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二度目の四天王ライフ  作者: 羅弾浮我
第一作:〜異世界への突入、『聖陽郷』での波乱〜
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98話(幕間):開花した能力

 朝日がまだ弱い頃に起き、今日この日から、リゥは本格的に前世と同じような日々を送る。


 先ずは部屋のカーテンを開け、乱れた布団を整える。そして一階に降りると軽く口を濯いで顔を洗い、一気に眠気を晴らす。その後寝間着から動きやすい服装に着替えると、リゥは直ぐに玄関へ。靴を履き庭へ出ると軽く体を動かす。

 僅かな汗をかく程度の軽めの運動を済ませると、リゥはそのまま台所に向かい手際良く朝食の準備。朝はとにかく質でも量でもなく速さを重視。

 ――しかし、ここからは普段と少し変えなくてはならない。先ず、量はいつもの六倍、そして少し張り切り質も上げる。


 鼻歌を歌いながら料理を進め段々と強くなる日差しを感じていると、階段から複数人の足音が聞こえてきた。


「――リゥくんおはよ!」

「――龍翔くんおはよ!」


 リビングのドアを開けて台所で料理をするリゥに声をかけたのは、アキラ、優輝、蒼空、翼、蓮の五人。声をかけた彼らの顔は、笑顔であったり眠そうな半目であったり様々だ。


「おはよ。向こうの洗面所で顔とか洗ってきな。タオルは人数分用意してるから、後はアキラ分かるよね?」


「うん、大丈夫! 行ってくるね!」


「はいよー」


 心の底から可愛らしいと思えるアキラたちに笑顔で手を振り、リゥは再び朝食の準備を続ける。


 ▶ ▶ ▶ ▶ ▶ ▶ ▶ ▶ ▶ ▶ ▶ ▶


「――ごちそうさまでした」


 六人同時に合掌し、リゥたちは声を揃えて朝食を摂り終える。

 するとリゥはアキラたちをその場に残し、一人で奥の部屋へ。そして暫くした直後、両手に大量の服を抱えて戻って来る。


「ほい、これ今日の服な」


「あ、うん……そういえばだけど、昨日の水着とか寝間着とか、なんでこんなにあるの? 俺と蒼空はまぁ龍翔くんのでもいいけど、翼のやつとかはサイズ違くない? 龍翔くんのじゃないでしょ」


 リゥが持って来た大量の服に、目を細め首を傾げる優輝。家の作りから置いてあるものまで、どう見ても一人暮らしだったとは思えない優輝は明らかな違和感を覚える。


「あー、俺が前世でこの世界にいたことは話したでしょ? んでその時から四天王だったんだけど、その仕事の関係で小さい頃に親と離れちゃった子とかをこの家で育ててたんよ。まぁ一緒に暮らしてたみたいな。その時の関係で家はこんなに大きいし、服は昨日いた十二人衆って十二人の子どもたちが着てたやつ」


「あー! あの龍翔くんのことお兄ちゃんって呼んでる人たち?」


「そーそー。まぁいつまでも人のやつじゃあれだから、今日の帰りに色々買い物でもして帰ろうか」


「おー! やったー!」


 リゥの説明で昨日会っていた十二人衆にも納得がいき、漸く違和感が解消された優輝。そしてその後のリゥの言葉にも、やけにテンションが上がる。


「あれ? 優輝ってそんなに買い物好きなんだっけ?」


「あー、あれあれ。龍翔くんがクリスマスにネックレスあげたでしょ? あのプレゼントが嬉しかったらしくて、優輝ってばあれからずっとお洒落にハマってるの。まぁそうは言ってもほとんど自分じゃ決めないけど」


「ちょっ! 余計なこと言うなよ! 違うから! そんなんじゃないから!!」


 全くイメージがなかった優輝の反応にリゥが首を傾げると、リゥの疑問に優輝ではなく蒼空が答える。

 そんな蒼空の返答にリゥが目を丸くし優輝の方を見ると、優輝は顔を赤くして蒼空の腕を強打。そしてリゥの方に視線を戻し、必死に弁明する。


「ほーお? なるほどなー。だからそのネックレスずっと付けてるのかー」


「うっ……」


 蒼空の言葉を必死に否定する優輝の首には、確かにリゥが渡したネックレスが付けられている。そんな優輝のネックレスに目を向けて微笑むと、優輝は口に手を当てて更に顔を赤面とさせた。


