情も何も知らないので星摩さんを睨む。
「アハハ……前々から巫代ちゃんたちのこと聞きたい、って言われてて……」
「そうそう。片桐ってば、うちらと約束したのに話してくんないじゃん?」
「小早川さん……確かに機会があればとは言いましたが」
この人は確か、小早川きらりさん。
この中で一番のお洒落さんで、星摩さんとは違った存在感がある。
校則ギリギリを攻める、こざといコーディネートで先生を困らせてる。
「そうだよ~、きりきりはわたしたちよりきしきしだから~」
きりきり? 恐らく私のことですよね。きしきしは……彼芽さん?
のんびりとした、話し方までゆるふわな――そう、桑江遥さん。
小動物っぽさからかよく餌付けをされている人。
「ちょっと、きらりも遥も。片桐さん困ってるでしょ? ごめんね、片桐さん急に」
「あ、いえ。お構いなく」
とか言いつつ、興味津々といった顔の――造隼楓さん。
クラス内でも器量が良く、纏め役。
それはこのグループ内でも変わらないらしい。
「あれ? けど、誘ってきたの楓ちゃんだよね?」
「ちょっと造隼。自分だけいい子ぶってズルくない?」
「そうだよ~かえかえだって知りたがってた癖に~」
「そ、そんなことないって! 私よりもきらりの方が目輝かせてるでしょ?」
「きらりんが一番興味津々だもんね!」
「う、るっさいてば! 別にいいじゃん!」
「この中できらきらだけが恋愛経験ないもんね~」
「え⁉ 遥ちゃんはあるの⁉」
小早川さんが三人に詰められて、そっぽを向いてしまう。
何でも、お洒落レベルの高さが却って、男子からのハードルを上げてる、とか。
三人とも、星摩さん経由で知り合っていた。
それでも、本当に顔見知り程度でしかなかったはずですが。
今年、初めて同じクラスになった影響かもしれない。
「うちのことはいいってば! 今は片桐のことじゃん」
「そうだった。片桐さん早速、馴れ初めから良いかな?」
うげ、矛先が私の方に戻ってきた。
「気になる~、去年からって話だよね~」
「そうだよ! 巫代ちゃんが勉強を教えてもらい始めたのがスタート!」
勝手に人の馴れ初め話始めましたよこの人。
「ホント、あの崖に話しかける勇気がすごくない?」
「本当にそう。怖くなかった?」
「怖いとかは、全然。偏見とか噂はあまり好きじゃないので。それに――」
「「「「それに?」」」」
四人が前のめりに気味にはもる。
話すか迷うが、ここで止めたら逆に好奇心を煽ってしまうだろう。
「……悪い人ではないのは、知っていたので」
「そうだったんだ~」
「おお……! これはあたしも初耳の予感だね……!」
「その、馴れ初めという意味ではこっちの方が先かもしれません」
――あれは入学して半年ぐらいの頃。
「絵本……絵本……」
私は歩の為に、本を探しに図書室に来ていた。
当時で言えば歩はまだ幼稚園児、姉として何かと手を焼きたかった。
……困りました。よくわかりません。
図書室なんて滅多に来ないので、どこにどんな本があるのやら。
困った私はカウンター近くにいた男子生徒に話しかけた。
「あの、すみません」
「――はい、何でしょうか?」
それがまだ、私に敬語を使う彼芽さん。
私に対して敬語を使う彼芽さんという、レアリティの高い姿。
……いいなあ。敬語の彼芽さん。
「絵本を探してるんですが……」
「絵本?」
「いえ、あの、小さい子に読み聞かせたくて」
「なるほど。こっちですね」
すぐに納得した様子で先に歩く。
真っ直ぐ歩く彼に付いていくと、絵本が数冊。
「これだけですか?」
「高校の図書室ですから。あまり絵本を取扱ってないんだと思います、すみません」
「あ、いえ、責めたわけでは」
仕方ない。ある中で探そう。
しかし、絵本にあまり造詣のない私にはよくわからない。
「……よろしければ、お選びしても?」
わざわざ残っていてくれたみたいで、そう提案してくれる。
若干、戸惑いつつも頼ることにした。
歩の好きそうなジャンルを言うと、すぐに選び取ってくれた。
「――ありがとうございます。これにします」
選んでくれた本は、驚くほど歩好みだった。
「いえいえ。それではこれで」
「あの、貸し出しもお願いしたいんですが」
「あっ、と……すみません、俺は図書委員ではなくて……」
「え⁉ そうなんですか⁉」
図書室にも限らず声が出てしまった。
あまりにスムーズだから、てっきり……
「あとちょっとで管理の先生が戻ってきますので、申し訳ないですがそちらに」
「は、はい。こちらこそ失礼しました……」
「妹さん、喜ぶといいですね」
そう言って、図書室から去っていた。
……あれ私、妹って言いましたっけ。
「――という感じですね」
今思えば、あの時の彼芽さんはあまりに事務的な対応だった。
敬語という物理的な壁だけではなく、単純に距離が遠かった。
「いや、怖いって⁉」
「やめてよ、うちそういう系は駄目なんだってば……」
「途中までいい話だったのにね~」
唐突なホラー展開に、ブルブルと身震いする二人。
「かなめんっていつもこんな感じじゃない?」
その横で仲良くポテトを摘まむ人たち。
「こんな感じなの⁉」
「なんか、こう、見ただけで読み取ってくる感じだよ?」
「エンパシ~」
星摩さんも随分と慣れましたね。
この反応も、懐かしいといいますか、新鮮にさえ感じる。
