8 やって来る ~追われるのって怖いよね~
むかし、むかし、学校の机にうっ伏している赤いずきんを被った少女がいました。
「うぅ・・・・。」
「どうしたの? シャルちゃん。」
その少女にお友達のライツちゃんが声をかけます。
「うぅ・・・・、ライツちゃん・・」
シャルマントが昨日のことを話そうとした、その時、
「誰か来るぞ!」
窓の外を見ていた男の子が叫びます。
教室の皆が外に目をやると、綺麗で身なりの整った少年と、その後に護衛の騎士が見えました。
「ひぇぇぇぇぇぇぇぇ。」
それを見るなり、赤いずきんを被った少女は悲鳴を上げて教室を飛び出して行きました。
お昼になり。
教室を飛び出して行った少女はパン屋の陰に隠れて、店のご主人からもらったパンの耳を、まるでリスが木の実をかじるかのように、両手で大切に持ち、辺りを警戒しながら、用心深くカジカジと口に運んでいました。
あと少しで食べ終わろうとした時です。
店の反対側の、見えないところから少年の声が聞こえました。
「ご主人、忙しい所すまない。赤いずきんを被った少女を見かけなかっただろうか。」
すると、
「ひぇぇぇぇぇぇぇぇ。」
と、その声を聞いた途端、隠れていた少女は悲鳴を上げて逃げていきました。
むかし、むかし、公園の片隅にある秘密の場所で、テーブルに身を投げ出しうっ伏して、死んだ魚のような眼をした少女がいました。
そこへお友達のライツェントちゃんがやってきました。
「どうしたの? シャルちゃん。」
「ライツちゃん、あたしゃぁ、本当にもうダメだよ。」
「ん? どうしたの?」
「お偉いさんに目を付けられちゃったんだ。」
「ふふふ、ねえシャルちゃん、お耳触ってもいい?」
「どうぞどうぞ、お好きなように。」
ライツちゃんはいつものようにシャルマントのカチューシャについている耳を優しく、いじいじします。
「ふわふわで気持ちいいね。」
「そう? ありがと。」
「それで、お偉いさんって誰のこと?」
「お偉いさんって言うのは・・・」
シャルマントが話しているその時です。またまた遠くから近づいてくる身なりの良い少年の姿が見えました。そしてその少年の後ろには、必ず護衛の騎士でしょうか、がっしりとした体形の大きな男の人が二名ついて来ているではありませんか。
それを見るなり、
「ぎょぇぇぇぇぇ!」
と叫びながら、シャルマントは赤いずきんを深く被り直し、周りをきょろきょろとしたかと思うと、近くの森の中へと飛ぶように入って行ってしまいました。
シャルマントは森に逃げ込み夢中で走っています。気付けばいつものオオカミ家族がいる樹洞へとやってきていました。
「あら、シャルちゃん。」
お母さんオオカミのアルマが言います。
「えっ? シャルちゃん?」
女の子オオカミのエマが振り向きながらシャルマントを探すかのように言いました。
「どうしたの? そんなにしょんぼりとして。」
アルマの問いにシャルマントが答えます。
「アルマさ~ん、私、王子さまに追われているの。」
「ええ~~~!」
「ええ~~~!」 「ええ~~~!」
オオカミ家族の皆が驚きました。




