12 完璧な計画 ~冴えてる、今日の私~
むかし、むかし、あるところに、赤いずきんを被った少女が王子さまからのお願いに、驚いた表情をしていました。
「わ・・、私が王宮に行くのですか?」
シャルマントが王子さまに聞き返します。
「うん、名探偵と噂されている君にカエルが涙を流す事と、夜な夜な消える謎を解いて欲しいんだ。」
その言葉を聞くと、シャルマントは腕を組み、目を閉じてうつむきました。そして、急に何かを思いついたかのように、目を開けると王子さまにやや上目遣いの、そう、何か悪だくみを考えているような表情を向けました。
この時シャルマントはこんな事を考えていたのです。
(王さま、王子さまだけでなく、騎士さまたちや王宮の多くの人たちが困っているって事よね・・。そうそう、姫さまや王女さまも居るって言っていたわよね・・・。
ふふふ・・、その石のカエルの謎を解いたら王宮の誰もが私に感謝するって事よね・・。
そしたら、そしたら?
“良い事したねポイント” がザックザクって事よね・・・。
ムフフフ・・、素晴らしい、ああ素晴らしいわ。
もしかしたらこのネコ耳がその場でどんどんと伸びてウサ耳になって、ポロっと落ちるのかも・・。
この煩わしいカチューシャともおさらばね・・。
ムフフフフフフフ・・・。)
「ねぇ、シャルマント・・・。」
悪だくみの表情を向けるシャルマントに王子さまが声をかけます。
しかしシャルマントはそんな声も耳に入らないくらいに真剣に考えています。
(そうだ、いい事思いついた。このカチューシャが取れたら石のカエルをぶっ壊そう。もしかしたらあの憎っくき紫魔女がどこかで見ていてやって来るのかも。その時がチャンスね。)
(そうそう、アイツがホウキで空からふわっと降りて来て、跨いでいるホウキから「よっこらしょ」って降りる時が無防備でチャンスなんだわ。その時を狙って物陰から飛び出して行ってぶん殴ればいいんだわ。きっと油断しているし、私が居るなんて思っても居ないはず。
冴えている、うん、今の私、すっごく冴えているわ。
ムフフフフフフフ・・。やってやるわ。 そう、私はやってやるのよ。)
「ねぇねぇ、シャルマント?」
王子さまの声はまたまたシャルマントに届きません。さらにシャルマント表情が悪だくみの、もっと上目遣いの、少女とは思えないような薄ら笑いの表情を王子さまに向けています。
(そうだ、石のカエルを壊すときには派手にいきましょう。できるだけ大きな音を立てて、メチャクチャに何回も何回も叩くのよ。あの魔女にその音が届くように・・・。
ムフフフフフフフ・・・。)
「ねぇ、ねぇったら、シャルマント。どうしたの?」
王子さまの声はまったくシャルマントに届きません。すると急にシャルマントは顔を伏せ、片手を顎に当て、目を閉じて何やら真剣に考えだします。
(ん~~~、殴るだけじゃ魔女の仕返しがあるわよね・・・、あの紫魔女ったら私を動けなくしたのだから・・・、そうしたら絶対に仕返しされちゃうわよね・・・。)
シャルマントはしばらく「ん~~、ん~~」と唸り続け、頭を左右に傾けます。
(そうだ! ザバンを連れて行こう! 私が魔女を殴った後で、直ぐにザバンを仕向けるの。そしてザバンに魔女の足でも甘噛みさせて、魔女が痛がっている隙に逃げればいいんだわ。
いやダメよ。 足が痛くても魔法を掛けられて逃げられなくされてしまうわ。
魔法が使えなくなればいいのね。
思い出せ、私。 あの時、アイツは・・・、そう、右手に杖を持っていて私にそれを向けていたわ。
ん~~~、そうよ。 アイツは右利きだからザバンに右腕を甘噛みさせればいいんだわ。そうすれば魔法が使えなくなる。これなら逃げ切れるわ、きっと。
冴えてる、今日の私、すっごく冴えてる。
ムフフフフフフフ、完璧だわ。私の計画。
やってやるわ、やってやるのよ。 待ってなさい紫魔女。ムフフフフフフフ。)
「ねぇ、シャルマント。」
王子さまの声に、シャルマントはにっこりとした表情を向けて言いました。
「はい、行きます。」
「本当に? 一緒に行ってくれるの?」
「ええ、行って、この私の名探偵ぶりをご披露しますわ。」
「じゃあお願いするよ。」
王子さまも明るい表情になりました。
「あ、でも、ザバンも連れて行きますのよ。だって、ザバンは私の騎士なのですから。」




