3幕
篠山「東雲さん、以前は大変お見苦しいところをお見せしてしまった、まず詫びよう。」
東雲「謝罪などいりませんよ。今回は私の方からお会いしたいとお願いしたのですから。」
ここは、減退治療ととも制定された、男女の分断化事業によってできた八王子男性区にある廃工場だ。
文字通り物理的に男女を分断したこの事業の内容は、性別により住む場所や働く場所まで制限するというものだ。
各都道府県の政令指定都市とその近辺には女性、その郊外を囲んで男性といった形だ。
その境界には2メートルほどの有刺鉄線付きの金網が敷設され、各所に警備付きのセキュリティゲートが置かれている。
さながら私たちは害獣といったところだな。
また、家庭を築いていた人達は分断に適応できるとのかといった問題も当初はあったがそれは杞憂に終わった。
というのも、子供が生まれても、両親は共働きで家に帰るのは深夜という世帯が大半だったため、保護施設での母親ロボットによる集団育児が日本国内で標準となり始めていたことに起因するだろう。
家族愛など語り反対した人間たちは、深刻化する児童虐待問題による死亡事件や、家庭の経済力による格差の拡大に対して具体的な対応を示すことができなかったのだ。
勿論、道徳的に問題があるといった声も上がった。
しかし、すべてが機械的、安全かつ平等な子育てがロボットによって実現し、諸問題の解決という成果を出したことでそれらも霧散した。
そんな状況だったためか、分断はすんなりと、驚くほどあっさり行われたのだ。
東雲「しかし篠山さん、治療拒否によるペナルティは問題無いのですか?」
???「それは問題ないよ。子供の玩具みたいに脆弱で稚拙な追跡装置と定期的なビデオコール応答への対処は万全ですから。」
東雲「あなたは?」
柊木「僕は柊木。篠山のじじいの後輩で弟子といった感じです。」
篠山「ああ、そうだな。彼はこう見えても国際認定機関に認められた、最高峰の認定をもつ情報エンジニアです。」
柊木「あんなもの糞の役にもたちません。実際、企業に対してサイバー攻撃をやってた方がよっぽど練習になります。別名Demigod-hiと言ったらわかりますか?」
東雲(こいつ、国際指名手配されているサイバー犯罪者じゃないか。Demigod-hiの名で呼ばれ、数々の企業に愉快犯的テロを起こした人物だ。まさか日本人だったとは…。)
彼が無効化したという追跡装置とは、減退措置を拒否した際に科せられるペナルティだ。
位置情報は勿論、その生体データさえも解析され、興奮状態になればすぐに警察が駆け付ける仕組みになっている。
篠山「まぁともかく、彼のおかげで減退治療拒否のペナルティをなんとか回避できているといった具合です。」
柊木「もともと治療なんて受ける必要はないんです。ジジイは機械に興奮する変態ですし、僕はそもそも人間の女になんて興味ないですから。お高くとまった連中に悪戯するほうがよっぽど楽しいです。」
東雲「なるほど…。わかりました。では私がもつ次世代人工知能のプロトタイプを提供方法ですが彼に任せてしまって良いでしょうか?」
そう、私はこの性愛人形プロジェクトへの参加を自ら申し入れたのだ。
篠山さんが発表した論文の通り、減退治療による、緩やかな男たちの消滅は間違いなく現実の物になる。
私の中にある得体のしれない虚無感、まさにこれが弊害だと確信している。
そのためにも性愛人形プロジェクトを成功させ、本来有るべき姿へ戻すのだ。
性欲が問題ならば、その問題をなかったことにするのでは解決にはならない。
であれば、受け入れる先、性欲を吐き出す矛先さえあれば問題はない。
篠山「はい、柊木の腕前であればその提供元はおろか、解析さえ不可能なブラックボックスとして仕上げることができるでしょう。」
東雲「わかりました。今後のやりとりについても引き続き秘匿回線にて行わせてください。何分私も自由が利かない身でして。」
篠山「はい、わかりました。これでリナ・シリーズ、彼女たちは間違いなく男たちの希望、強いては迷える子羊を導く聖女となるでしょう。」
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こうして、地殻変動は起こる。
周りを巻き込み、より大きなうねりとなって…




