2幕
性欲自体がないので、男ばかりですが男色家はいません。
東雲「ナビゲーター、直近3年の我が社の業績推移データを示せ。」
機械音声「かしこまりました、東雲様。我が社は5年前の最高益を維持したまま堅調に推移しております。また、国際的な成長の並列化により今後も同様に推移していくと予想されます。」
現状維持、成長の鈍化か。
いつの時代もそうだが、抜け駆けする者は必ずいる。
子供の時、運動会のかけっこで一緒にゴールしようと言った友人が気付けば彼は自分より先に駆け抜けていた。
同様にその化かし合いが国際社会でも常となっている。
というのも、アジアの大国が表立っては皆と歩調を合わせているものの、抑制リミッターを解除した人工知能を使用している疑いがあるからだ。
やはりこの現状維持に甘んじている日本には穏やかな死が待ち受けているのではないだろうか。
帰路につく車内の中、そんな思案に私はふけっていると同乗する創業メンバーのひとりである斉藤が口を開く。
斉藤「東雲さん、なにか不穏なことを考えていませんか?」
東雲「いや?そんなことはないですよ。」
斉藤「それならいいんですが、そういう顔をしている東雲さんを見た後はだいたいとんでもないことが起きますからね。」
(とんでもないことか……。)
東雲「斉藤さん、減退治療のもたらす弊害についての論文が発表されたのはご存知ですか?」
斉藤「ええ、見ましたよ。正直眉唾だと思っています。なにせ私たちには自覚がないですから。確かに平和ボケしているのは事実ですが、それは様々な問題を人工知能が解決していくことが約束されている安心感によるものだと思っています。」
東雲「……。」
斉藤「ですから、減退治療が男性の活力を奪い緩やか滅亡を迎えるという説は反対派の無理なこじつけでしょう。」
そう、世の中の大半の男たちには自覚がないのだ。
私自身もそうだ。
だが、どうにも言い表せない虚無感というのは間違いなく私の中に存在している。
東雲「そうですね、すいません変なことを聞いてしまいました。」
斉藤「……。いえいえ。」
運転手のいないハイヤーは、そんな2人のやり取りなどは気にも留めず深夜の高速を駆け抜ける。
・・・・・
・・・・
・・・
郊外の男性区にある廃工場の地下で、男たちの会話が響く。
???「先方から秘密裏にコンタクトがあった。」
???「やりましたね、やはりあの人なら僕たちの思想に共感してくれると思っていました。」
???「ああ、もうすぐだ。」
その男の視線の先には、人の背丈の倍ほどある正方形の金属製の箱が複数あった。
???「リナシリーズ、君たちはきっと男たちが失ったものを再び与えてくれるはずだ。」