「ツンデレかわいっ」


「うるっさい!!」


「はいはーい。もう出発するから急いでねー」


「あああああああーー!!! ――絶対いつか仕返ししてやるーッ!」


 最後の最後まで揶揄ったリゥは満足気にその場から離れ、既に着替え終わっていたアキラたちを連れて玄関へ向かう。そんなリゥの後ろ姿に優輝も慌てて着替えを済ませると、後ろから広い家に響き渡るほど大きな声で宣戦布告。生まれてから一番大きい声を出し、若干喉を痛めながら走ってリゥたちに追いつく。


 ▶ ▶ ▶ ▶ ▶ ▶ ▶ ▶ ▶ ▶ ▶ ▶


「――おや、随分お早いですね。昨日は確か昼過ぎと仰ってませんでしたか?」


「あー、そのつもりだったんだけどな。昨日の夜で色々と思いたる節が出来て。もし早くても大丈夫なら色々相談しようかと。――忙しいか?」


「いえいえ! 私も昼過ぎでは些か帰りが遅くなってしまわないかと危惧していたところでしたので。早めにお越し頂けて良かったです」


 事実、今の時間は午前十時程度。昼前という約束でも少し早めの時間だ。

 しかし、そんなリゥの予定外の訪問にもシムは嫌な顔一つせず笑顔で迎え入れる。


「話が被ってもあれだから、先にシム博士の話から聞きたい。俺だけじゃなく、アキラの同行を強制するほどの話って何だ?」


 ラボに着くや否や、最上階の最奥――研究長室へと案内されたリゥ。その中には勿論アキラや優輝たちも同席していて、リゥの真面目な雰囲気にアキラたちの緊張も高まる。


「――まぁ重い話ではありませんので、リラックして聞いてください」


「ん? そうなのか。てっきり重い話かと思って身構えちまった……悪い」


「いえいえ。最悪の事態を想定するという事は必要なことですから」


 シムの言葉にリゥの目付きが柔らかくなり、その一室を覆っていたただならぬ雰囲気が一瞬にして消えた。ただリゥが身構えているだけで冷汗をかき手足が震えるほどの空気に包まれるとは、リゥから出ているオーラがどれほど強大なものかが分かる。


「先ず最初に、『能力』についてはリゥ様も知っていると思います」


「ああ。全ての人が持つ個人特有の力で、その能力を開花させられれば特有の能力が使えるようになる。四天王で言えば、レイの誘霊力、ゴウの重火力、ゲンの超変換だな」


 精霊の力を引き出す誘霊力と、注いだクラフトに階乗して火力が上がる重火力、クラフトを生命力に変換し身体能力を底上げする超変換。


 誘霊力の強みはどの属性の精霊でもその精霊以上に力を引き出せること。つまり精霊の力を借りるだけの精霊使役とは違い、精霊の力を引き出した上で利用することが出来る。更に複数の精霊の力を同時に引き出せるため、精霊が多い地帯では無類の強さを誇るのだ。


 重火力の強みは普段クラフトに比例して威力が増す想術を、注いだクラフトに階乗して増幅させること。つまり、威力が百の想術に二倍のクラフトを注げば百の二乗で一万の火力になる。この能力は火の想術にしか作用しない上に火属性以外の想術を使えなくなるが、火属性に特化したゴウが持つことで実質最強の火力が完成する。


 超変換の強みは、体内にあるクラフトでそのまま身体能力を向上させられること。クラフトを何かに変換する時には、必ず余分なクラフトを消費し、注いだクラフトを百パーセント利用することは出来ない。しかしゲンの超変換は、変換による消費を完全に無くしクラフトを身体能力向上に利用する変換時にも百パーセントの変換効率となる。


「それなら、リゥくんも能力ってあるの?」


「んや、俺はまだ能力を開花させられてないんだ。なんの能力を持ってるかも、今のところ全部予想の域を越えないものばっかりでな」


「そうなんだ……なんかごめん」


「え? いやいやいや、いいっていいって! 事実だし、とっくの昔に乗り越えた壁よ。今更全くこれっぽっちも気にしてないから!」


 四天王三人が遥か昔に開花させている能力だが、リゥは未だに開花させられずにいる。そんなリゥの事情を知らなかったアキラは、軽率だった質問に目を伏せて謝った。

 しかし、当の本人はそんなこと全くもって気にしていない。リゥのその言葉に嘘はなく、裏を返せば能力無しで四天王最強と言われているのだ。その実力に、寧ろ鼻を高くしていた。


