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二度目の四天王ライフ  作者: 羅弾浮我
第一作:〜異世界への突入、『聖陽郷』での波乱〜
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92話:固い意志

「――嫌だ。絶対に嫌だ。龍翔くんが残るなら、俺だって残る。絶対に、何があっても残る!」


「――っ、駄目だって……言ってるだろ!? 分かれよ! 分かってくれよ……! それが優輝たちのためなんだって!」


 優輝たちであれば、一回目の説明で分かると思っていた。そう信じていた。だからこそ、龍翔はこの世界のことを話したのだ。

 行いの善し悪しくらいは、分かると思っていた。

 しかし、そんな龍翔の考えを見事に翻す優輝。一歩も引こうとしないその言動に、龍翔は勢いよく立ち上がり初めて後輩に言葉を荒らげる。


 今まで、後輩が何をしても声を荒らげることのなかった龍翔。後輩の指導を率先していて、指導割合で言えば顧問を含めても八割ほどが龍翔の指導だった。

 そしてその指導も的確なものが多く、甘やかすわけではない。甘やかさない優しさを持った龍翔の指導は、顧問も認めるほどのものだったのだ。


 そんな優しさに後輩からも『仏』とすら呼ばれていた龍翔が、初めて後輩に声を荒らげる。


「そんなに大きい声出しても、絶対に戻らないから。龍翔くんがどれだけ帰れって言っても、俺たちは帰んない!」


「なん……っでだよ! なんで分からねぇ!?」


「約束したからに決まってんじゃん! 覚えてないの!? 龍翔くんが中学卒業しても高校行っても、ずっと一緒って約束したじゃん! 約束だけは守るって言ったのは、龍翔くんでしょ!?」


 声を荒らげた龍翔にも負けず、キッパリと言い返す優輝。龍翔を前に同じく立ち上がり堂々たる態度を見せた優輝に一瞬たじろぐ龍翔だが、一度目を閉じて静かに深呼吸。そして再び目を開けた時には、その輝きが違っていた。


「――そこまで言うなら、龍翔は辞めだ。ここからは、聖陽郷の四天王、リゥとして話す。――いや、命令する。ここ数ヶ月で聖陽郷に関わりのなかった異世界人は、全て元の世界に帰れ。主郷の席が空白となった今、ここを統べるのは我々四天王だ」


「っ……」


 堂々と言い切った龍翔――改め、聖陽郷の四天王、リゥ。

 そんなリゥの態度に、今まで堂々としていた優輝でさえも一歩後退。四天王という位に相応しい威厳と威圧を、今のリゥからは犇々と感じる。

 が、しかし、優輝たちも生半可な気持ちで龍翔に食い下がったわけではない。龍翔がなんと言おうと、リゥになんと命令されようと、優輝たちの気持ちは変わらない。

 それどころか、相手がリゥならもっと強気に出られる。先輩ではなく、赤の他人としてなら、優輝たちからは情けも何も無くなる。


「――リゥなんて、大っ嫌い! リゥって誰だし! 知らないし! そんな知らない人の命令とか、聞くわけない! 赤の他人のくせに、命令とかしないでよ! 大っ嫌い! 何にも知らないくせに……大大大っっっ嫌い!!」


 聖陽郷の四天王リゥに、優輝はこれでもかというほどに罵声を浴びせる。

 後輩に対して声を荒げない龍翔と、龍翔に対してここまで悪意の籠った罵声を浴びせない後輩。

 リゥと一緒に生活していたアキラはそんな優輝の言葉に驚いているが、優輝たちの横にいる蒼空や翼、蓮は全員優輝と同じ目をリゥに向けている。

 つまり、これは先輩と後輩の言い争いではない。四天王と一般人の口論なのだ。


「――この世界を統べる立場である俺にそんな口をきいて、普通ならば処罰を受けるのも当然の行為だぞ?」


「知らないよ、そんなこと! 俺は龍翔くんと話がしたくてここにいるの! 龍翔くんと一緒にいたいから、ここに残ってたの! それが急に聖陽郷だとか四天王だとか……分かるわけないじゃん!」


