24 番外編1 カエルの王国 ~やあ、待った?~
むかし、むかし、宮殿にある池の畔、夜の帳が降りる頃、赤いずきんの少女とその国の王子さまとオオカミのザバンがカエルの国への招待を受け、迎えの者たちが来るのを待っていました。
ピコッ! ピコッ! ピコッ!
シャルマントは夢の中。どこか遠くで「ピコッ!」となる音を聞いていました。
翌朝、目が覚め、カチューシャの耳を触ります。
(あっ、伸びてる。)
カチューシャの耳は喜びの分だけ伸びています。
しかし、
(あれっ? これしか伸びていないの? おっかし~な~、もっと多くの人が私に感謝し喜んでくれると思ったのに・・・。)
とやや不満げに思っています。
シャルマントは気づいていませんでした。
宮殿に居た多くの者、女王さまや王女さまも宮殿から離れたところに移っていましたが、そこは避暑地と呼ばれる穏やかな所で、何ら困りごとは無く、呪いの恐怖などすっかり忘れて楽しんでいたのです。
そんなシャルマントを一緒の部屋で眠っていたオオカミのザバンが見て言いました。
「おっ! シャル様、耳が大きくなっているじゃないですか。」
「そうね、でも思っていたほど大きくなっていないの。」
「な~に言ってるんですか、俺らと同じくらいの大きさになっているじゃないですか。」
そうです。カチューシャの耳はネコ耳からオオカミ耳ほどに大きくなって、もっとモフモフになっています。
シャルマントはベッドから跳ね出て鏡を覗くために踏み台に上り、映った姿に笑顔を向け、そのモフモフのオオカミ耳を触って言いました。
「そうね、これでみんなとお揃いね。」
ザバンも笑顔で見上げています。
そして時は経ち、夜の帳が降りる今、シャルマントは騎士のザバンを引き連れてこの国の王子さまと宮殿の池の畔で座っています。
「本当に大きくなるんだね。」
シャルマントから全てを聞いた王子さまが言います。そして、
「触れてもいいかい?」
と親友のライツちゃんと同じことを言いました。
「ど・・、どうぞ。」
シャルマントは王子さまに向かって頭を傾けます。
「フワフワだね。モフモフの方かな? でも、この大きさだとずきんが窮屈そうだね・・、そうだ、ずきんに耳が入るところを付けよう、うん、そうしよう。明日にでも侍女たちに申し伝えて『耳付きの赤いずきん』にするから楽しみにしていてね。 そう、これは僕からのプレゼントだ。」
そんな話をして待っていると、遠くに小さな灯がいくつか現れました。
王子さまが言います。
「シャルマント、明かりが見える。きっとカエルの王国からの迎えの馬車だ。」
「そうですね、楽しみです。カエルの王国、『ライスト・ヴェルドゥ 王国』ってどんな所なのでしょう。」
シャルマントはカエルとお話ができるように例の呪文を唱えます。
「キケキケピコピコ キクキクピョンピョン
キイタラズンズン ハヨノビロ、 ねぇカエルさん。」
二人は遠くに見えるいくつかの灯が近づいてくるのをワクワクしながら待っていました。
来ません。
ま~~だ来ません。
遠くに見えた馬車らしき灯ですが、一向に近づいて来ません。
どれくらいの時が経ったのでしょうか。小さく見えた灯は今だ小さなままです。
辺りはすでに夜の帳を抜け、真っ暗な夜へと移っていました。やがて雲が流れ遮っていた月の明かりが一面を照らすと、遠くに居ると思っていた馬車がすぐ目の前にまでやってきているではありませんか。
「カボチャの馬車!」
その馬車を見たシャルマントが驚きの声を出します。
そうです。待っていた二人の目の前に照らし出された馬車は六匹引き(?)のカボチャの馬車だったのです。
そしてくり抜かれたカボチャの馬車の窓から王冠を被ったカエルの王子さまが身を乗り出して言いました。
「やぁ、 待った?」




