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あたしの恋人  作者: 紫月 飛闇
Season1 始まりと出会い
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23、お祝いをしよう <Side 和馬>





実が医大をいつの間にか辞めていて、俺たちと同じ大学を受けるんだ、と聞いてから、ぎこちない日々が続いた。


受験生なのだと知ってしまった以上、受験日まで残りわずかでも<仕事>に関わらせるわけにもいかない、と思って、残りの3人で仕事をした。



怪我をすればまた心配するだろうから、と安全に安全を期した作戦で。


当然、いつもなら<組織>を意識した作戦になるが、この期間だけは<シリーズ>を集めることだけに重点を置いて、<組織>からは逃げるように帰っていた。


でもまぁ、ノワールや怪盗カヴァリエーレは、事情を知っていようがなんだろうが、容赦なかったけど。





そんな風に、必要以上に神経質になりながら<仕事>をしていて思う。


やっぱり、怪盗夜叉は誰一人欠かすことができず、4人で成り立っているんだな、と。


作戦も、やっぱり<ブラック>がたてたものの方が、俺たちで頭捻って練った作戦よりも無駄がないのだと思い知る。





今まで<ビール>の情報収集力にだけ俺はこだわっていたけど、<ブラック>の計画的な作戦のたてかたも学ぶべきだな、と痛感した。


だから、2月の半ば、実が合格したのだと聞いたときは、やっぱりほっとした。









23、お祝いをしよう↑↑         <Side 和馬>









実の大学合格が決まった夜は、俺の家で祝賀パーティーをした。


・・・・・・もっとも、愛良の受験が終わってから、ず~っとパーティーばっかだけど。


このお祭り外人2人組は、仲が悪いくせにこういうときは妙に結託してくるんだよな。



「じゃぁ、ここで堂々と予告します!!」


もうひとりのお祭り男、宗次が完全に酔っぱらった様子で、突然立ち上がって大声で宣言しはじめた。


ちなみに、宗次よりは酒が強い俺は涼しい顔でそれを見守って、あまり酒を好まない実と里奈は、宗次かなにを言い出すのかはらはらしている。


ロゼとジョンは、やんややんやと宗次を乗せてる。





「4日後に、怪盗夜叉は<ウェディング・パール>を盗みにいきま~す!!」


「おぉ~!!」


「なるほどね」


「はぁ?!」


「・・・おいおい」


ジョンとロゼが感心したような反応を示し、実と俺が呆気にとられたように言う。だが、酔っ払いと化した宗次は上機嫌にさらに報告してくる。




「ちなみに、すでに警視庁と美術館には予告状を出してます~!!」


「・・・愛良ちゃんがもう寝ていてよかったわね」


里奈の苦笑混じりの呟きに、思わず頷いてしまう。


・・・まったくだ。しかも、犯行のことも予告状のことも、俺はまったく聞いてないぞ?!


・・・・・・もちろん、実も聞いてないだろうし。


何考えてるんだか。





「・・・受験が終わった途端<仕事>か。宗次もなかなかやるね」


「わざわざトリックが教えてくれた、ということは、宣戦布告と受け取っていいのかしら?」


「よし、オレも気合い入れて邪魔しよっと」


実が苦笑しながら呟いているのとほぼ同時に、ロゼとジョンがなにやらやる気になっている。


・・・宗次のやつ、いらぬ種を撒きやがって・・・・・・。


「じゃぁ、僕もがんばっていい作戦をたてようかな」


実まではりきり始めて、俺は4日後の<仕事>に不安を覚え始めていた。









そして、犯行日当日。


やたらとはりきっているのは、久しぶりに<仕事>に参加する実と、久しぶりに思う存分いたずらできる宗次。・・・そして、全員で<仕事>をできたことになんだかんだとほっとしている、俺。


