↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
5/26

4 怯える王子さま ~そして立ちはだかるモノ~

 むかし、むかし、あるところに、王《おう》さまと王子《おうじ》さまを乗《の》せた馬車《ばしゃ》の一行《いっこう》がのどかな村《むら》を抜《ぬ》けて進《すす》んでいます。


 ほどなくして、のどかな草原《そうげん》が広《ひろ》がるゆったりとした丘陵地《きゅうりょうち》で王《おう》の馬車《ばしゃ》の隊列《たいれつ》はしばらくの休憩《きゅうけい》をとるために止《と》まりました。座《すわ》ったままの、固《かた》まりかけていた身体《からだ》をほぐすために王《おう》さまと王子《おうじ》さまは馬車《ばしゃ》を降《お》り、あたりの景色《けしき》を眺《なが》めます。


 王《おう》さまの名前《なまえ》は、『ヴァルデック゠ヴィルドゥンゲン伯《はく》フィーリップ4世《せい》』と言《い》い、王子《おうじ》さまの名前《なまえ》は、『アルドリック゠ヴィルドゥンゲン』と言《い》いました。



 どうしたことでしょう。

 素敵《すてき》な景色《けしき》と晴《は》れやかな天気《てんき》なのに、王子《おうじ》さまはうつむき、少《すこ》し震《ふる》えています。


「父上《ちちうえ》、やはり私《わたし》は呪《のろ》われているのでしょうか。」

 か細《ぼそ》い声《こえ》で王子《おうじ》さまが王《おう》さまに言いました。

「アルドリックよ、何《なに》を言《い》う。お前《まえ》は呪《のろ》われてなどいない。」

「でも、先《さき》ほどの村《むら》でも私《わたし》の馬車《ばしゃ》が、突然《とつぜん》前《まえ》を横切《よこぎ》った黒猫《くろねこ》に馬《うま》が怯《おび》えて急《きゅう》に止《と》まりました。」

「ん~~、それはたまたまだ。馬車《ばしゃ》の前《まえ》を動物《どうぶつ》が横切《よこぎ》るのはよくある事《こと》。」

「でも、でも、昨日《さくじつ》だって、空《そら》からフォークが落《お》ちてきて私《わたし》の目《め》の前《まえ》の地面《じめん》に突《つ》き刺《さ》さりました。」

「あれは危《あぶ》なかったな~、でも、それも偶然《ぐうぜん》だろうに。」

「ではその後《あと》の事《こと》はどうなのでしょう。そのフォークを拾《ひろ》おうとしたらカラスが襲《おそ》ってきたではありませんか。」

「それは、キラキラ光《ひか》るフォークを落《おと》としたカラスが取《と》られまいとしただけだろう。」

「でもでも、でも、何故《なぜ》、私《わたし》だけがこんな目《め》に合《あ》うのでしょうか。」

「たまたまだから気《き》にするでない。今《いま》はこの視察《しさつ》を楽《たの》しんでおるがいい。ほら、見《み》てみなさい、このような自然《しぜん》あふれる景色《けしき》など王宮《おうきゅう》では見《み》られないのだぞ。整《ととの》った庭《にわ》もいいが、このような木《き》々があふれる森《もり》もいいものだ。」

 王《おう》さまにそう言《い》われた王子《おうじ》さまも、うつむいていた視線《しせん》を上《あ》げ、隊列《たいれつ》に沿《そ》って広《ひろ》がる森《もり》に視線《しせん》を向《む》けました。そして、

「そうですね、父上《ちちうえ》。このように大《おお》きな木《き》が並《なら》ぶこの森《もり》は、どこまで続《つづ》いているのでしょうか。」

そう言《い》ったとたん、王子《おうじ》さまが悲鳴《ひめい》を上《あ》げました。

「ひぃぇぇぇ~~~~!」

 王《おう》さまは慌《あわ》てて王子《おうじ》さまに向《む》かって聞《き》きます。

「どうしたアルドリック。」

 王子《おうじ》さまは震《ふる》える体《からだ》で、その震《ふる》える手《て》を何《なん》とか持《も》ち上《あ》げ、ブルブルと震《ふる》える指《ゆび》で森《もり》のある一《いっ》か所《しょ》を指《さ》し示《しめ》します。

 王《おう》さまは王子《おうじ》さまが示《しめ》す方向《ほうこう》に目《め》をやり、

「どこだ。何《なに》がある。」

「・・・・・・・。」

 王子《おうじ》さまは答《こた》えることができません。

 

 そのただならぬ雰囲気《ふんいき》に護衛《ごえい》の騎士《きし》たちは王《おう》さまと王子《おうじ》さまを囲《かこ》むようにして、周囲《しゅうい》に警戒《けいかい》を張《は》りました。


