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あたしの恋人  作者: 紫月 飛闇
Season1 始まりと出会い
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20、恒例の反省会  <Side 愛良>(前編)










なんだか夢のような展開に、あたしはまだ信じられずにいた。



でも、前方を歩きながら、和馬お兄ちゃんをからかうようにして絡んでいるのは、たしかにあの有名なマジシャン。


ミルクチョコレートみたいな髪と琥珀色の瞳。時々ふと、寂しそうに笑う外人さん・・・ジョン・ベラルディが、和馬お兄ちゃんの家で暮らすことになるなんて。






「あ、やっと帰ってきた・・・・・・って、なんじゃ、こりゃ?」


和馬お兄ちゃんの家の前で待っていたらしい宗次お兄さんが、あたしたちを見てすっとんきょんな声を上げる。


・・・うん、まぁ、色々ツッコミたいよね。





「宗次?おまえだけ?」


「里奈は時間も遅いし帰らせた。実は一旦帰宅してから来るとは言ってたけど・・・・・・」


和馬お兄ちゃんの質問に答えながらも、宗次お兄さんの視線はジョンにある。


「え~と?愛良のお迎えにでも行ったら、外人さんでも拾っちゃったのかな、かずくんは?」


「猫や犬みたいに言わないでほしいな~。オレは・・・」


ジョンが宗次お兄さんに近づいて、ぽん、と一枚のトランプを差し出す。ジョーカーのカードを。






「オレは、マジシャンなんだから」


「マジシャン・・・?・・・って、あ、あんた、まさか・・・!!」


「オレの名前はジョン・ベラルディ。この家にしばらく厄介になることにしたから、よろしくな」


にかっと笑うジョンに絶句する宗次お兄さん。


和馬お兄ちゃんは、呆れた様子でぽつりと言った。




「・・・俺、あんたの名前を今初めて聞いたよ」


え?名前知らないままだったの?!










20、恒例の反省会;;    <Side 愛良>(前編)











「・・・・・・っ。なん、だ、これ・・・」


和馬お兄ちゃんの家に足を踏み入れた途端、なぜかジョンが頭を抱えてふらりとよろけた。



「ジョン?大丈夫?具合悪いの・・・?」


「アイラ・・・・・・君はこの家にいて、何ともないのか・・・?」


「え・・・うん・・・・・・?」


「へ~やっぱり感覚が鋭いんだな」


わけがわからないあたしを追い越して家に上がった和馬お兄ちゃんが、どこか感心したような口調で踞るジョンに言う。



「・・・ジュニアは何ともないのか?」


「それで呼ぶなっての。・・・ん~まぁ、生まれたときからこの家にいるわけだから、今さらなぁ?それに、微弱なもんだと思うぜ?」


「微弱とはいえ、普通の狂い方とか違うから始末に悪い・・・」


ヨロヨロしながら立ち上がるジョンに、和馬お兄ちゃんがどこかの言語でからかうように、何か言った。そして、ジョンも同じように日本語じゃない言語で何かを言い返したみたい。