つまり、男3人が久しぶりのフルメンバーでの怪盗夜叉に高揚感を覚えていた。



「呆れた。これじゃぁ、いたずら前の子供みたい」


宗次が用意した様々な効用のダーツの矢を仕込んだ俺に、里奈が非難するように言う。それは、ダーツの矢を用意した宗次と、嬉々としてそれを胸にしまい込んだ俺と、ふたりに向けた非難。


「まぁまぁ、今回は警備の数も多いし、念には念を、だよ」


にこにこと里奈を宥めるのは実。その実も、受験が終わって久しぶりの<仕事>にわくわくしているのが誰から見てもわかる。


「・・・もう。ふざけてばかりで失敗しないでよね」


スリルに挑むこの高揚感を理解できない里奈は、ただただ俺たちに呆れた視線をよこす。


それに俺たちは懲りずにニッと笑い返し、同時に思う。


さぁ、ゲームスタートだ。









今回の獲物、<ウェディング・パール>は、国立美術館に展示されている絵画のひとつ。


地下の展示場に飾られているそれを盗むには、いつもの天井裏侵入はなかなか難しく、しかも逃走もパラグライダーは不可能。


・・・どのみち、前回ノワールによって破壊されたパラグライダーは、まだ修復できてないから使えないけど。



だから、今回の作戦は堂々と盗みに入って出ていく、というものだ。


いわゆる、真っ向勝負ってやつだ。





いくら大人数の警備を敷いたって、国立美術館は迷路のようにでかい。加えて、事前の<ビール>による細工によって、美術館内にあちこち仕掛けが張り巡らせてある。


今夜の<ダージリン>は、この美術館の館長に化けていたりする。本物の館長は、今頃カメラの監視室で待機していた警備員と共に、すやすやと寝息をたてて寝ているに違いない。