「――確かに、今までのリゥ様は能力を開花させられずいらっしゃいました。ですが、その時からリゥ様の能力にも候補はいくつかあったのです」


「候補……?」


「ああ。能力ってのは誰しもに備わる可能性のあるものなんだけど、生まれてからの生活によって開花するかどうか、何が開花するか、ってのが決まるんだよ。例えばゴウの場合、あいつは火の適性しか持ってなかったから火を極めようとして、その過程で重火力の能力を開花させたんだ」


「てことは、リゥくんの生活の仕方からこの能力が開花させられるんじゃないかって言うのが分かるってこと?」


「そーそーそーそー! 頭良いなぁアキラはー!」


 シムとリゥの説明でしっかりと理解出来たアキラの頭を、リゥは笑顔でわしゃわしゃと掻き回す。


「うぅー……もう! それで! どんな候補があったの?」


「んー? そーだなー。クラフト消費で集中力が上がる能力とか、そもそも全属性に適性を持ってるのが能力なんじゃないかとか、幼い子どもに好かれる能力とか?」


「幼い子どもに好かれる能力って……」


「いやいや、割と真面目にその候補あったのよ? フェロモンの関係じゃないかとかなんか色々……よくわかんねーけど」


 完全にネタだと思いため息をついたアキラに、真面目な顔で返答するリゥ。そんなリゥの言葉にアキラは目を丸くしシムの顔を見るが、どうやら本当らしい。苦笑いとも思える微笑で、アキラは静かに頷かれた。


「まぁ、それともう一つ。最有力候補だったものがありますよね?」


「――大切な人のために強くなる、だな。もしかして、アキラを連れてきたのはそれが理由か?」


「ええ。リゥ様が転生しこの地に戻ってからの様子、状況を全て考慮し、昨日の戦闘に於いて能力が開花された可能性が高いと思われます」


 シムの言葉に、リゥはゆっくりと目を見開く。

 能力については気にしていない。その言葉に嘘はない。しかし、能力が開花せずに悩んだ時期もあれば、早く開花して欲しいと望んだこともあったのは事実。受け入れて飲み込んだからと言って、能力の開花を諦めていた訳ではなかったのだ。


「――一応、開花したと思える根拠を訊いてもいいか?」


「そうですね。先ず初めに、昨日の戦闘のことです。これは話を聞いただけの私よりも、実際に戦っていたリゥ様の方が実感しているのではないですか?」


「確かに、明らかに今までと違った感覚はあった。龍神族と鬼神族の力に目醒めたってのもあるだろうけど、その他にも内側から湧き上がる何かがあったのは確かだ」


 その場に勢いよく立ち上がり叫びたい気持ちを押し殺し、落ち着いて話を進めようとするリゥ。顔の前で組んだ手に顎を乗せ、段階を踏んでシムとの話を続ける。


「きっと、それも関係はあると思います」


「でも、湧き上がったあの感情は今までにも何回かあったぞ? イルが暗黒會のヤツらに集団で襲われて大怪我した時とか、イオが人質にされた時に暴走する直前とか……」


 あの時のリゥに湧き上がった感情は、今までに何度かあった″能力が開花しそうな時″の物と瓜二つ。

 しかし、過去にもあった感情で開花するのはおかしいだろうと肩を落とすリゥに、シムは新たな可能性を提示する。


「確かに、過去と同じ感情で開花することは考え難いです。しかし、それは過去と同じ状況だった場合の話。今回は――と言うより、リゥ様にとっての今世は今までの状況と大きく異なります」


