25 番外編2 カエルの王国 ~再び、やあ、待った?~
むかし、むかし、宮殿にある池の畔、オオカミのザバンを従えた赤いずきんの少女とその国の王子さまが月明かりに照らされたカボチャの馬車を見ていました。その馬車はカエルの国へ彼らを招待するために来ていたのでした。
カボチャの馬車のくり抜かれた窓からその身を乗り出してカエルの国の王子さまが言います。
「やぁ、 待った?」
ワクワクしながら待っていたシャルマントと、この国の、人間である王子さまはそれを見てため息をつきました。
そうです、そうなのです。カエルの王国からの馬車は、少し大きな六匹のカエルが普通の、そう、食卓に並ぶくらいの大きさのカボチャの馬車を引いてきたのです。
じっと待っていた二人は足元にある馬車を見下ろしていました。
そんな二人を馬車から見上げてカエルの王子さまは言います。
「じゃあ、行こうか。」
大層ご機嫌なカエルの国の王子さまが声を発すると、カボチャの馬車は向きを変え、今来た方向へとむかって進みだしました。
シャルマントとアルドリック王子は悶々としています。
そうです。そうなのです。カエルに引かれているカボチャの馬車はゆっくりとしか進みません。
馬車を引いている六匹のカエルは、彼らの持ち味である強靭な脚を使って跳ねるのではなく、ヒキガエルがのっしのっしと歩くようにしか進まないのです。
当然、子供とはいえ人間の歩く方がずっと早いので、シャルマントと王子さまはゆ~~っくりゆ~~っくりとその後を付いて行きます。
王宮を取り囲む塀までどれくらいの時間がかかったのでしょうか、歩いた距離は短かったのに、その動作がゆっくり過ぎてシャルマントと王子さまはすでに疲れ果てています。しかし、馬車から身を乗り出したままのカエルの国の王子さまはそこに着くまでずっと話し続けていたのです。その話も、シャルマントにはお話しとして聞こえていましたが、隣を歩く王子さまにはずぅ~~っと、ゲコゲコとしか聞こえていません。それでも、王子さまはシャルマントにカエルの王子さまが何を言っていたのかを聞こうともしません。ただただ、疲れたといった表情を浮かべていました。
塀にまでたどり着くと、その先にカボチャの馬車がやっと通れるくらいの穴があります。これには王子さまも驚いて、
「僕も知らなかった。こんなところに抜け穴があったなんて。」
と言いその穴をのぞき込みます。
するとカボチャの馬車に乗っているカエルの王子さまが自慢げに言いました。
「貴殿の国と我が国の友好を示すために頑張ったんだ、偉いでしょ! 丁度馬車が通れる大きさにしたんだよ、それであなた達を我が国に招待することが出来て。ゲコゲ~コ。」
その穴へとのそのそやって来たカボチャの馬車は、進みを遅くすることも、ましてや止まることもせずにおなじ速さでのっそのっそと六匹のカエルにつられて穴へと入って行ってしまいました。カエルの王子さまは塀が近づくと、シュッと身をかぼちゃの中に隠し、馬車もそのまますれすれの穴へと入って行ってしまいました。
シャルマントと王子さまは慌てて走り出します。
走りながら王子さまが呟きました。
「彼には悪いが、後で石工に言ってこの穴を塞いでもらおう・・・・。しかし、カエルがどうやって壁に穴を開けたんだろう・・・、それに・・、カエルに穴を開けられる、そんな壁の強さで大丈夫なのかな?」
二人はザバンと一緒に人間が出入りするところから回り込み、カボチャの馬車を見失わないようにと急いで塀の穴の外側へと向かいました。
二人が塀の穴にたどり着くと先に到着していたザバンは穴を覗いています。壁の外側にはカボチャの馬車はどこにも見当たりません。
見失ったかと不安になって二人もその穴をそっと覗き込みます。
するとどうでしょう、真っ暗な穴のまだ中間あたりに小さな灯が見えました。
そうです、カエルが引いているカボチャの馬車はまだ塀の中を悠々と進んでいたのです。
二人は馬車が出てくるのをボーっと待っていました。
そして、どちらともなく呟きます。
「この速さでどこまで行くんだろう・・・」と。
やっと塀の穴からカボチャの馬車が出てきました。
塀を抜けた途端、くり抜かれたカボチャの窓からカエルの王子さまが身を乗り出し言います。
ゲコゲコ ゲコ
そうアルドリック王子さまには聞こえましたが、シャルマントは違います。
シャルマントには言葉としてはっきりと聞こえていたのです。
それは、
「やあ、待った?」
でした。
シャルマントは強く握りしめた拳をかぼちゃの馬車の上から振り下ろし、カボチャごとカエルの王子を潰したい気持ちを、じっと抑え込みます。
それから直ぐの所でした。
塀の先の、小さな藪を抜けたところにカエルの王国、『ライスト・ヴェルドゥ 王国』と彼らが呼んでいる小さな池がありました。
それは、王宮内にあるあの池よりもずっと小さく、ザバンが頑張れば一気に飛び越えられるほどの大きさです。
その池に着くと、カボチャの馬車から降りたカエルの王子さまは池に向かって鳴きます。
ゲコゲコゲーコ ゲコッ ゲコッ
すると、池の中から多くのカエルが顔を出し、みんながゲコゲコと鳴きながらこちらに集まって来るではありませんか。
ゲコゲコゲコ ゲコゲコ ゲコゲコ ゲコゲコゲコ
ゲコゲコゲコ ゲコゲコ ゲコゲコゲコゲコゲコゲコ
池の縁に集まった多くのカエル、まだまだ後からも後からもカエルが池の中から縁に向かってやってきます。どんどんと積み重なり、崩れかけたところは折り重なって積み上がり、カエルが見る見るうちに山盛となっていきます。あまりの数の多さにシャルマントもその言葉が聴き取れなくなっていました。
それでもまだカエルはどんどんと塀のように積み重なって、やがてその高さはシャルマントの背丈ほどになっていきました。そして、そのすべてがこちらにあの大きな口をパクパクしながら鳴いています。
ゲコゲコゲコ ゲコゲコ ゲコゲコ ゲコゲコゲコ
ゲコゲコゲコ ゲコゲコ ゲコゲコゲコゲコゲコゲコ
それを見たシャルマントは・・・・
うぇっっ
シャルマントⅡ ~完全 完!~
最後まで読んで下さり、本当にありがとうございました。
シャルマントの耳はまだオオカミほどです。
もっともっと伸ばす旅を考えたいと思っておりますので、
またの機会がありましたら、どうぞ訪ねて来てください。
それでは、また・・・ですね。




