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あたしの恋人  作者: 紫月 飛闇
Season1 始まりと出会い
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20、恒例の反省会  <Side 愛良>(後編)







ロゼがフランスから帰ってきたのは、ジョンと突然暮らすことになった4日後、日曜日のことだった。


ジョンのマジックショーを見てから一週間しか経ってないとは思えないほど、毎日が賑やかで楽しくて、あたしはロゼも加わったら当然もっともっと楽しくなるんだと思ってた。







「ただいま」


「ロゼ?!おかえりなさい!!今日帰るならメールくれればよかったのに!!」


突然ひょっこりと帰ってきたロゼに、あたしはうれしくて飛び付きながらそう言った。


「そうね、今度からそうするわ」


にっこりとふわふわの金髪を揺らしながら笑う笑顔は、いつものロゼだ!!





「お、フランスからお戻りか?」


玄関であたしが騒いでいるのを聞き付けたのか、和馬お兄ちゃんが部屋から出てきた。


「ただいま、ナイト。有意義な旅はできて?」


「・・・お陰様で」





そっか、お兄ちゃんが帰ってくるのと入れ違いにロゼはフランスに行っちゃったから、お兄ちゃんが京都に行ってたとは知らないんだよね。


なんか、ロゼとお兄ちゃんのこんな雰囲気も久しぶりで、あたしは懐かしくてうれしかった。









20、恒例の反省会;;     <Side 愛良>(後編)










「そういえば、プリンシア、メールで言ったことは気を付けてくれたかしら?」


「ロゼがくれたメール?『ピエロの格好をした騎士にたぶらかされないで』ってやつ?」


「そうよ」


「・・・げ」


「ん~、そんな変な人に会わなかったよ?・・・和馬お兄ちゃん?どうしたの?」


なぜか固まったままの和馬お兄ちゃんにあたしは声をかけてみる。すると、お兄ちゃんは恐る恐るといった様子でロゼに尋ねた。



「・・・ちなみに、その『ピエロの格好をした騎士』となんか因縁でもあるのか、ロゼ?」


「そうね・・・。因縁は色々あるけれど、一言でまとめれば、<大嫌い>ね」


「あ、そう・・・」


そのまま乾いた笑い声を出す和馬お兄ちゃん。もしかして、心当たりがあるのかな?


それよりも、とあたしはお兄ちゃんの袖を引いてこそこそと耳打ちする。




「ロゼをびっくりさせたいから、ジョンのことは内緒ね」


「あ~・・・うん。できれば、このままずっと話したくないけど・・・・・・」


遠い目をしながらお兄ちゃんが頷いてくれる。


いつかはジョンのこと、話さなきゃだめだと思うけど・・・急にどうしたんだろ?




「プリンシア?何か変わったことでもあったの?」


こそこそとあたしと和馬お兄ちゃんで話をしていたら、ロゼが怪しむように首を傾げて訊いてきた。


だけど、あたしはロゼににっこり笑って、答えは言わなかった。


「えへへ、夜までのお楽しみだよ!!」




今日のマジックショーはお昼の回でおしまいだから、夜には帰れるってジョンは言ってた。


だから、夜にはジョンをロゼに紹介できるよね!!



「あらあら、それは楽しみね。ねぇ、ナイト?」


「そう・・・だな」


なぜか脂汗を浮かばせながら、お兄ちゃんはそう言って笑った。








夜になって、久しぶりに3人で夕食を囲んでいると、玄関から新しい同居人の声が響いた。


「たっだいま~アイラ~ジュニア~」


「あ、帰ってきた!!」


ぱっとあたしが立ち上がると、なぜか和馬お兄ちゃんがそれを止めてきた。


「・・・俺が迎えに行ってくる」


「え・・・あ、そう・・・?」


よくわかんないけど、お兄ちゃんがさっさと玄関に向かっていっちゃったから、あたしはそのまますとん、と椅子に座り直した。


そんなあたしたちの様子を見ていたロゼが、不思議そうに口を開く。



「誰か今夜はここに来るのかしら?どうやら、トリックたちじゃないみたいだけど?」


ロゼはすごくて、玄関まで迎えに行かなくても誰がこの家に来たのか、わかるらしい。でも、ロゼにとって初めて会う人だったら、わからないよね。


「うん、ロゼがいない間にすごいことが起こってね」


「すごいこと?」


「いっぺんには全部話せないけど・・・・・・じつはね、この家に新しい同居人が増えたの!!」


「新しい同居人・・・?・・・ナイトもそれをオーケーしたの?」


「うん、なんか、押されてって感じだけど」


くすくす笑いながらあたしがロゼにそう話しているうちに、和馬お兄ちゃんとジョンの足音が近づいてくるのが聞こえてきた。






「大丈夫だって。心配性だなぁ、ジュニアは」


けらけらと陽気に笑いながらリビングの扉を開けて最初に入ってきたのは、ジョン。続いて和馬お兄ちゃんが入ってくる。


「ただいま~、アイラ」


「おかえり、ジョン」


「ジョン・・・?」


ロゼがゆっくりとジョンに向き直る。ジョンはヨーロッパで有名なマジシャンみたいだから、ロゼも知ってるかな?