「大きく……そりゃまぁ転生した世界が違ってアキラたちとも会ったけど、それが何かあるのか?」


「もしも、リゥ様に眠る能力が一人のものではなく二人で一対になるものだとすれば?」


「二人で一対になる……つまり、俺とアキラの能力が重なって初めて開花するってことか?」


 分かりやすいジェスチャーを混じえ、リゥとアキラの双方と同時に目を合わせるシム。そんなシムに二人はお互いに目を合わせるも、リゥは首を傾げて視線を戻す。


「いや、アキラは元々こっちの世界の人間じゃない。能力はこっちの世界特有のものだし、それがアキラにあるってのはおかしな話じゃないか?」


「確かに、本来なら優輝くんたちのように向こうの世界から来た方には能力の開花はありません。しかし、アキラくんは別です」


「なんでだ?」


「お忘れですか? こっちの世界に来てからすぐ、アキラくんには核を成長するための施術を施しているんです」


 シムの言葉に、リゥとアキラは目を丸くした。


 リゥが核を戻す時、アキラにも核を成長させるための施術を行った。もしも核が今いるこの世界に適応出来るように成長しているのであれば、アキラの核に能力が宿ってもおかしくはない。


「そしてアキラくんにリゥ様と同じ能力が宿る根拠は、いくつかございます。先ず初めに、今お話した施術の際。お二人の施術にかかる時間が計算よりあまりにも長いことから、レイ様は二人が離れたからではないか――と推測されました。その推測を受けて私がお二人の思考を繋げました」


「思考を……繋げる?」


「はい。あの時お二人には眠って頂いていたので、お二人の思考を繋げ夢という形でお二人を引き合せるように仕向けたのです」


「――! 確かに、言われてみればあの時の夢はアキラが出てきたな……」


「俺も、リゥくん出てきた……リゥくんが出てくる前はずっと暗闇の中にいるみたいで不安だったんだけど……」


 色々と感じられていた矛盾や不安が次々に訂正され、リゥの頭の中では無数の点が徐々に線で繋がって来ていた。

 本来科学的にはありえない事なのかもしれないが、聖陽郷は東陽都のイータンを除いて科学があまり発展していない。そのため科学者の科学的な考え方もそこまで頑固なものではなく、感情や心情などを考慮した上で色々な推測ができるのだ。


「どうでしょう。試してみる価値は十二分にあると思いますが……」


「――アキラはどう思う?」


「俺? 俺は別に……能力とかまだよく分からないけど、リゥくんと一緒とかなら俺は大丈夫」


「――。――ん、分かった。やってみよう。俺とアキラの能力、調べてみてくれ」


 隣にいるアキラの手を取り、リゥは開花したかもしれない能力の確認を決断。その後シムに案内されてラボ内を暫く歩き、リゥたちは能力を調べるための装置がある部屋へと向かった。


 ▶ ▶ ▶ ▶ ▶ ▶ ▶ ▶ ▶ ▶ ▶ ▶


「――やっぱこの装置は何がなんだかわかんねぇよな……どっからみても複雑すぎていつまで見ても理解出来ねぇ気がするわ」


 案内された部屋に備わる大きな装置に、リゥを含めアキラたちは目を丸くして唖然とする。


 今目の前にある装置は開花した能力とその詳細を調べるための物で、能力が開花していない状態ではそれを調べることは出来ない。今までにも何度か調べたものの、リゥの結果は毎回の如くエラーだった。


「今日で本当に終わる――かもしれない」


「まぁ、それもやってみないと分かりませんよね。準備は整っていますよ。早速始めますか?」


「――ああ。どうせ、開花しててもしてなくても今何したって無駄なんだ。ちゃちゃっと調べて現状を知ろう」


 そう言うと、リゥはゆっくりと装置に近付き目の前のパネル手を置く。そしてリゥは覚悟を決めたように深呼吸をして目を瞑り、それを確認したシムがレバーを下ろし装置を起動させた。


「――、――。――――」


 沈黙の中にガチャガチャという機械音だけが響き、前に立っているリゥの背中をアキラたちはじっと見つめる。


「――完了です。結果は今すぐにでもみれますが、とりあえずアキラくんもやっておきましょう。二人で一対になる能力は流石に今まで見たことがないので……」


「あ、はい……手を置くだけ?」


「ん。痛いとか何もないから、心配しなくていいよ」


「分かった」


 シムの言葉にアキラはリゥと入れ替わりで機械の前に立ち、同じように深呼吸をしてゆっくりとパネルに手を乗せる。


「――さて、それではお二人の結果を一気に出力しましょうか。画面右がリゥ様、左がアキラくん。青い画面に白文字があればそれが開花した能力とその詳細です。――赤い画面は……残念ながらということになります」