馴れ初めをどこからと定義するかわかりませんが、初めて話したのはこの時。
ですが、きっかけと言う点で言えば――
いえ、あれは秘密にしておこう。私と彼芽さんだけの秘密。
「なんていうか、聞きしに勝るって感じ?」
「そうだね……変わっているというか……」
どんな噂に勝っているんでしょうか。
彼芽さんの場合、あることないこと言われてる可能性が高い。
「他には~?」
「他、ですか?」
「二人の距離がこう、グッと縮まった瞬間とかさ」
「あたしも気になる!」
顎に指を当て、去年のことを回想する。
彼芽さんとの日常は、一日一日が濃くて鮮明に覚えてる。
覚えてますが。まずいですね、話せることがないです。
一つ一つが、センシティブというべきか、嬉々として語ることはできない。
しかし、このワクワクしている人たちをどう退けるべきか。
「……あの、どうしてそんなに気になるんですか?」
彼女たちは、ただ私たちの色恋に好奇心を向けてるわけじゃない。
何かもっと、別の要因がある。
「それはだって……ね?」
「二人とも~、学校では有名人だから~」
「特に片桐は『恋? 何ですかそれ?』みたいなスタンスだったじゃん?」
「いや、興味がなかったわけでは……」
「けど巫代ちゃん、告白された時は面倒臭そうにしてたもんね」
「あれは、変な目で私を見ていたので」
告白されたことは何度かある。理由は知らない。
あの時期は荒れていたので、聞くのも面倒だったのでバッサリやった。
星摩さんのおかげで多少は落ち着いてましたが、その上で断っていた。
だからといって、今だったら受けるとかでもない。
「きしきしの方は~、浮つくどころか気配もなかったから~」
「うちらからすると、まさかのカップリングだったわけ」
まぁ、確かに。互いに好んで恋愛をするタイプじゃない。
性格だけじゃなく、どことなく諦めていた節があったと思う。
受け入れてくれる人間なんていない、と。
「言っておきますが、特別面白い話はありませんよ?」
「噓だ~」
「本当です。彼芽さん、ちょっと変わってるだけで、割と普通の人なので」
「いやいや、それこそ噓じゃん?」
「本当だよ? 少なくとも悪人じゃないよ?」
「善人でもありませんが」
「まず普通の人は、善人とか悪人で括らないと思うかな……」
「ですが――憎いぐらい優しい人です」
それが嫌いなところでもあり、釘付けになってしまうところでもある。
本当に、憎くてズルいところだ。あれを天然でやってる。
言いようのないものを混ぜるように、ストローを回す。
「……うわぁ~」
「なんかすごい……惚気を聞いたかもしれない……」
「ちょ、ごめん、うちちょっと恥ずくなってきた……!」
「まだまだ序の口だよ、これ。あたしはもう慣れたけど」
なんか盛り上がっている。
特別、惚気話をしたつもりはありませんが。
「やっぱり、片桐さんたちの関係は普通じゃないって!」
「いえ、本当に普通ですよ」
「巫代ちゃん、普通の人はそんなに早くないからね?」
「早い? 何が?」
「えっとね……ちょっと三人とも耳貸してよ」
ひそひそと私を除け者にしている。
途中「え、嘘」とか「大胆~」とか、小早川さんは顔を真っ赤にしてる。
その後も答える度に、わーきゃーわーきゃー騒がれた。
あまりの質問責めに、ちょっとうんざりし始めた時でした。
「片桐さんがこんなに惚れてるなんて、崖君は相当いい人なんだね」
「ちょっと意外」
「ラブラブ~」
……まぁ、でもこういうのもいいですね。
少なくともこの中に彼を、私たちを否定する人はいない。
彼が変わり始めてるのか、私なのか。どちらにせよ寂しくもある。
彼芽さんが、私の手から離れていく感じがして。
「何ですか? 色目使う気ですか?」
「片桐目怖っ」
「は、般若~」
「だ、出さないから大大丈夫だよ⁉」
「出さないというか、出せないもんね」
§
「――おはよう二人とも! 今日もお熱いね!」
「御園さん、おはようございます」
教室で今日も元気よく挨拶される。
ただ、いつもと違うのは――
「き、崖君おはよー」
「おは~」
「お、おはよ」
「あ、はい。おはようございます?」
この人たちはあれだ。最近巫代さんと話してる人たちだ。
こうやって時々、挨拶をしてくれるようになったのだが。
なんか、少しぎこちないな?
「あんな大人しそうなのに……」
「もののけ~」
「や、やっぱり男って狼じゃん……!」
「……あの、巫代さん? 俺、何かしましたか?」
「え? 何もしてませんが?」
「あ、アハハ……」
何故か、すごい誤解が広まってる気がした。
なろうでもAIがどうのこうのという話が出てきましたね。かく言う私もAIは多少使用しております。項目で言うと「補助利用」に当たりますね(誤字脱字のチェック、壁打ち等の利用に留まる)。なので、本文は私が書いてます(そもそもAIならもっと上手く書くと思います)ので、そこはご安心ください。
それから、こちらではなくカクヨムの方になりますが「このライトノベルがすごい!WEB大賞」に二作応募してみようと思います。規約を見る限り、なろうとの同時掲載でも問題ないと思うのでこちらも更新は続けていきます。
「カクヨムではそんなことやってんだ、へー」ぐらいに思って応援していただければ幸いです。




