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あたしの恋人  作者: 紫月 飛闇
Season1 始まりと出会い
68/86

18、あなたに贈るプレゼント <Side 愛良>











11月15日。


この日はスッゴくスッゴく大事な日。


だって、その日はあたしの恋人の和馬お兄ちゃんの誕生日なんだもん!!


あたしの誕生日にはみんなでパーティーしてくれたから、あたしも和馬お兄ちゃんに何かしてあげたいなぁ。


でも、プレゼントとかって、お兄ちゃんは何がほしいんだろう・・・・・・?


11月になってから、あたしはずっとそんなことばかり考えていた。







18、あなたに贈るプレゼント♪     <Side 愛良>







「そんなわけで、あと2週間くらいしかないんだけど、何かいい案ない?」


「う~ん・・・」


とうとうひとりでは思い付かなかったあたしは、しずちゃんに聞いてみることにした。しずちゃんには本当のお兄ちゃんもいるし。中学生だけど。


「しずちゃんは、お兄ちゃんのお誕生日とかは何をあげてるの?」


「私のお兄ちゃんは野球が好きだから、お兄ちゃんが好きな球団のグッズをあげたり、とかかなぁ」


「なるほどね~好きなスポーツかぁ~」


そういえば、和馬お兄ちゃんって何のスポーツが好きなんだろ?テレビのスポーツ観戦は、色々なスポーツを見てるし・・・。


・・・聞いてみようかな。好きなスポーツ聞くくらいだったら、プレゼントのことはばれないよね・・・・・・


「イタっ!!」


考えに耽っていたあたしの後頭部に、何かがあたった。


ガムテープをぐるぐる固めてつくったボールだ。たかがガムテープだけど、これは結構痛い。


なんでこんなものが飛んできたかなんて・・・・・・わかってる。



「吉崎~っっ!!」


「げ、柳井?!」


「教室の中でキャッチボールするなって先生にも言われたでしょ?!当たったら痛いんだからね!!」


「うるせぇなぁ、そんなのに当たるのがどんくさいだけだろ?」


「なんですって?!」


「あ、愛良ちゃん、吉崎に聞いてみるのは?」


「・・・何を?」


いつもの調子で喧嘩を始めそうだったあたしと吉崎に割り込むように、しずちゃんがなにやらあたしに提案してきた。


「男の人なら何をプレゼントされたらうれしいか、吉崎に聞いてみたら?」


「なに言ってるの、しずちゃん。こんなガキと和馬お兄ちゃんの価値観が同じわけないじゃない」


「けっ。ま~たロリコン大学生の話かよ」


「和馬お兄ちゃんはロリコンじゃないもん!!」


「世間一般的にはロリコンって言うんです~」


「・・・・・・あ~あ、また始まっちゃった・・・」


ぎゃぁぎゃぁ騒ぐあたしたちの隣でしずちゃんがぽつり。


結局、吉崎のせいで何がいいか相談できなかったじゃない!!





「ロゼはもう決めてるの?」


お夕飯の用意をしているときに、隣で見惚れそうな包丁裁きを見せてくれているロゼにあたしは突然尋ねた。


「ナイトへのプレゼントのことかしら?」


「うん」


ロゼってあたしが突然何を尋ねても、的確にあたしの言いたいことをわかってくれるからすごい!!




「ロゼはもう用意した?」


「もちろんよ」


「え、ほんとに?!何を用意したの?!」


「そうねぇ、ナイトが前々から欲しがっていたもの、かしら?」


「え~!!ずるい、ロゼってばお兄ちゃんが欲しいもの知ってるの?!」


あたしがむくれると、ロゼはクスクス笑い始めた。


「あたしは何をあげようかなぁ・・・」


「ナイトはきっと何をあげても喜んでくれるわよ?だって、プリンシアからのプレゼントですもの」


「でもせっかくなら、和馬お兄ちゃんの欲しいものあげたいしなぁ」


う~ん、と唸りながら、あたしはオーブンにお皿を並べる。今夜は和馬お兄ちゃんの大好物のグラタン。


「あ、ねぇねぇ、和馬お兄ちゃんの時もやるよね?」


何を、なんて言わなくても、ロゼはちゃんとわかってくれる。


今回もウィンクと共に、答えてくれた。


「もちろんやるわよ、ナイトのバースデーパーティー」






そして悩みに悩み抜く日々が続くものの、和馬お兄ちゃんのプレゼントはいつまでたっても決まらなかった。


そうこうしているうちに、和馬お兄ちゃんの誕生日が目前まで迫ってきていて、とうとうあたしはある人物に泣きついた。


「和馬のバースデープレゼント?愛良ちゃんが?」


「そう。里奈お姉さんたちはもう用意した?」


和馬お兄ちゃんのバースデーパーティーをすることはロゼと決めて、里奈お姉さんたちを誘ったとこまではよかったんだけど、言い出しっぺのあたしが未だにお兄ちゃんへのプレゼントが決まらなくて、里奈お姉さんに連絡して泣きついた。


「和馬へのプレゼントなら、私たちはもう用意したわよ」


「やっぱりぃ。・・・ちなみに、何を?」


「洋服よ。・・・色々な」


「洋服か~。ん~どうしよ~」



学校帰りに待ち合わせたあたしは、ランドセルを背負ったまま。里奈お姉さんも大学の帰りみたいで、テキストが入っている鞄を手に持ってる。


そんなあたしたちは今、駅前の喫茶店<ルーン>にいる。


里奈お姉さんはダージリンティーを、あたしはアイスココアを飲んでいた。


飲み物を選んだときに、「愛良ちゃんはココアなんだ」って里奈お姉さんにくすくす笑われたけど。なんでだろ?