「――――」


「――そんな心配そうにしてんなって! もしエラーだとしても困ることは無いし、アキラのせいとかもっとないからな?」


「うん、ありがと」


 装置の画面を見ながら僅かに震えているアキラの肩に手を置き、後ろから優しく声を掛けて微笑むリゥ。そんなリゥの言葉に頷くと、アキラの震えは自然と治まっていった。


 そして――、


「――! 終生の……」


(ばん)……い……?」


(つが)いでしょ?」


「――っ! ちょっ……」


 二つの画面に出力された、『終生の番い』という文字。しかしリゥが「終生の」を読んだ後にアキラ「つがい」を「ばんい」と読み、その間違いを蓮がサラッと訂正。アキラの間違いと直球過ぎる蓮の指摘に、リゥは緊迫していた空気の中で思わず吹き出してしまう。


「れ、蓮……!」


「え、何!? 俺が間違ってた? つがいじゃないの……!?」


「いやっ……つがいであってんだけどっ……ド直球過ぎて……っ」


 アキラの読み間違いと蓮の指摘が思いの外ツボに入ったらしく、リゥは小刻みに震えながらその場に蹲る。


「あ、アキラがっ……ばんいって……! 一回堪えたのに……蓮が素直にサラッと指摘するからっ……」


「う……つ、つがいなんて読めないし! 番の読み方はばんしか習ってないじゃん!」


「いや、そうだけど……ばんいはおかしいでしょ……」


「だって他に読み方分からなかったんだもん! てか蓮まで俺のこと揶揄おうとしないでよ!?」


 未だツボに嵌っているリゥに、顔を赤くして必死に弁明するアキラ。しかしそんなアキラの言葉に蓮も少し面白みを感じてきてしまい、二人に笑われるアキラは更に顔を赤くする。


「てか! 逆に読めるのがリゥくんと蓮だけでしょ! 優輝くんとか翼も分からないでしょ!?」


「いやまぁ……うん。習ってないし俺は読めなかった」


「そうね……俺も無理。ばんいじゃないなとは思ったけど、つがいは読めない」


「ほら! 優輝くんも蒼空くんも読めないじゃん!」


 確かに、番いを読める人は綺麗に分かれるかもしれない。番いを読めるのは、そこそこに勉強をしている人かある一定の趣味を持つ人が多いだろう。そしてその前者が蓮であり、後者がリゥだ。


「え? でも俺も読めたよ」


「え!? 翼読めんの!? なんで!? 俺と点数変わらないじゃん!」


「だって龍翔くんの部屋の奥にあったびーえ……「あああああああああああああああッ!!!」


「うわっ!? 何急に変な声出して……」


 番いが読めなかった三人に、頬に指を当て首を傾げる翼。番いが読めていた翼に、テストの点数がほぼ変わらないアキラはもう失礼なほどに驚く。

 そしてそんなアキラの言葉に翼が笑顔で答えると、その言葉をリゥが大声を出して一刀両断。

 突然のリゥの大声に耳を塞ぎ、アキラは心臓をバクバクさせながらリゥを見上げる。


「アキラはごめん。優輝たちもごめん。そして翼はこっちに来てようか」


「え、なんで?」


「ハグするから。ほら、こっちに来て?」


「ん! それならわかったー!」


 滅茶苦茶なほどに強引だが、リゥにとって今の翼の発言は爆弾そのものだった。

 翼からその言葉が発されないようにと、リゥは翼の顔を胸に当ててしっかり抱きしめる。


「――別に、龍翔くんの部屋の奥にそーゆー本があることくらいみんな知ってるよ?」


「は!? え、なんでっ!? 翼には一緒に遊んだ時教えたけど、優輝たちには教えてねぇよ!?」


「だってハロウィンの時に優也くんと龍翔くんの部屋の探索したから。龍翔くんがお風呂入ってる間、色々教えてもらった」


「マジで言ってんの!? ――あ! 俺の手錠とか見たのってその時か! アイツ余計なことしやがってぇぇぇ……!!」


 必死に翼からの暴露を止めたリゥだが、それはもう一年ほど遅かったらしい。翼よりも早くその事実を知っていた優輝たちに目を丸くし、優輝たちにそれを教えた優也に青筋を立てるリゥ。

