↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
19/26

18 呪いの解き方 ~覚えておるぞ~

 むかし、むかし、ある森《もり》の奥深《おくふか》くにある背《せ》の高《たか》いトウヒの木《き》を赤《あか》いずきんを被《かぶ》った少女《しょうじょ》とオオカミの一家《いっか》が見上《みあ》げていました。そのトウヒの木《き》に住《す》む『森《もり》の賢者様《けんじゃさま》』である『オナガフクロウ』に会《あ》うためです。



「キケキケピコピコ キクキクピョンピョン

        キイタラズンズン ハヨノビロ、 ねぇフクロウさん。」


 シャルマントはオナガフクロウの賢者様《けんじゃさま》とお話《はな》しができるように呪文《じゅもん》を唱《とな》えます。


「帰《かえ》れ、帰《かえ》れ。我《われ》はお前《まえ》らに用《よう》はない。我《われ》の時間《じかん》を乱《みだ》すものは帰《かえ》れ。」

 突然《とつぜん》でした。トウヒの木《き》のほど高《たか》い枝《えだ》の、葉《は》っぱで隠《かく》れて見《み》えないところから声《こえ》がしたのです。

「オナガフクロウの賢者様《けんじゃさま》、お聞《き》きしたい事《こと》があり参《まい》りました。ぜひ、我《われ》らの言葉《ことば》をお聞《き》きくださいませ。」

 以前《いぜん》と同《おな》じようにザバンが言《い》います。すると再《ふたた》び、

「帰《かえ》れ、帰《かえ》れ。我《われ》はお前《まえ》らに用《よう》はない。我《われ》の時間《じかん》を乱《みだ》すものは帰《かえ》れ。」

との言葉《ことば》が返《かえ》ってきました。


 シャルマントが一歩《いっぽ》あゆみ出《で》て、持《も》ってきた貢物《みつぎもの》の包《つつ》みを差《さ》し出《だ》して言《い》います。

「あの~~、貢物《みつぎもの》を持《も》ってきたのですが・・・。」


 するとどうでしょう、隠《かく》れていた葉《は》っぱの陰《かげ》から、オナガフクロウがひょっこりと顔《かお》を出《だ》し、その大《おお》きな目《め》を閉《と》じてニオイを嗅《か》ぐようにクンクンしだします。


「うっ・・うんっ・・、それで、儂《わし》に何《なに》が聞《き》きたいのだ。」

 気恥《きは》ずかしそうにして、少《すこ》しの威厳《いげん》を保《たも》つように小《ちい》さな咳払《せきばら》いの後《のち》、森《もり》の賢者様《けんじゃさま》が葉《は》っぱの陰《かげ》からのそのそと枝《えだ》をつたい出《で》て来《き》て言《い》いました。

 シャルマントはニヤリとし、

(それ見《み》たことか、コイツは貢物《みつぎもの》に弱《よわ》いのよ。)

そう思《おも》いながら聞《き》きます。

「魔法《まほう》の解《と》き方《かた》を教《おし》えて欲《ほ》しいのです。石《いし》にされた魔法《まほう》の解《と》き方《かた》を。」


 森《もり》の賢者様《けんじゃさま》は片目《かため》だけをうっすらと開《あ》け言《い》います。

「ふんっ、憶《おぼ》えておるぞ。 うん、憶《おぼ》えておる。 しっかりと憶《おぼ》えておるぞ。」

 シャルマントは満面《まんめん》の笑顔《えがお》になって言《い》いました。

「本当《ほんとう》ですか? やったー! 今回《こんかい》は早《はや》かったわ。 それでどうするんですか?」

 シャルマントが勢《いきお》い余《あま》って少《すこ》し早口《はやくち》で聞《き》くと、オナガフクロウのおばあさんも堰《せき》を切《き》ったように早口《はやくち》で話《はな》し始《はじ》めました。

「憶《おぼ》えておるぞ、お主《ぬし》、以前《いぜん》に我《われ》を肉《にく》で釣《つ》ったヤツであろう。しっかりと憶《おぼ》えておるぞ。森《もり》の賢者《けんじゃ》と言《い》われる我《われ》を肉《にく》の貢物《みつぎもの》なんぞで釣《つ》りおって、まぁ確《たし》かに旨《うま》かったが、もうその手《て》には乗《の》らぬぞ。帰《かえ》れ、帰《かえ》れ。あの後《あと》どれだけ苦労《くろう》したことか・・・、あの肉《にく》の味《あじ》を・・、あの肉《にく》の食感《しょっかん》を忘《わす》れ去《さ》るまでどれだけ苦労《くろう》したことか・・・、その後《あと》に食《た》べた獲物《えもの》の肉《にく》の何《なん》とまずい事《こと》だったか・・・、それに慣《な》れるまでの苦労《くろう》をお主《ぬし》は知《し》らぬのだろう。 えいっ、もうあのような苦労《くろう》はしとうないわ。 帰《かえ》れ帰《かえ》れ、そんな肉《にく》・・」

