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14 王宮のカエル ~ゲコゲコ、たま~に、ゲコ~~~

 むかし、むかし、あるところに、赤《あか》いずきんを被《かぶ》った少女《しょうじょ》が、オオカミのザバンと一緒《いっしょ》にとても大《おお》きな宮殿《きゅうでん》を見上《みあ》げていました。


「オ オ~~~。」

 シャルマントは思《おも》っていたよりもかなり大《おお》きな宮殿《きゅうでん》に驚《おどろ》きの声《こえ》を漏《もら》らしています。


 驚《おどろ》きのあまり動《うご》けなくなっていましたが、しばらくして見上《みあ》げていた視線《しせん》をおろすと、目《め》の前《まえ》には王子《おうじ》さまが言《い》っていた、あの「石《いし》のカエル」が石柱《せきちゅう》の上《うえ》から大《おお》きな宮殿《きゅうでん》を見上《みあ》げるように向《む》かって鎮座《ちんざ》していました。


 確《たし》かに王冠《おうかん》が乗《の》っかっています。


 シャルマントとザバンは近《ちか》づき宮殿《きゅうでん》側《がわ》へと回《まわ》り込《こ》みさらに驚《おどろ》きました。

「ほえ~~~。本当《ほんとう》に涙《なみだ》を流《なが》してるんだ~。」

 ザバンは鼻《はな》をクンクンさせてカエルの像《ぞう》のニオイを嗅《か》いでいます。すると、

「クゥゥゥ?」

変《へん》な声《こえ》を出《だ》しました。

「どうしたの? ザバン。」

 シャルマントが問《と》いかけると、

「シャル様《さま》、このカエル、生《い》きていまっせ。」

ザバンは急《きゅう》に何《なに》かを警戒《けいかい》するような鋭《するど》い目《め》つきになり、ウゥ ウ~~と低《ひく》く唸《うな》り始《はじ》めました。

 すると、怯《おび》えているかのように石《いし》のカエルからは今《いま》までよりも大量《たいりょう》の涙《なみだ》が流《なが》れ出《で》てくるではありませんか。でも、石《いし》でできたそのカエルは表情《ひょうじょう》を変《か》えず、ただ、少《すこ》しとがった口《くち》をやや上《うえ》に突《つ》き出《だ》したまま宮殿《きゅうでん》を見上《みあ》げているのでした。

「え? 生《い》きているの?」

 そうシャルマントは呟《つぶや》くと、相手《あいて》を疑《うたが》うかのような、怪訝《けげん》な目《め》つきをして石《いし》のカエルに顔《かお》を近《ちか》づけました。

 石《いし》のカエルから流《なが》れ落《お》ちる涙《なみだ》の量《りょう》が少《すこ》し増《ふえ》えたような気《き》がします。

 シャルマントはその涙《なみだ》をじっくりと確認《かくにん》し、

「ふ ふっふ~ん。夜《よる》になるのが楽《たの》しみね。」

と言《い》うと、プイっと体《からだ》を回《まわ》し駆《か》けだして言《い》います。

「ザバン行《い》くわよ。大《おお》きなお家《うち》の中《なか》はどんなだろうね。」


 駆《か》けだしたシャルマントの後《あと》をザバンも走《はし》って追《おい》いかけて行《い》きました。



 広《ひろ》くてきれいなお部屋《へや》、ふわふわのベッド、美味《おい》しい夕食《ゆうしょく》を堪能《たんのう》して、夜《よる》になりました。


 シャルマントとザバンは柱《はしら》の陰《かげ》に隠《かく》れ石《いし》のカエルを見張《みは》っています。今夜《こんや》は特別《とくべつ》に王子《おうじ》さまも一緒《いっしょ》に見張《みは》ることにしました。


 月明《つきあ》かりが石《いし》のカエルを照《て》らしています。


 どれくらいの時間《じかん》が経《た》ったのでしょうか。

「何《なに》も変《か》わりませんね。」

 シャルマントが呟《つぶや》きます。


 きれいな月明《つきあ》かりに石《いし》のカエルはやや青白《あおじろ》く色《いろ》づいて見《み》えています。


 一切《ひとき》れの雲《くも》が月《つき》を遮《さえぎ》り、辺《あた》りが暗闇《くらやみ》に包《つつ》まれます。そして再《ふたた》び雲《くも》から抜《ぬ》けた月《つき》の明《あ》かりが周《まわ》りを照《て》らすと、石柱《せきちゅう》の上《うえ》のカエルが消《き》えているではありませんか。