 この聖陽郷に於いて、主郷というのは王国の国王と同じ立場。その代理であるリゥに今回のような物言いをすれば、不敬罪で厳罰を受けてもおかしくない。

 しかし、それくらいのこと優輝が知らなくとも蓮ならば分かるはず。それを止めないということは、少なくとも蓮はそんな厳罰を躊躇したりしていない。そしてリゥの言葉を聞いた蒼空と翼も、その目付きを一ミリたりとも変えない。

 そんな四人の変わらぬ態度が表すのは、たった一つ。


「――それが、全員の意見なのか?」


 優輝たちの堂々とした態度に、腰を下ろして手に顎を乗せるリゥ。そして下から優輝たちの顔を見上げると、四人はリゥの問いかけに全く同じタイミングで頷く。


「アキラはどうなんだ? この二ヶ月俺と一緒に過ごして、これから先ついていけると思うか? 人質にされることもあれば、戦火の中に居合わせることもある。目の前で自分の何万倍も強い相手を前にして、やっていけると本気で思えるのか?」


 正直、この質問の答えは分かり切っている。確かにアキラは二ヶ月間一緒に過ごしていたが、人質になることも戦火の中にいることも優輝たちは経験済み。そんな経験をした優輝たちがこうして一緒に残るなどと言えているのだから、アキラだけが今更断るわけが無い。


「当たり前でしょ。俺はずっと残る気でいた。そりゃ確かに最初の頃は少し寂しかったけど、リゥくんが……龍翔くんが一緒にいてくれて今はそっちの方が楽しいって思えてる。戦いは怖いし人質にされたのも辛かったけど、それでも近くにリゥくんがいるって思えば全然我慢出来た。――逆に、リゥくんが近くにいなくて、龍翔くんが向こうの世界にいてくれないなら俺は耐えられない」


 案の定、リゥが予想した通りの答えを返してきたアキラ。そんなアキラの答えにリゥは視線を落とし、ふぅっと短く息を吐く。


「――取り敢えず、座りなよ」


「なんで……」


「話をするからだ」


「でも……」


「もし座った瞬間に押さえられたりしたら、とかか? ――分かってんだろ、俺が後輩相手にそんな無理矢理出来ないこと。処罰とか武力行使とか、俺がお前らにそんなこと出来るわけないだろ……」


 リゥの言葉に警戒し続ける優輝たちに対し、リゥは呆れたように嘆息して細めた目を横に向ける。

 確かに、優輝たちの目の前にいるリゥという男が龍翔なのであれば、優輝たちに手荒な行動は出来ない。そんな当たり前のことさえ失念していたことに気付き、改めて優輝は自分がどれだけ我を見失っていたか理解する。

 そして優輝たちがゆっくりと腰を下ろすと、リゥは再び五人に目を向ける。


「――正直、俺はなんでみんながそんなこと言えるのか理解出来ない。この世界にいれば命が危ないし、向こうの世界にいる親や友だちとも会えないんだぞ?」


「そんなの……決まってるじゃん。ここにいる全員、龍翔くんが好きだからだよ。好きな人と離れるのが辛いなんて、当たり前でしょ……」


 リゥの言葉に、リゥから目を逸らしながら答える優輝。

 確かに優輝の言う通り、好きな人と離れることはこの上なく辛いことだ。そして龍翔が優輝たちから好かれていたことも、少なからず自覚はしていた。しかし、それはあくまで先輩後輩としてであり、そこまで大きいものでは無いとも同時に思っていた。

 そんな龍翔の持っていた今までの考えが一気に壊れ、リゥは口を開けて唖然とする。


「――いや、翼と晟に関しては、まぁ分かる。翼は分かりやすいくらい俺のこと好きでいてくれたし、晟もまぁそんな実感はあった。――でも、優輝と蒼空、それに蓮は向こうの世界を捨ててここに残るほどなのか?」


 二人で遊ぶことの多かった晟と、クリスマスや大晦日でスキンシップの多かった翼。この二人に関しては確かにその好意を感じることは多々あった。

 実際、晟に関しては龍翔も本気で交際を考えていたほどだ。


 しかし、優輝たちからはそれ程までの好意を感じていなかった。スキンシップが多かったり事ある毎に絡んでくる時点で好かれているのだとは思っていたものの、周りの人全てを捨ててまで貫くほどのものではなかったはずなのだ。

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