「本日《ほんじつ》はこのようなお肉《にく》をお持《もち》ちしました。」

 シャルマントは賢者様《けんじゃさま》の長《なが》ったるい話《はなし》を遮《さえぎ》るように貢物《みつぎもの》の包《つつ》みを開《あ》け、持《も》ってきた肉《にく》を見《み》せました。すると、

「・・そ  そんな肉《にく》に・・」

シャルマントの言葉《ことば》にも耳《みみ》をくれずに話《はな》しを続《つづ》けようとしていた賢者様《けんじゃさま》の言葉《ことば》が止《と》まり、差《さ》し出《だ》された肉《にく》を大《おお》きく真《ま》ん丸《まる》な目《め》で見据《みす》え、ニオイを嗅《か》ぐようにくんくんと嘴《くちばし》を動《うご》かし、

「そ  そんな肉《にく》・・ そんな肉《にく》には釣《つ》られん・・ぞ・・。

   まあ・・・、いい肉《にく》であるな・・・。」

と、さらに目《め》を大《おお》きくしました。その様子《ようす》を見《み》たシャルマントは畳《たた》み掛《か》けるように言《い》います。

「はい、今回《こんかい》も柔《やわ》らかいお肉《にく》をお持《もち》ちしました。前回《ぜんかい》も霜降《しもふ》りの柔《やわ》らかいお肉《にく》でしたが少《すこ》しばかり脂《あぶら》のノリが多《おお》かったので、今回《こんかい》は赤身《あかみ》の味《あじ》を堪能《たんのう》していただけるよう赤身《あか》が多《おお》くても柔《やわ》らかい『ランプ』という部位《ぶい》のお肉《にく》を選《えら》びました。あ~~、でも、賢者様《けんじゃさま》が嫌《いや》だと言《い》うのでしたら・・・。」

 すると森《もり》の賢者様《けんじゃさま》は黙《だま》り込《こ》み、モゾモゾとして木《き》の枝《えだ》の上《うえ》で左右《さゆう》に体《からだ》を揺《ゆ》らしています。


 少《すこ》しの時間《じかん》でした。


「うぉっほん。 それで、なんの用事《ようじ》だっかな。」

 森《もり》の賢者様《けんじゃさま》は冷静《れいせい》を装《よそお》い、落《お》ち着《つ》いた声《こえ》で言《い》いました。シャルマントが、

「魔法《まほう》の解《と》き方《かた》を教《おし》えて欲《ほ》しいのです。石《いし》にされた魔法《まほう》の解《と》き方《かた》を。」

と再《ふたた》び言《い》うと、森《もり》の賢者様《けんじゃさま》は即座《そくざ》に答《こた》えます。

「なんだ、そんな事《こと》か。知《し》っておるぞ。」

「本当《ほんとう》ですか~~~? でも~~、知《し》っていても~~、また思《おも》い出《だ》すのに時間《じかん》がかかるんじゃないですか~~?」

 シャルマントが怪訝《けげん》な面持《おもも》ちで言《い》うと、賢者様《けんじゃさま》が答《こた》えました。

「失礼《しつれい》な・・、知《し》っておるし、すぐに答《こた》えてやることもできるわい。この辺《へん》の森《もり》の動物達《どうぶつたち》は魔法《まほう》で石《いし》にされるものも少《すく》なくないのでな。色《いろ》んな動物《どうぶつ》たちが聞《き》きに来《く》るのじゃ。」

(へえ~~、石《いし》にされる動物《どうぶつ》さん達《たち》って多《おお》いんだ。 ま、私《わたし》も動《うご》けなくされたけど・・、もしかしてあれって、石《いし》にされる一歩《いっぽ》手前《てまえ》って事《こと》だったの?)

 そうシャルマントは思《おも》い、少《すこ》しビクッと体《からだ》を震《ふる》えさせました。そして、シャルマントが聞《き》きます。

「それで、どうすればいいのですか?」

「この森《もり》のさらに奥《おく》に『妖精《ようせい》の住《す》む泉《いずみ》』がある。その泉《いずみ》の水《みず》を掛《か》ければ石《いし》にされた呪《のろ》いは簡単《かんたん》に解《と》ける。」