そのふたりの睡眠を妨げないように、ひっそりとカメラの監視室で様子を見守るのは<ビール>と<ブラック>。



そして、怪盗夜叉に扮した俺は、予告時間より少し早めに美術館の裏口に姿を現した。


無論、裏口を警備していた警備員はすでに夢の中だし、ニセ館長のお陰で裏口に鍵はかかっていない。


あっさりと美術館内に侵入した怪盗夜叉の犯行は、ここからが勝負だった。






「か、怪盗夜叉だー!!」


俺の姿を見つけた警官の一人が叫べば、次々と通信機越しにそれが伝わる。ついでにそれを盗聴している俺たちにも。


『んじゃ、作戦その1、決行~!!』


<ビール>の楽しそうな合図と共に、盗聴している通信機に様々な声が飛び交ってくる。


『二階非常階段付近に怪盗夜叉発見!!』


『三階廊下を逃走中の怪盗を見つけました!!』


『一階館長室に向かう夜叉を見つけました、追いかけます!!』


諸々にあちこちから報告が飛び交う。この声色の違うすべての警官の声は、あらかじめ録音していた<ダージリン>の演技だ。


しかも、各階にダミーを放っているから、ますます警官たちは混乱している。





各フロアを警備している警官たちが右往左往している間に、俺は悠々と中央階段を降りて地下の展示室に向かう。


ここから先はスピード戦。


どうせここから先を担当している警官はテコでも動かないだろうから、俺は<ビール>特製のダーツの矢をスタンバイして、目的の場所まで突撃した。





『中央入口の右の扉だけロックを開けておいたわよ』


「サンキュ、館長殿」


逃走する俺に<ダージリン>からの報告。館長という姿立場を活かして、逃走経路を確保するのが今回の<ダージリン>の仕事。


その間、その逃走経路に仕掛けた仕掛けをタイミングよく発動させるのは、監視カメラで様子を見ている<ビール>と<ブラック>。


あらゆるところに用意された仕掛けによって錯乱させられた警官たちの間をすり抜けて走る俺の腕の中には、今夜の獲物<ウェディング・パール>が。




ちなみに、それを地下の展示室で警備していた警官はひとり残らず夢の中。


この連携プレーでの怪盗夜叉の犯行に、俺は久々にぞくぞくとした興奮を覚えていた。




「<ブラック>、外に出るぞ、準備はいいか」


『いつでもいいよ』


<ブラック>に合図を送って、俺はマスコミが待つ、美術館の外へ。


怪盗夜叉として紳士的に腰を折って挨拶をしてから、今夜の獲物を掲げる。


あがる歓声。


盗聴機からは、慌てて美術館の外に駆け出してくる警官たちの様子が窺える。



悪いけど、警察諸君の到着を待つわけにはいかないな。




にやり、と仮面から唯一見える口端をあげて笑い、俺は小さく呟く。


「・・・いいぜ」


すると、するする、と降りてきたのは太めのワイヤー。俺はそれを腰に装着して、別れの挨拶を告げた。


「それではみなさま、ごきげんよう」


弾ける弾幕。


同時に、怪盗の黒マントが宙を舞う。




視界を遮る弾幕がひくころには、黒マントを残して、怪盗の姿はなくなっていた。









その頃俺は、ワイヤーで美術館の屋根まで登り、帰宅する準備にとりかかっていた。


・・・この美術館、なぜか屋上がないから屋根に登るしかなかったんだよな。ワイヤーで俺を引き上げたのは<ブラック>。


<ビール>は高いところはだめだし、<ダージリン>と一緒に後始末もあるからな。



「・・・獲物、気をつけて持って帰るんだよ?」


心配そうに<ブラック>が言う。


「わかってる。今夜は<お客さん>が色々いるはずだしな」


宗次のせいで。




俺は黒マントで今夜の獲物を包みながら不敵に笑って返す。地上で捨ててきた黒マントは、夜叉の黒マントじゃなくて、普通の黒布。


簡単には証拠は残さないぜ。




「じゃぁな、その衣装、頼んだ」


すでに怪盗夜叉の黒スーツではなく、動きやすい黒い服装に着替えて、俺はいつものようにワイヤーを放って夜空を駆ける。脇には今夜の獲物を抱えて。




だけど、ここまで覚悟して用意したにも関わらず、拍子抜けなことに、ノワールも怪盗カヴァリエーレも現れなかったのだ。


今回の獲物、<ウエディング・パール>は、たしかに<失われた誕生石>シリーズなのに。


しかも、あの夜の宴会では、たしかに邪魔してくる気、満々だったくせに。




あっさりと帰宅できてしまった俺をリビングで出迎えたのはその問題のふたり。


ロゼとジョン。


愛良はちょうど風呂にいるらしい。・・・たぶん、このふたりが図ったんだろうけど。




「・・・・・・」


「あら、お帰りなさい、ナイト。どうしたのかしら、そんな変な顔をして?」


「久しぶりのフルメンバーで、ちゃんと成功したんだろ~?もっとうれしそうな顔しろよ、ジュニア」


ニヤニヤ笑いながら、なぜか仲良く俺に話しかけてくるロゼとジョン。



・・・まぁたしかに?


実がいないこの1ヶ月、せっかく盗った獲物をこのふたりに横取りされたのも一度や二度じゃなかったけど。


・・・・・・だからこそ、今夜も来ると思ったんだけど。




「・・・あんたらが来るかと思ったけど?」


「あら、寂しかったかしら?」


「な~んだ、ジュニアってばさみしんぼだなぁ~」


「ちっっっとも寂しくはないけど、奇妙すぎて気持ち悪いんだよ」


「あら、失礼しちゃうわね」


くすくす笑いながらロゼが言う。


・・・・・・一体、なんなんだ?!




イライラした様子の俺に、ジョンは嫌味なくらいにニヤニヤ笑って言った。


「今夜はドクターへのお祝いってことで、オレたちは休業したんだよ。今夜だけな」


「はぁ?!」


「ま、<組織>に渡らないなら、ジュニアが持っててもいいかっていう譲歩だよ、譲歩」


偉そうにジョンがさらにそんなことを言ってくる。




・・・譲歩だとぉ?!


だいたい、裏の世界を甘く見るなとか言ってきたふたりがそんなんでいいのかよ?!