「ロゼ、知ってる?ヨーロッパを中心に活躍してるマジシャン、ジョン・ベラルディだよ!!ジョンが新しい同居人なの!!」


「初めまして、麗しきマドモアゼル。ワタシは・・・」


「ピエロ、ね」


にこにことロゼに近づいてきたジョンに、ロゼがいっそ冷ややかなくらいにそう言って遮った。


・・・でも、一応、笑顔なんだよね。





「・・・いえ?ワタシはマジシャン。名は、ジョン・ベラルディと申しますが?」


「そうだったかしら?でも、私はあなたをピエロと呼んでいたはずよ」


ジョンもロゼも外人さんで。外人さん同士が日本語で喋ってるって、変な光景・・・。


とかじゃなくて。



「ロゼ、ジョンを知ってるの?!」


「えぇ、残念なことに、知っているわ」


「えぇと・・・ワタシはあなたにお会いしたことがありましたか・・・?」


笑顔が消えて、ジョンが戸惑ったようにロゼに話し掛けると、ロゼは艶やかに彼に笑いかけて言った。





「おや・・・覚えていないのかな・・・・・・?」








・・・あれ?なんか、変な感じ。なんだかよくわからない違和感と、ぞくっとした寒気が背筋を走った。


「・・・まさか・・・!!」


ぶるっとあたしが体を震わせるのと同時に、ジョンが顔色を変えて驚いた声をあげた。


「ま、まさか、コルヴォ・・・!!」


コルヴォ?ロゼはロゼだと思うけど・・・。


「なっ・・・聞いてないぞ、ジュニア!!」


「・・・だから、言おうとしたじゃないか・・・」


なぜか慌てるジョンに抗議された和馬お兄ちゃんは、諦めたように肩を竦める。



「コルヴォ・・・なんでおまえがここにいる・・・!!」


「それはこちらのセリフよ、ピエロ。・・・あぁ、でもそうね、あなたはここに用があるのかもしれないわね。ストーカーのようにくっついて、ね」


「な、なんだと・・・!!」





険悪。


ものすっっごく険悪なムード。





マジシャンであるジョンを登場させて、ロゼをびっくりさせて、ジョンのマジックで喜んでもらおう、というあたしの作戦はもはや跡形もなく灰になったのだということだけはわかる。



日本語で話すことすら億劫になったのか、ジョンとロゼはお互いに静かに、だけど睨み合いながら何やらずっと異国語で話してる。


ふたりとも嘘くさい笑顔を張り付けながら話してるから、なんだかすごく怖い・・・。



あたしはどうしたらいいかわからなくて、リビングの扉のそばに立ったままの和馬お兄ちゃんに救いを求めた。お兄ちゃんは、ふっ、とため息をついてから、あたしの隣に座った。


「ね、ねぇ、どんな話してるの?」


語学が堪能な和馬お兄ちゃんならふたりの会話がわかっているだろうと思って、あたしは尋ねてみる。


「ん~?まぁ、思出話だな。お互いに<仕事>の中心はヨーロッパだから、すれ違ったことがあるみたいだな」


「へぇ~。ねぇねぇ、なんでジョンはロゼを<コルヴォ>って呼んだの?」


「え、あぁ~・・・、ニックネームみたいなもんだな!!」


「ロゼがあたしたちを呼ぶような?」


「そうそう」



ふ~ん、そうか~。


ロゼもジョンを<ピエロ>って呼んでたし。そいえば、ジョンも和馬お兄ちゃんのこと、<ジュニア>って呼ぶもんね。





「外人さんって、みんなニックネームで呼ぶのが好きなのかな?」


「・・・いや、あのふたりが特殊なだけだと思うぞ?」


そんなことを話している間も、ロゼとジョンの冷戦は続いてる。いつまで続くのかな、と思ったら、ジョンがくるりと向きを変えてリビングを出ていこうとした。




「ジョン?!」


「あら、この家を出ていってくれるのかしら、ピエロ?」


「誰がんなことするか。部屋に戻るだけだよ!!」


「部屋・・・。・・・ナイト、もしかしてピエロの部屋というのは・・・」


「・・・お察しの通り、あんたの隣の部屋だよ、ロゼ」


呆れたように、でも少しびくびくした様子で和馬お兄ちゃんがそう答えると、ロゼの周りの気温がだいぶ下がった・・・気がした。




「物音ひとつたてずに暮らすのね、ピエロ。仕事上、こそこそするのは得意でしょう?」


ロゼがジョンの背中に向かってそう言うと、彼は顔だけこちらに向けてロゼを睨んでから、リビングを出ていっちゃった。


・・・まぁ、たしかにマジシャンって手先が器用じゃないと勤まらないだろうから、こそこそとしたイメージがあるけど・・・ロゼにしてはずいぶんと珍しく棘のある言い方だなぁ。




「・・・ナイト」


「ん?」


「あとで、ゆっくりと話を聞かせてくれるわよね?」


壮絶なロゼの笑みに、和馬お兄ちゃんが固まっていた。





その後は、ロゼは何事もなかったかのように振る舞っていたけど、これから毎日しばらくは、ふたりの冷戦状態が続くなんて、あたしは思いもしていなかった。



あはは、思ったより、ロゼとジョンが仲が悪いです(笑)

きっと、「最後のトレジャーハント」みたいなこと、いっぱいあったんでしょうね。

ジョンがロゼをどう呼ぶかはちょっと迷ったのですが、まだ明かせない、彼と彼女のエピソード的に、「コルヴォ」がちょうどいいかなってことになりました。

和馬がどんどん板挟みになってて、ちょっとかわいそうですね(笑)

でも、シーズン1のフルメンバーがやっと揃いました!!

愛良サイドからでは謎だらけの和馬とジョンの会話、ジョンとロゼの会話、ロゼと和馬の会談(!)は、次回以降に明かされます。

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