「・・・なぁ、愛良、いったいなにがなんだか、説明できるか・・・?」


呆然とした様子の宗次お兄さんの言葉に、あたしは首を横に振った。


だって、あたしにも何がなんだか、さっぱりわからないんだもん。






そうしているうちに実お兄さんまで和馬お兄ちゃんの家にやって来て、とりあえずリビングにやっと落ち着いたばかりのあたしたちを見て、目を丸くした。


「か、和馬、彼はなぜここに・・・?彼ってたしか・・・・・・」


「君もジュニアのお友達?初めまして、オレはジョン・ベラルディ」


「僕は須藤 実・・・ってそうじゃなくて!!なんでマジシャンがここにいるんだ?!」


「は~い、俺も知りたいです~」


ソファーでくつろいでいた宗次お兄さんが手を上げながら、実お兄さんの言葉に同調する。



「和馬、君はたしかさっき、<彼>の誘いを受けに・・・」


「そうだよ。そしたら、ジョンと愛良がいた」


和馬お兄ちゃんのぶっきらぼうな言い分に、にっこり笑うジョン。


・・・でも、あたしは笑えない。


和馬お兄ちゃんだけでなく、実お兄さんも宗次お兄さんも探るようにあたしを見てくるから。



「・・・愛良ちゃんが?なんでこんな時間に?」


実お兄さんが和馬お兄ちゃんとあたしを交互に見ながら、答えを求めるように呟く。


・・・・・・あたしからすると、なんで和馬お兄ちゃんがあそこに来たのかな、と思うんだけど・・・。





「アイラもジュニアも、オレが誘ったからあそこにいたんだよ」


横からあっさりと解答してくれたのはジョン。


「ジョンが和馬お兄ちゃんも誘ったの?なんで・・・」


「それはアイラ、彼もまた君と同じ情報を求めているからだよ」


「ジョン!!」


和馬お兄ちゃんが鋭くジョンを呼べば、彼はおどけたように肩を竦めた。


「愛良、話を聞かせろ。なんで、あそこにいたんだ?」


和馬お兄ちゃんが怒った様子であたしを睨んでる。


・・・・・・うぅ、本気で怒ってる・・・。




「それは・・・」


「ジョンが言うように情報を聞きに行ったのか?あの時間、小学生ひとりで」


腕を組んであたしをじぃっと見下ろしてくる和馬お兄ちゃん。


ここで嘘をついても仕方ない、とあたしも思ったから、素直に一回だけ頷いた。


「・・・愛良、前に言ったよな?夜に塾以外でひとりで出歩くのは禁止って。守れないなら、この家から追い出すって」


「や、やだ・・・!!」


「約束を守れないのに、この家にいたいというのはずるいんじゃないか?」


冷たい目。


お兄ちゃんが、本気で怒っているのがわかる。


・・・・・・約束を破ったのはあたしが悪いのはわかってる。・・・でも、知りたかったんだもん、怪盗夜叉のことをもっと・・・。




涙を浮かべてじっと俯いていると、実お兄さんが優しく頭を撫でてくれる。


「和馬、意地悪はそこまでにしときなよ。愛良ちゃんだって、ちゃんと反省してるよ。ね?」


実お兄さんに訊かれて、あたしは涙をポロポロ溢しながらもちゃんと頷く。すると、和馬お兄ちゃんがため息をつくのが聞こえた。





「かわいそうに。なんで怪盗夜叉のために情報を得ようとしたアイラをそんなに叱るんだか」


重苦しい空気に、軽い口調でそう言ったのはジョン。


「健気じゃないか。怪盗夜叉のために怪しい誘いにのったんだぜ?<Lost Birthday>の情報を得るために」


「あ、ジョン、それは・・・!!」


はっとしたように、実お兄さんと宗次お兄さんがあたしを見る。




<Lost Birthday>のことは、修登お兄さんに秘密だよって言われたのに。


あのとき、その話を聞いていたのは、あたしと里奈お姉さんだけだったから、あたしは焦った。


和馬お兄ちゃんにはついつい話しちゃったけど、宗次お兄さんと実お兄さんは知らないはずだし・・・。




でも、意外にも和馬お兄ちゃんは冷静にあたしに言った。


「実も宗次も里奈から話は聞いてる。渡辺がそんな話を里奈と愛良にしたっていうのはな。それで?愛良はその本当にあるかどうかもわからない、<Lost Birthday>っていうのを知ってどうするんだ?」


「それは・・・・・・」


「怪盗夜叉を助けるんだろ?あの怪盗じゃぁ、たしかに不安だし?なぁ?」


「怪盗夜叉はすごくかっこいいもん。あたしのこと、助けてくれたりもしたよ!!」


ジョンの茶々にあたしが反発すると、彼は目を丸くして口を閉ざした。


すると、和馬お兄ちゃんがあたしと目線を合わせるようにしゃがんで、肩に手を置いて静かに言った。





「愛良、怪盗夜叉のことを色々知りたいのはわかる。でも、怪盗夜叉の正体も知らないおまえが、そんな危険を犯して情報を得てどうする?正体も居場所も知らない怪盗に、どうやって伝える?」


「・・・・・・」


もっともな和馬お兄ちゃんの言葉に言い返すこともできずに俯いていると、ガタッと音をたてて椅子が倒れる音がした。


すごい勢いで立ち上がった、ジョンだった。






「ジョン・・・?」


「知らない・・・?アイラ、君は怪盗夜叉の正体を知らないのか・・・・・・?」


「・・・うん」


「なのに、なぜ<Lost Birthday>のことを知りたがる・・・?」


「ジョンには関係のない話だ」


ジョンの問い掛けに答えたのは和馬お兄ちゃん。にべもなくばっさりと切り捨てる。


「・・・じゃぁ、オレに関係のある疑問に答えてもらおうか・・・?」


戸惑いを含んだ様子で、ジョンが和馬お兄ちゃんに尋ねる。





・・・どうして、ジョンは急に様子が変わったんだろう・・・・・・?