 その言葉《ことば》を聞《き》いたシャルマントは喜《よろこ》び勇《いさ》んで、

「ありがとうございます賢者様《けんじゃさま》。では・・・。」

と向《む》きを変《か》え、妖精《ようせい》達《たち》が住《す》む泉《いずみ》へと走《はし》りかけました。

「こら待《ま》たんか。」

 賢者様《けんじゃさま》は急《いそ》ぐシャルマントを必死《ひっし》に止《と》めますが、

「大丈夫《だいじょうぶ》です。妖精《ようせい》さん達《たち》の所《ところ》なら知《し》っていますから。では・・。」

と言《い》って再《ふたた》び駆《か》けだそうとします。

「いやいや、こらっ、待《ま》てと言《い》っておるのに。」

 賢者様《けんじゃさま》は再《ふたた》び声《こえ》を掛《か》け、シャルマントを止《と》めます。そして、


「泉《いずみ》の水《みず》を掛《か》けても魔法《まほう》は解《と》けんぞ!」


と叫《さけ》ぶように大《おお》きな声《こえ》でいうと、シャルマントはその動《うご》きを止《と》め、聞《き》き返《かえ》します。

「え? さっき泉《いずみ》の水《みず》を掛《か》ければ石《いし》にされた呪《のろ》いを解《と》けるって言《い》ったじゃない。」

「そうじゃ、石《いし》にされた呪《のろ》いは解《と》ける。じゃが、元《もと》に戻《もど》った身体《からだ》は固《かた》まったままなのじゃ。それには魔法《まほう》を解《と》くための特別《とくべつ》な呪文《じゅもん》がいる。」

「じゃあ、その呪文《じゅもん》を唱《とな》えないと呪《のろ》いは残《のこ》ったままなの?」

「そうじゃ、石《いし》から普通《ふつう》の身体《からだ》には戻《もど》るが、身動《みうご》き一《ひと》つできずに身体《からだ》が固《かた》まったままになる。」

「・・・・・それで? その呪文《じゅもん》を唱《とな》えないとどうなっちゃうんですか?」

「そのままじゃ。身体《からだ》を動《うご》かせずにそのまま固《かた》まったままじゃ。」

「そんな・・、そのままだと?」

「そのままだと、お腹《なか》が減《へ》ってますます動《うご》けなくなるのじゃ。」

「え? じゃあ、誰《だれ》かが食《た》べ物《もの》を上《あ》げればいいんじゃない?」

「お前《まえ》さん、身体《からだ》が固《かた》まったままじゃと言《い》ったであろう。動《うご》けないから口《くち》も開《ひら》かないし、噛《か》むことも、飲《の》み込《こ》むこともできないんじゃよ。」

「・・・・・それで?」

「どんどんやせ細《ほそ》って、干《ひ》からびて、やがて道端《みちばた》のミミズのようになる。」

「なんと恐《おそ》ろしい。この呪《のろ》いってそんなに恐《おそ》ろしいものだったのね。干《ひ》からびたミミズじゃ水《みず》を掛《か》けてももとには戻《もど》らないわよね。 なんと恐《おそ》ろしい呪《のろ》いなの。」

「森《もり》の中《なか》でもたま~に見《み》かけるじゃろ、干《ひ》からびたのを・・。」

「あれって魔女《まじょ》の呪《のろ》いだったの?」

「いや、それは違《ちが》うがな。」


 シャルマントは思《おも》います。(カエルの王子《おうじ》さまは夜《よる》には動《うご》けるから・・・)

「実《じつ》は、カエルの王子《おうじ》さまがこの呪《のろ》いを掛《か》けられていて、でも、夜《よる》には動《うご》けるから食《た》べることができるの。」

と言《い》うと森《もり》の賢者様《けんじゃさま》は、

「最悪《さいあく》じゃ。カエルが石《いし》にされておったのか・・・。」

じっと目《め》を閉《と》じてしまいました。シャルマントが聞《き》きます。

「どうして最悪《さいあく》なのですか?」

 森《もり》の賢者様《けんじゃさま》は再《ふたた》び目《め》を開《あ》け言《い》いました。


「動《うご》けないカエルが一日中《いちにちじゅう》日光《にっこう》を浴《あ》びていたらどうなる?」


 シャルマントはハッとしました。

(はっ、ツヤツヤなあのお肌《はだ》が日光《にっこう》でカサカサに・・。 ヒィィィィ・・・。一日《いちにち》で干《ひ》からびたミミズに・・・・。)

(それって、石《いし》にされた呪《のろ》いよりも身体《からだ》を動《うご》かせなくなった呪《のろ》いの方《ほう》が怖《こわ》いじゃん。)

(呪文《じゅもん》を絶対《ぜったい》に教《おし》えてもらわないと・・・。)


 シャルマントは必死《ひっし》の形相《ぎょうそう》になって聞《き》きました。

「それで、その呪《のろ》いを解《と》く呪文《じゅもん》は何《なん》ですか?」

「それはじゃ。」

「うん、それは・・。」

「それはじゃ・・・。」

「うん、それで、それは?」

「う~~~ん、それはじゃ・・・、それはな・・・・。」

「・・・・。」

 シャルマントは呪《のろ》いの魔法《まほう》を解《と》く呪文《じゅもん》を絶対《ぜったい》に聞《き》き洩《も》らさないようにと、賢者様《けんじゃさま》の嘴《くちばし》に集中《しゅうちゅう》し、そして固唾《かたず》を飲《の》んで待《ま》ちました。



「それはじゃな、・・・・・・、あれっ? いやまて・・、思《おも》い出《だ》せん・・。」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。