「アルドリック、何《なに》があった。何《なに》を見《み》た。」

「・・・森《もり》に・・・森《もり》の中《なか》に・・・。」

「森《もり》? 森《もり》の中《なか》に何《なに》があったのだ。森《もり》の中《なか》に何《なに》を見《み》たのだ。」

「い・・今《いま》、森《もり》の中《なか》を赤《あか》いひらひらしたものが横切《よこぎ》って行《い》きました。」

「赤《あか》いひらひらしたもの? 先《さき》ほど通《とお》って来《き》た村《むら》の者《もの》ではないのか?」

「いえ、人《ひと》などではありません。物凄《ものすご》い速《はや》さで森《もり》を横切《よこぎ》ったのですから。人《ひと》の走《はし》る速《はや》さではありません。」

「おぬしの見間違《みまちが》えではないのか?」

「いえ、はっきりと見《み》えました。赤《あか》いマントの様《よう》なものが、真横《まよこ》になって、物凄《ものすご》い速《はや》さで宙《ちゅう》を飛《と》ぶように森《もり》の中《なか》を、木《き》々を縫《ぬ》うようにぶつかることなく進《すす》んで行《い》ったのです。」


 王《おう》さまは警護《けいご》で取《と》り囲《かこ》んでいる騎士《きし》たちに向《む》かって聞《き》きます。

「誰《だれ》かアルドリックの言《い》っている様《よう》な赤《あか》いモノを見《み》たものは居《お》らぬか。」


 しかし、騎士《きし》の誰《だれ》もがそのようなモノをみてはいませんでした。



 しばらくの休憩《きゅうけい》の後《のち》、王《おう》さま一行《いっこう》は再《ふたた》び進《すす》み始《はじ》めます。

 王《おう》さま、王子《おうじ》さまが乗《の》るそれぞれの馬車《ばしゃ》に騎士《きし》団長《だんちょう》がやってきて、

「これより先《さき》、崖沿《がけぞ》いの街道《かいどう》を進《すす》みます。曲《まが》がり道《みち》も多《おお》く、路面《ろめん》も悪《わる》いために揺《ゆ》れますが、我《われ》らを信《しん》じ、ご安心《あんしん》してお乗《の》りになっていてくださいませ。」

そう言《い》い、再《ふたた》び隊列《たいれつ》の先頭《せんとう》に向《む》け駆《か》けて行《い》きました。



 いよいよ崖沿《がけぞ》いの街道《かいどう》に入《はい》ります。


 道幅《みちはば》も狭《せま》く、馬車《ばしゃ》の横《よこ》に騎士《きし》の馬《うま》が並《なら》ぶことはできません。


 いままで来《き》たよりも進《すす》むのをゆっくりにして、慎重《しんちょう》に崖《がけ》に沿《そ》って進《すす》んでいきます。


 崖沿《がけぞ》いの道《みち》をいくつか曲《ま》がり、やや視界《しかい》が開《ひら》け、進《すす》む先《さき》のほうに崖《がけ》を下《くだ》る川《かわ》が見《み》えました。


 その時《とき》です。


 先頭《せんとう》の騎士《きし》団長《だんちょう》の馬《うま》がヒヒ~~ンと鳴《な》いて棹立《さおだ》ちと呼《よ》ばれる両方《りょうほう》の前足《まえあし》を高《たか》く上《あ》げた態勢《たいせい》になり、乗《の》っていた騎士《きし》団長《だんちょう》は振《ふ》り落《お》とされまいと手綱《たづな》を強《つよ》く引《ひ》いて自身《じしん》の体《からだ》を立《た》ち上《あ》がらせました。馬《うま》はその前足《まえあし》を地面《じめん》に叩《たた》きつけると首《くび》を震《ふる》わしながらブブゥと鼻《はな》をならして止《と》まってしまったのです。

 すぐ後《うし》ろを付《つ》いてきた他《ほか》の騎士《きし》たちの馬《うま》も驚《おど》き怯《おび》え急《きゅう》に止《と》まると、その場《ば》で足踏《あしぶ》みをするように足《あし》をバタバタと動《うご》かし体《からだ》と首《くび》を揺《ゆ》らしています。騎士《きし》たちはどうにか落《お》ち着《つ》かせようと馬上《ばじょう》で必死《ひっし》に手綱《たづな》を引《ひ》き、馬《うま》の首《くび》をさすっていました。



 そうです。

 こんな崖沿《がけぞ》いの細《ほそ》い街道《かいどう》で、王《おう》さまの隊列《たいれつ》の前《まえ》に立《た》ちはだかるモノが現《あらわ》れたのでした。

馬車には乗ったことがありませんね。

まあ、多くの方がそうだとは思いますが、どんな感じなのでしょうか。

資料では中世の頃の馬車はサスペンションが悪くて、乗り心地はよくなかったそうですが・・。


こんど、馬車の代わりに人力車にでも乗ってみようかな・・って、

乗っている人たちは皆、楽しそうですし、乗り心地も良さそうですよね。


ただ、なんとなくなのですが、少し恥ずかし気持ちが・・・。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。