あたしが、<Lost Birthday>のことを何も知らなかったのを知ったときも、ジョンはこんな風に戸惑ってた。






「ジョンに関係ある疑問?なんだ?」


「・・・なんで、ジュニアとアイラは一緒に暮らしてるんだ?」


「・・・どーしてジョンに関係あるか聞いていいか?」


「オレもここで暮らすからに決まってるじゃないか」


「えぇ?!」


最後の驚きの叫びは、宗次お兄さんと実お兄さん。すっごいびっくりしてる。


当然だよね、あたしもまだ嘘みたいに思えるもん。




「・・・だから、なんで俺がジョンと暮らすんだ?」


「人生の先輩として、やっぱり見守らないと。・・・積もる話も色々あるし?」


「・・・俺はないけど?」


「おやぁ?そうかな?前任の・・・・・・<月>について、とか?」




ぜんにんの月?


意味がわからないジョンの単語に首をかしげるけど、どうやらこの場でそれがわからなかったのはあたしだけみたいで、和馬お兄ちゃんたちは顔色を変えてジョンを凝視してる。





「・・・何が目的だ?おまえ、ロゼの仲間か?」


宗次お兄さんが慎重に尋ねるけど、ロゼの友達じゃなくて、仲間って訊いたのはどうしてだろ?


「ロゼ?オレは仲間なんていないぜ?オレは孤高のマジシャン。・・・ま、しばらく日本にいるつもりだし?それまでここを滞在場所にするよ」


「ちょ・・・待ってくれ。話が全然見えない。一体何が・・・」


「実。とりあえず、愛良を寝かせるのが先だ」


実お兄さんの言葉を和馬お兄ちゃんが遮る。


しかも、あたしを寝かすという、ここから追い出すために!!




「え~まだ、眠くない!!」


つい、いつもの調子で抗議したら・・・・・・和馬お兄ちゃんに冷ややかに見下ろされた。


・・・し、しまった、今夜はあたし、結構不利な立場だった・・・・・・!!





「愛良?今夜のことは反省してるな?」


「・・・はい」


「余計なことには首を突っ込まない。もう一度、約束できるな?」


すご~く冷ややかなお兄ちゃんの言葉の棘がちくちくとあたしを刺してくるみたい。


余計なことに首を突っ込むなって言われても、やっぱり怪盗夜叉のことも、<Lost Birthday>のこともすっごくすっごく気になる・・・!!




「・・・愛良?」


優しくもう一度名前を呼ばれる。


優しく呼ばれる方が恐いよ~。


うぅ、しょうがないよね・・・。あたしはまだ小学生の子供だから、夜にひとりで歩くのは危険なんだよね。


和馬お兄ちゃんが、恋人のあたしのことを本気で心配してくれているのは、愛だもんね。


小学生のうちは仕方ない・・・よね。


小学生のうちは。





「愛良、返事は?」


「・・・わかった。ひとりで、夜に出歩かない」


小学生のうちは、って心の中で付け加えて。


「ん。わかったならいい。じゃぁ、明日も学校あるんだから、早く寝ろ」


「で、でも、ほんとにジョンがあたしたちと暮らすなら・・・その理由くらいは知ってもいいよね?だって、あたしにも関係あることだよね?」


粘るようにお兄ちゃんを見上げれば、困ったようにお兄ちゃんはあたしを見返してくる。






「・・・そりゃ、無関係じゃないけど、まだ暮らすとも決まってないし・・・」


「ねぇ、ジョン。ジョンはロゼを知らないの?でも、誰かに会いに来たんでしょ?だからあの日、この家の前にいたんでしょ?それって、ここで暮らしたいって理由と関係あるの?」


追い出されたら大変、と思って、あたしは思ったことを次々と矢継ぎ早にジョンに問いかけた。


ジョンは、そんなあたしにクスッと笑いかけた。


「アイラは頭がいいね。たしかにオレは、ロゼとかいう人物は知らない。ここには・・・君の母親に会いに来たんだよ、ジュニア」






えぇ?!


