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二度目の四天王ライフ  作者: 羅弾浮我
第二作:〜果たされる誓い、『四天王』としての責務〜
120/146

プロローグ:起点

 ――いつからだっただろうか。


 年下の、しかも同性に、好きという感情を抱くようになったのは。


 生まれてすぐに両親を亡くし、当時既にタイラントが憑依していた大全師に育てられたリゥ。龍神族と鬼神族――種として圧倒的な力を持つ神聖種の混血であったリゥは、当時それを知る由もなかった反面で確かにその力を見せていた。

 先ず、全属性に適性を持つという前代未聞の才能。更には体術も教えられたものを素早く飲み込み、その驚異的な学習能力でメキメキと戦闘力を上げていった。

 圧倒的な成長を遂げたリゥは、当時より試合形式の模擬戦でも連戦連勝。自然、且つ必然的に、四天王候補者の一人となった。

 四天王候補者の中でも、やはりリゥの実力は周囲の候補者を数段凌駕している。そんな桁外れな実力に、リゥは自ら動かずとも実力を証明したい好戦的な候補者から幾度となく挑戦を挑まれる。一戦、二戦、三戦……挑まれた試合で、リゥは息一つ切らしていなかった。


 リゥの他にいた候補者は合計で四十七人。リゥは、四天王候補者となった日から約一週間でそのうちの四十六人を模擬戦にて破った。そしてその四十六人との勝負は、全て相手から挑まれてのもの。リゥは平然と過ごす中で、挑まれた試合にのみ応えていた。


 が、しかし。その日から一ヶ月しても二ヶ月しても、最後の一人は模擬戦を挑んでこない。四天王候補者としての訓練には、強制的な模擬戦がないのだ。やりたい場合に申請し、四天王もしくは天使立ち会いの元で勝負を行う。


 模擬戦での勝敗も四天王になるためには重要視されるものであるため、一度リゥに敗れた者はもう自分からは挑んでこない。リゥは約半年の間、一度も模擬戦をしなかった。


 ▲ ▼ ▲ ▼ ▲ ▼ ▲ ▼ ▲ ▼ ▲ ▼


「――名前、なんてゆーの?」


「――?」


「だから、なーまーえ! 俺はリゥ。君は?」


 四天王候補者になってから半年。何故このタイミングだったのか、それはリゥ本人にも分からない。しかし、リゥの直感が勝手にそう悟ったのだろう。リゥは、生まれて初めて自分から他人に声をかけた。


 今まで、誰が前を通っても、誰の横を通っても、一切自分から話しかけなかったリゥ。そんなリゥが自ら動き、一人の少年に話しかけたのだ。

 誰も予想し得なかった目前の光景に、その周囲では身構える人さえいる。


「――ミツル」


「ミツル、か……みーちゃん、みっちゃん……みぃたんだな!」


 ミツル。そう名乗った少年に対するリゥの反応は、それもまた誰も予想し得なかった物。声のトーンを普段より数段階上げ、更には今まで候補者の前では一度も見せなかった万遍の笑みを浮かべる。


「――っ?」


「――ッ!?」


 たった数十秒の時間で畳み掛けられた、予想外過ぎるリゥの言動。極めつけ、万遍の笑みであだ名まで付けたリゥにミツルは眉をぴくりと動かし、その場にいた他の候補者は全員揃って息を飲んだ。


「――何、その呼び方」


 今までの寡黙からは全く予想できるはずもなかったリゥの態度。口調、表情、振る舞いのどれをとっても、リゥのそれはフレンドリーと言わざるを得ない。

 しかし、部屋の隅で一人静かに座っていたミツルがリゥに向ける視線は細く鋭く、お世辞にも友好的とは言えないものだった。


「だってー、半年経ってるのに君だけは全く俺に話しかける様子がないから。正直一番興味あったから、我慢できなくって。――だから、今から俺と模擬戦(タイマン)しよ?」


「――ッ!?」


 決して友好的ではないミツルの態度に一歩も引かず、淡々と話し続けるリゥ。そして最後には、リゥが今まで一度もしてこなかった模擬戦の申し込みを堂々と言い放った。


 今までリゥが勝ち越してきた四十六戦は、全て相手からの申し込み。そしてそのどれもを顔色一つ変えずに、リゥはまるで作業かのような態度で終わらせていた。


 にも関わらず、そんなリゥが自らミツルに模擬戦を挑む。それは他の候補者にとって、予想外を通り越し聞き間違いとすら疑える状況だった。


「いいよ。その代わり、模擬戦で俺が勝ったらその呼び方やめてくれる?」


「悪い、無理! 多分俺負けるし、それは約束できないわ」


「――ッ!?」


「あー……悪いけど、さっきから事ある毎に息呑むのやめてくれる? 気が散るっていうか、うるさい」


 リゥの思わぬ言動が連続し、その度に息を呑んできた他の候補者。しかし、その反応はわざとでもなければ誇張でもない。リゥの今の言動が、それほど今まででは考えられなかったようなものなのだ。

 今まで顔色一つ変えずに模擬戦を勝ち越してきたリゥが、勝負をする前から負けると言い切った。その揺るぎない事実に、彼らは自分の耳を疑うことを躊躇出来なかったのだ。


「負けるって分かってるなら、なんで挑んでくるの?」


「え、そんなんやりたいからに決まってるじゃん。他はどうでもいいけど、君とはやってみたい」


「――変わってるね、随分」


「まーね!」


 当時、リゥのこの言動にどんな意味がありどんな真意があったのか。ミツルはそれを知る由もなかっただろう。

 普段は誰よりも寡黙で無表情だったリゥが、初めて自ら動き、話しかけ、笑い、絶対的な力を持っていながら的確にミツルとの力量差を測って負けると断言した。大きな反応は出さなかったものの、目を見開くその表情には明らかに驚きが表れていた。