 しかし、それでいて優輝たちはずっと龍翔のことを慕っていてくれたのだ。そしてそれは、リゥになっても変わらない。

 今はもう、それだけの事実があることだけでリゥは納得する。


「まぁ、もうしゃーねーわな。知ってたんなら無理に隠すことなかったなぁ……」


「――別に、そんなことで誰もリゥくんのこと嫌いになったりしないし。リゥくんって変なとこで気にしすぎ」


「うー……だって嫌われたくなかったんだもんー」


 ため息を吐きながら頭を掻くリゥに、アキラはやれやれといった様子で首を振る。

 そんなアキラの様子にリゥが口を尖らせると、真下から何やら気持ち良さそうに微笑む翼と目が合った。


「んーふふっ。龍翔くんかわいー!」


「うるせーぞっ……てぃ!」


「いたーっ!」


 揶揄うでも煽るでもない翼の素直な言葉に、リゥも気が抜けたように微笑む。そしていつまでもリゥの顔を見上げて笑っている翼に軽くデコピンすると、翼は弾かれた額をリゥの胸に押し当てギュッと腕に力を入れる。


「えぇっと……能力のお話は……?」


「ん? ――あっ、忘れてた! すまん!」


「――あ、いえ……もう初めてよろしいですか?」


「ああ。勿論だ、頼む」


 思わぬ所で脱線したリゥたちの横で、頬を掻きながら苦笑いしているシム。既に元の話を忘れていたリゥは素で首を傾げ、シムは一瞬完全に言葉を失った。


「アキラくんたちにも分かるように、一から話させて頂きますね」


 前世では一度も見たことがなかったであろうリゥの様子に戸惑いながらも、シムはコホンと咳払いをして話を始める。


「先ず、能力は基本的に開花させていた方が有利です。能力の中での有利不利は勿論ありますが、能力がない方を相手に能力のせいで不利になることはほぼありません」


「まぁそうだな。ないよりはマシとか言うし、あるに越したことはないだろう」


「ええ。基本的にはそうなんです。ですが、あまりにも強大な能力を持つ場合は『能力の代償』のせいで不利になる場合があります」


 能力の代償。それは、他の能力と比べ明らかにその効力が高い能力に付くもの。

 例でいえば、ゴウの重火力だ。重火力を持つゴウの前で、火力勝負は完全な自殺行為。リゥが今の持てる力を全て使っても火力勝負では勝てない。しかし、重火力を持つ者は火属性以外の想術、その一切が使えなくなる。適性などを考慮してもしなくても、完全に使えなくなるのだ。


「つまり、強大な能力を持ちその代償を負った場合は、詰み(・・)という形に持ち込まれる可能性が高いのです」


 代償による詰み。

 火属性のみしか使えなくなる重火力の場合の詰みは、相手に火属性が効かない場合だろう。相手に火属性の想術が効かないとなれば、ゴウは必然的に肉弾戦で勝負決めなくてはいけない。ゴウがあれだけの高火力を持っているにも関わらず体を鍛えているのは、考えられる詰みの状態でもしっかり対処出来るようにするためだ。


「そのことを踏まえた上で、リゥ様とアキラくんの能力のお話をしましょうか」


 戦闘に於ける詰みとは、その戦闘での敗北と直結する。それは、この世界での戦いは疎か、喧嘩すらしたことのないアキラたちでさえも分かることだ。

 そんな話の後にする″それを踏まえた話″に、アキラはゴクリと息を呑んだ。


「リゥ様とアキラくんの能力、『終生の番い』ですが、その能力がこちらです」


「――この能力を持つ片方(かたえ)は、番いとの距離により戦闘能力が上がる」


「――この能力を持つ片方(かたえ)は、番いの相手に限り無類の支援が行える」


「「――但し、番い同士の距離が一定以上離れた場合、その距離に応じて全ての戦闘能力が低減。そしてその距離が一定距離を満たした場合、番いは双方とも終焉を迎える」」


 シムに誘導され、一度は完全に意識外へといつてしまっていたパネルに再び目を向けるリゥとアキラ。そしてお互いに一つずつその文を読み上げ、最後の一文を声を重ねて読み上げた。

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