ジョンって和馬お兄ちゃんのママを知ってるの?!


そっか、だから和馬お兄ちゃんのことを<ジュニア>って呼ぶのね。




あたしが驚きつつも納得していると、和馬お兄ちゃんたちは驚いた様子で固まったまま声も出ないみたい。


あぁ・・・でもそっか、和馬お兄ちゃんの両親はもう亡くなっているから、ジョンが会いに来た人はもう・・・・・・。





「だから、オレはジュニアのことを見守る義務があるってわけ。わかった?」


ジョンに問われて、あたしはコクコクと頷く。すると、ジョンはニッと笑ってあたしに言った。


「じゃぁ、子供はもう寝る時間だ。あ、でも最後にオレからも質問」


「なぁに?」


「さっき訊いたのに教えてもらえなかったから、アイラが教えてくれればいいや。なぁ、なんでアイラはジュニアと暮らしてるんだ?親戚の子・・・なわけないよなぁ?」


ジョンの質問に、あたしは胸を張って堂々と答えた。




「あたしが、和馬お兄ちゃんの恋人だから、一緒に暮らしてるんだよ」




「・・・へ?」


「同棲よ、同棲。あ、同棲って日本語わかる?」


「いや、それはわかるけど・・・」


事情がうまく飲み込めていなそうなジョンを気遣って尋ねてみると、ぼんやりと彼は答えてくれたけど・・・・・・なんでそんなに鈍い反応?


あたしと和馬お兄ちゃんが恋人同士ってそんなに変なことかなぁ?





「・・・まったく」


やっと口を開いたジョンは、なぜか呆れ顔でお兄ちゃんの方を見た。


「親子揃ってロリコン趣味とは、筋金入りだな」


「んなっ・・・俺はちが・・・っっ!!」


「ま、いいさ。アイラの恋を応援しよう」


「ほんと?!ありがとう、ジョン!!」


「オレはいつだって、レディに優しいマジシャンだからね」


そう言って、どこからともなく一輪のバラをあたしにくれた。


・・・あ、これ、造花だ。


「本物はまた今度ね。さ、今夜はおやすみ」


ジョンにまでそう言われちゃったら、あたしはもうリビングにはいられない。少し名残惜しい気分でちらっとジョンを見上げれば、彼はウィンクをしてあたし言った。


「大丈夫、オレはここで暮らすんだから、いつでもいくらでも話はできるよ。夜更かしはレディの肌には大敵。続きはまた明日ね」


「・・・わかった」


そこまで言われちゃったら、あたしもいつまでも駄々をこねられない。あたしは素直に頷いて、最後に和馬お兄ちゃんに視線を向けた。




「おやすみ、和馬お兄ちゃん」


「・・・あぁ、おやすみ」


そしてリビングの扉を閉めて、あたしは自分の部屋に向かった。二階にあがって、ふと、部屋の扉を見る。


余っている最後のひとつの部屋。


時々宗次お兄さんたちが泊まるのに使っていたけど、今度からここがジョンの部屋になるんだ!!そう思うと、なんだか明日からの毎日が楽しみになってきた。






だって、ジョンはマジシャンで、しかも和馬お兄ちゃんのママのことを知っていて、そして・・・<Lost Birthday>の何かを知ってる・・・・・・。






ロゼが帰ってきたらびっくりするかな。


あたしは、呑気にその程度にしか考えていなくて、まさかロゼが帰ってきてからの方が大変になるなんて、そのときはまだ考えてもいなかった・・・。






ということで、19話から続いている、ジョン・ベラルディ編。

愛良サイドの19話は、前編がメイン、後編はただのおまけです(笑)でも、和馬サイドでは、逆なんですけどね。

というのも、19話のタイトル、「留守中」というのは、愛良サイドでは、和馬のいないところで勝手なことをする愛良のことを指しているので。

きっちりと叱られる20話の前編がメインになるのです。

つまり、和馬サイドでは、「誰」の留守中の話なのかは・・・・・(笑)

次回の後編はただのおまけなので、ちょっと短いです☆



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