虹の箱
投函できなかった美香への手紙、
アルバイトの給料袋と
丁寧に束ねられた最後の給料と思われる現金。
一緒に写っている写真の数々。
いつか一緒に行こうとしていた
ハワイのツアーパンフレット。
ハワイの空には虹がかかっていて
祐介の希望そのものだった。
箱の底には凍結処理された通帳と
輪ゴムで束ねられた現金。
この箱の中身の一つ一つ全てが
美香を想ってのものだった。
こんなにも自分のことを
想っていてくれた人…。
こんなにも愛されていた…。
美香は激しい想いに突き上げられて
声を上げて泣いた。
祐介に会いたくて
たまらなくなった。
「会いたい、会いたい…結婚するはずだった…一緒に暮らすはずだった…」
淳史もこの時ばかりは目頭を熱くした。
こぼれかけた涙を振り払うかのように
台所でウイスキーの水割りを作り
美香にもすすめた。
極道の家に生まれながらも
堅気の世界に希望を見出していた
よく分からない異母兄弟はいるものの
たった一人のしっかりと血が繋がった弟。
そして最後は極道事で命を奪われた弟。
新しい世界を夢見て
羽ばたきかけていた時に
撃たれた弟。
それだけ無念だったろうか…。
もしあの時…
一人暮らしがしたいと言った時に
家から出してやっていたならば
弟はこの広い世界の上の方に
羽ばたいていけたのに…。
心から惚れた人を養う幸せとともに
いつかは人の親にもなっていたのだろう。
親父も祐介の事を悔やんで悔やんで亡くなっていった。




