7 出くわしたのは ~曲がり角って危険だよね~
むかし、むかし、あるところに、暗くなった村の中を家に向かって走っている少女がいました。その少女は赤いずきんを深くかぶっています。
少女が家に着く最後の角を曲がったところで何かとぶつかりそうになり、あわてて止まり見上げて驚きの声を、
「あっ。」
っと漏らすと、その少女がぶつかりそうになった大きな影の者も低い声を漏らします。
「あっ。」
次の瞬間。
「ぎょぇぇぇぇぇ~~~。」
少女は叫び声を上げ、今来た道を慌てて引き返すため振り返って駆けだそうとしましたが、
「おっと。」
その少女が背を向けると同時に、影の人物は赤いずきんの首あたりを掴み、軽々と持ち上げました。捕まった時、少女は何とか逃れようと暴れていましたが、持ち上げられて地面から離れた足はただただ空を蹴っているだけです。それも長くは続きませんでした。やがて暴れていた少女は逃げることをあきらめ、力なく吊り上げられています。その姿はまるで暴れていた子猫が、首筋を掴まれて持ち上げられた時のように、背中を少し丸め、力なく伸びきった足はぶらんぶらんとだらしなく、地面を蹴ることも、吊り上げている者を引っ掻くこともできずに全てをあきらめたような姿でした。それでも、少女は赤いずきんだけは決して脱げないようにと両手でしっかりとつかみ、顔を隠すように被っています。
その少女の名前はシャルマントと言いました。
そうです、シャルマントはあの怖い騎士団長に捕まってしまったのです。
王さまの隊列は、鉄砲水で崖沿いにある街道の橋が崩れ落ちたので、別の道を迂回して通らなければいけなくなってしまったのです。
鉄砲水がおさまり、馬もやっとの事で落ち着きを取り戻すと、騎士団長は馬から降りて王さまの馬車へと赴き告げました。
「この先にある街道の橋が崩れ落ちてしまいました。復旧には相当な時間がかかると思われますので、内陸の迂回路を進むと致しましょう。」
その言葉に王さまが聞き返します。
「どれくらい掛かる。」
「はっ、三日ほど多くかかるかと。」
「仕方なかろう。」
「では、今日のところは先ほどの村まで戻って宿営を張ると致しましょう。王と王子に置かれましては村の者の家を借りてお休みいただくように手配いたします。」
「うん、分かった。」
そんなやり取りを行った後、隊列は何とか狭い街道を引き返して、シャルマントの家がある村にまで戻ってきていたのです。
捕まったシャルマントは、騎士団長にぶらんぶらんと吊られたまま王さまと王子さまがいる家にまで運ばれてこられました。
「王の御前である、そのずきんを取りなさい。」
「いやっ!」
「これっ!」
王さまの前でも赤いずきん取らないシャルマントに騎士団長が声を荒げます。
「よいよい、我らの命の恩人じゃ。」
王さまがそれを制します。そして、
「お主が我らの進行を止めてくれたのじゃな。助かった、あのまま進んで居れば今、この場には居られなかっただろう。名は何という。」
シャルマントは赤いずきんを深く、しっかりと両手でつかんで被り顔を伏せたまま答えます。
「シャルマントって言います。」
「ほう、それでシャルマントよ、一緒にオオカミが居たと聞いておるが本当か?」
「はい、ザバンは私の騎士です。」
王さまと騎士団長は驚きの目をしています。
「何? オオカミがお主を守る騎士だと?」
シャルマントは顔を伏せたまま、しっかりとした声で答えます。
「はい、ザバンは私の騎士です。」
王さまはひきつづき聞きます。
「他にもオオカミが居たと聞くが・・。」
「はい、一緒に居たのはザバンの家族です。」
「オオカミなのに人を襲わないのか。」
「はい、ザバンの家族は皆、私だけでなく、他の人やネズミさんを襲わないって誓ってくれました。」
「オオカミが誓いを? その約束を破ることはないのか?」
「はい。」
「むぅぅぅぅぅ・・。」
王さまや王子さま、騎士団長や他のお付きの人たちもシャルマントの言葉が信じられないというような複雑な表情を浮かべています。
その時でした。
ドアの外が騒がしくなり、一同がその方向に目をやると、いきなりドアが開きシャルマントのお母さんが飛び込んできなした。
お母さんは部屋に入るなり、床にひれ伏すように倒れ込むと叫ぶように言いました。
「王さま、どうかお許しくださいまし。この子は悪い子ではありません。ただ、魔女に呪いをかけられているだけなのです。」