「いいよ、やってあげる」


「っしゃ! さんきゅっ!」


 リゥのあまりにも敵意を見せない態度に毒気を抜かれたのか、次第に表情が緩んできていたミツル。そしてリゥの優しいオーラを前に、とうとうミツルは口角を上げ軽く微笑みを見せた。


 ▶ ▶ ▶ ▶ ▶ ▶ ▶ ▶ ▶ ▶ ▶ ▶


 ミツルが微笑みを見せてから数十分。先の会話の直後に二人は闘技場へと場所を移し、四天王と天使全員立ち会いの元激戦を繰り広げていた。


「――そこまで! 勝者、ミツル!」


 ミツルの繰り出した光の矢がリゥの喉元に達しようとした瞬間、素早い反応で審判が試合を止め模擬戦はミツルの勝利で終了した。


「いやー、やっぱ負けたぁー! あんなこと言ってワンチャン勝てたらなーとか思ってたけど、さすがにそんな甘くなかったかぁー!」


 喉元寸前まで来ていた光の矢が消えると、リゥはその場に仰向けで倒れて天を仰ぐ。

 額から流れる汗を乱雑に拭い、汗でびしょ濡れになっていた前髪をかき上げるリゥ。そしてリゥは四肢を投げ出し、清々しいほどの笑みで大きく叫んだ。


「予想通りだったとはいえ、負けたのに悔しいとかは思わないの?」


「ん? いや全然。逆に同じ候補者に自分より強い人がいて嬉しい。そっちの方が張り合いあるし」


 自分の足元――つい数秒前までは激戦の場であった地面に寝転がり、素直に負けを認めるリゥ。そんなリゥにミツルもまた顔の汗を拭い、息を整えながらリゥに向かって首を傾げる。


 下からミツルの顔を見上げているリゥの目には、敗北による悔しさや苛立ちなどが全く見えない。リゥの目から感じられるのは、全力を出し尽くして戦ったあとの充足感。そして自分よりも強い存在を目の当たりにした喜びだ。


「ふぃー……満足満足! これからも定期的にやろーね! みぃたん!」


「その呼び方はやっぱり直してくれないんだ……」


 足を大きく開いたまま上半身だけを起こし、ミツルを見上げながら首を傾けニコッと微笑むリゥ。

 そんなリゥの全くと言っていいほど今までの寡黙な面影を残していない様子にミツルも毒気を抜かれ、やれやれといった様子で苦笑いをしながら首を振る。


「んー、そーねー。俺がみぃたんに勝てたら別の呼び方考えるよー」


「そういうのって、普通かった方が俺に勝てたら的な感じで言うものじゃない? 俺がわざと負けたらどうするの?」


「ん? いやいや、みぃたんはわざと負けるとかしないでしょ。俺は今の強くて真面目なみぃたんに惚れたんだから、そこを曲げられると俺も興味とか好意は失せちゃいそう。あだ名で呼ぶどころか他の人と同じように魅力なしって感じでスルーしちゃうかな」


「スルーって……え、ちょっと待って! 今惚れたとか好意とか言った!?」


 興味を持った今の魅力が無くなれば、その時は直ぐに手のひらを返し他の候補者と同じような態度をとる。そんなニュアンスの言葉にとんでもなく自己中心的な考え方を感じ、再びため息を吐くミツル。しかし、呆れたリゥに向けて放った言葉の途中でリゥの言葉に含まれていたいくつかの単語に引っかかる。

 惚れる、好意。恋愛事に使うようなその言葉がミツルの思考回路と発言を阻み、目を大きくカッと見開いた。


「んー? さーねー」


「ちょ、ちょっと! 今のどういうこと!? ねぇ! 待ってってば!」


 多少は濁しつつもかなりストレートなリゥの告白を聞き返したミツルに、素早く立ち上がり服に付着した土を払いながらスタスタと歩いて行くリゥ。そんな言うだけ言って相手の疑問を解消させないままその場を離れようとするリゥの背中を追い、ミツルは慌てて走り出す。




 自分勝手。自己中心的。リゥに対するミツルのイメージは、そんな負の要素が強かった。

 自分よりも弱いことが分かっていながら堂々と大勢の前で勝負を挑み、瞬殺とは言わないまでも案の定コテンパンに倒され、更に負けた上でその場に寝転がり万遍の笑みを浮かべ、やはりたん付けのあだ名呼びも継続。そして極めつけには、相手に理解させるつもりのない告白を言うだけ言って一人その場から立ち去ろうとする。


 お世辞にも好印象とは言えないが、何故かリゥに憎悪などの黒い感情は抱けない。


 リゥのことも、自分のことも、この頃のミツルにはよく分からなかった。しかし、そんなミツルもリゥの計り知れない思惑に侵されリゥを好きになるまでには、それほど多い時間は要さなかった。

皆様、二度目の四天王ライフを読んでくださりありがとうございます!

100話に渡る壱章が完結しまして、今話からは愈々弐章へ突入です!

壱章では転生し再来した聖陽郷で待ち受けていた問題を解決し、弐章では『四天王』としてのリゥの勇姿を書き連ねさせて頂きます!リゥが四天王になる前の今回のプロローグから始まる、四天王となったリゥの使命。そして新しく出来た後輩を守る先輩としての龍翔の使命。守るべき者の為に全力を尽くすリゥの姿を、どうぞお楽しみください!

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― 新着の感想 ―
[一言] リゥを凌駕する実力を持つみぃたんにサラッと告白をするリゥと、なんだかんだ言って満更でもない様なみぃたんのやり取りにキュンキュンしてしまって仕方ないですねw正直好みド直球ストライクな展開だった…
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