 シャルマントも、それを知《し》っていた王子《おうじ》さまでさえも驚《おどろ》き、目《め》を大《おお》きくして身《み》を乗《の》り出《だ》します。そして、石柱《せきちゅう》に駆《か》け寄《よ》って周《まわ》りを探《さが》し始《はじ》めました。傍《そば》に控《ひか》えていた幾人《いくにん》かの騎士《きし》たちも集《あつ》まり、皆《みな》で消《き》えた石《いし》のカエルを探《さが》しています。


 しかし、どんなに探《さが》しても石《いし》のカエルは見当《みあ》たりません。


 ただ、ザバンだけは皆《みな》と離《はな》れ、王宮《おうきゅう》に広《ひろ》がる芝《しば》をクンクンとしながらどこかへと導《みちび》かれるように歩《ある》いて行《い》きます。皆《みんな》から離《はな》れていくザバンを誰《だれ》も気《き》づきませんでした。


 どれくらいの時間《じかん》が経《た》ったのでしょうか。


 シャルマントも王子《おうじ》さまも騎士《きし》の方《かた》たちも石柱《せきちゅう》の周《まわ》りを探《さが》しつくしていましたが例《れい》の石《いし》のカエルは見《み》つかりません。

 しばらくは石柱《せきちゅう》を見張《みは》って石《いし》のカエルが戻《もど》って来《く》るのを確認《かくにん》しようとしていましたが、シャルマントも王子《おうじ》さまも眠《ねむ》くなってしまい、護衛《ごえい》の騎士《きし》たちと一緒《いっしょ》に王宮《おうきゅう》のなかへと戻《もど》っていってしまいました。

 ザバンが居《い》ないことは気《き》づきましたが、元《もと》々はオオカミですし、月夜《つきよ》の退屈《たいくつ》な時間《じかん》に王宮内《おうきゅうない》を探検《たんけん》でもしているのだろうと思《おも》って誰《だれ》も気《き》に留《と》めませんでした。



 翌朝《よくあさ》。


 シャルマントが目《め》を覚《さ》ますと、いつの間《ま》にか戻《もど》っていたザバンが言《い》いました。

「シャル様《さま》、カエルの行《い》き先《さき》が解《わか》りましたぜ。」

「本当《ほんとう》?」

「はい、ニオイを嗅《か》いで後《あと》を追《お》って行《い》きましたので。」

「それでどこかに行《い》って、傍《そば》に居《い》なかったのね。」

「はい。 ただ・・・」

「ん? どうしたの?」

「ええ、そこにはカエルが居《い》て・・」

「石《いし》のカエル?」

「いえ、単《たん》に普通《ふつう》のカエル。」

「石《いし》のカエルじゃないの?」

「はい、普通《ふつう》のカエルが居《い》て。」

「それって、本当《ほんとう》に単《たん》なる普通《ふつう》のカエルじゃないの?」

「いえいえ、ニオイは例《れい》の石《いし》のカエルと一緒《いっしょ》ですし、王冠《おうかん》も乗《の》っけていたので、そのカエルが石《いし》のカエルです。」

「普通《ふつう》のカエルでも王冠《おうかん》を乗《の》せているの? それで?」

「ええ、何《なに》か言《い》いたそうにゲコゲコと鳴《な》いているのですが、ただ、ゲコゲコとしか・・・、あ、たま~に、ゲコ~~とも鳴《な》きます。しかしどうにも、カエルの言葉《ことば》が分《わ》からなくて。」

「そういう事《こと》なら、この私《わたし》の出番《でばん》ね。」

「ええ、シャル様《さま》ならわかるかと・・・。」

「じゃあ、今夜《こんや》、そのカエルの所《ところ》に連《つ》れて行《い》って。」



 シャルマントはベッドから勢《いきお》いよく飛《と》び降《お》り、

「じゃあザバン。夜《よる》に向《む》けて美味《おい》しいものを食《た》べて、ゆっくりと寝《ね》ておかないとね。」

と言《い》い、さっさと着替《きがえ》えを始《はじ》めました。

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