「・・・今夜だけさ。また次の夜には、容赦はしない。お祝いくらいは受け取ってもいいんじゃないか?」


<ノワール>が意地の悪い笑みを浮かべてそんなことを言ってくる。


・・・・・・む、むかつく・・・。


あれだけ宗次に挑発的に挑んできて、始めから参加する気なかったんだな・・・。


警戒していた俺たちがバカみたいじゃないか。




「・・・ムカつく」


「おいおい、祝ってるのにムカついてどうすんだよ?」


くすくすとジョンは笑ってつっこんでくる。


「祝ってくれる相手によるんだよ」


「肝心のドクターは今夜は来ないのかしら?」


「実と宗次は今夜来るよ。明日には返さないと、飛行機に乗り遅れるからな」


黒マントで包んだ獲物を軽く持ち上げてから、俺は悔し紛れにもう一度ふたりを睨んでからリビングを出る。




くっそ~なにがお祝いだ!!


絶対俺たちの反応をおもしろがってたに違いない!!






確かに怪盗夜叉の獲物を狙わなかったのはその夜だけで、それから先の犯行は絶対どちらかが邪魔をしに現れた。


ノワールと怪盗カヴァリエーレも敵同士なくせに、妙に結託してるようなとこを見せるときがあるんだよな~・・・。


でも仲悪いけど。




夜の稼業では、ひたすら狙われたり逃げたりの日々。


日常生活では、いよいよ愛良が小学校を卒業することになり、卒業式に出られない両親の代わりに、俺とロゼ、ジョンが参席することになった。


・・・・・・意味わからないが、もはや、深く考えまい・・・。




そして、そこでもまたお祝い。


俺の家で振舞われた、里奈がつくった赤飯をロゼはうれしそうに頬張った。


「今夜はお祝いだから、この赤飯が食べれると思っていたわ。モチモチしていておいしいのよね」


「な、なんだこれ?!なんでこんなモチモチしてるんだ?!しかも、なんか色がついてるし・・・・・・」



・・・なんだ、ジョンも赤飯を知らなかったのか?!


「これはね、お赤飯というのよ、おバカさんなピエロ」


得意気にそう教えるロゼ。



・・・いやいや、あんたもついこの間まで赤飯のこと知らなかったよなぁ?!



「赤飯?」


「お祝いのときとか、おめでたいときに食べる日本の特別なご飯なんだよ」


愛良がジョンに解説する。それを聞いたジョンが首を傾げる。


「お祝いとかめでたいとき?でもオレがここで暮らすようになってからも、結構あったよな?ジュニアの成人式に、アイラとドクターの合格祝いとか・・・・・・」


「・・・・・・おまえらのお祭り騒ぎのパーティーのせいでお赤飯どころじゃなかっただろうが」


たまらず、俺は突っ込む。すると、ジョンはニッと笑った。


「なるほどな。なら、これからはお赤飯も用意したパーティーにしような!!」



つまり、ジョンもロゼ同様、赤飯が気に入ったわけだな。


まったく、おもしろい外人ふたりだ。



・・・ん?これからも?!


これからもまだパーティーするつもりか?!



・・・たしかに、4月になれば、愛良と実の入学祝があるが・・・・・・。


というか、俺はまだ愛良と同居生活を続ける・・・・・・んだな・・・・・・。




わいわいと賑やかに食べる夕食を囲みながら、俺は苦笑を落とした。


だけど、不思議と嫌な気分ではなかった。




来月からまた新しい生活が始まる。


だけど、俺は何も変わらないのだと思っていた。




ところが、何も変わらないどころか、劇的な変化が待ち受けた1年が訪れることになったのだ。









そんなわけで、1年目、終了です!!

ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました。

こんなに続くとは・・・ましてや、まだまだ続くとは、「怪盗と少女の年の差カップルを書こう~」と書きだしたあの頃からは想像もできず(笑)

これもすべて、毎回見守ってくださるみなさまのおかげです!!


さてさて、和馬が意味深なことを言い残して、2年目に突入です!!


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