「愛良ちゃんが和馬にどんなものをプレゼントしても、和馬は喜ぶわよ。物や値段よりも、気持ちが大事なのよ?」


「そうだけど~。でもできたら、お兄ちゃんが欲しいものか使えるものがいいなぁって」


「和馬が欲しいものは、すでに愛良ちゃんはあげてると思うけどな」


「え?」


くすって笑いながら言った里奈お姉さんの言葉に、あたしは首をかしげる。


「愛良ちゃんは和馬が寂しいと思わせないほどのたっぷりの愛情をいつもあげているでしょ?」


「もちろん!!和馬お兄ちゃんへの愛は、誰にも負けないよ!!」


「それが、和馬への一番のプレゼントよ」


にっこり微笑んでから、里奈お姉さんはダージリンティーに口をつける。カップにそっと口付けるようにして飲む姿は、あたしから見てもなんだか色っぽくて綺麗に思えた。


あたしも里奈お姉さんを真似するように、そっとグラスに口をつけて飲む。



たしかに、和馬お兄ちゃんへの愛情は誰にも負けない自信がある。


愛情・・・かぁ・・・・・・。



アイスココアを飲みながら、あたしはふと、いいことを思い付いた!!


「ねぇねぇ、里奈お姉さん、こんなのはどうかな?!」








そして、和馬お兄ちゃんのお誕生日当日。


木曜日だから普通に学校があるあたしだったけど、朝一番にまずはおめでとうを言うために、和馬お兄ちゃんの部屋に向かった。クラッカーを持って。


「お誕生日おめでとう~!!」


パパンっとクラッカーを鳴らして、まだ寝ているお兄ちゃんにあたしは明るくそう言った。


クラッカー鳴らしたのに、お兄ちゃんからたいした反応はない。それどころか、頭だけ起き上がって、


「・・・さっさと学校行け」


とだけ言い残してまた寝始めちゃった。


せっかく記念すべき二十歳の誕生日に、クラッカーでお目覚めをしに行ったのに、見事に無視。


ちょっと物足りない気持ちでリビングに行けば、そこにはロゼの姿があった。


「おはよう、プリンシア。ナイトは起こせた?」


「おはよ~ロゼ。お兄ちゃんは一瞬だけ起きて、また寝ちゃった」


「あらあら。それじゃぁ、今夜たくさん騒がなきゃね」


にやっと笑って告げたロゼに、あたしもにやりと笑い返した。


「もっちろん!!」





教室に入ればいつもの光景。


昨日、怪盗夜叉が現れたから、吉崎たちも懲りずに夜叉ごっこをしている。教室の隅の方で迷惑そうに固まる女の子達の中にいたしずちゃんが、あたしに気づいて話しかけてくれた。


「愛良ちゃん、おはよう。また吉崎たちが・・・」


「そうみたいだね~。でもいいんじゃない?放っておけば」


「・・・え?」


いつもならすぐに吉崎と言い合いになるあたしがあっさりと引き下がったから、しずちゃんが不思議そうにあたしを見てくる。それでも上機嫌なあたしは、ニコニコしながらしずちゃんに言った。


「今日はとってもとっても大事な日だから、吉崎のことなんかぜ~んぜん気にならないんだも~ん」


「あ、和馬さんの誕生日?」


「ピンポーン!!」


「結局、プレゼントはどうしたの?」


「ん~お兄ちゃんが欲しいものはわからなかったんだけど、ま、なんていうか?あたしの愛をたっぷり感じられるモノを用意できちゃった感じ!!」


「へ、へぇ・・・?」


「早く学校終わらないかな~」


首をかしげるしずちゃんの横で、どこまでも上機嫌なあたしは、教室についたばかりなのにそんなことを考えていた。





やっといつも以上に長く感じた学校を終えると、あたしは寄り道せずに大急ぎで帰った。


帰宅すれば、やっぱりロゼがすでにパーティーの用意を始めてくれていた。しかも、今回は里奈お姉さんもいる!!


「ただいま~!!」


「おかえりなさい、愛良ちゃん」


「おかえり、プリンシア」


「里奈お姉さんもパーティーの準備に来てくれたの?!」


キッチンで料理している里奈お姉さんにあたしは駆け寄る。ちなみに、ロゼはリビングで料理とデザートの盛り付け中。


「和馬お兄ちゃんたちは?」


「本日の主役は実くんの家で待機してるわよ。私たちだけでさっさと用意しちゃいましょ?」


あたしがキョロキョロと和馬お兄ちゃんの姿を探していると、里奈お姉さんはいたずらっぽく笑いながらそう言った。


「ルナールも手伝ってくれるとなったら、早く準備ができそうね?」


リビングからロゼがそう声をかけてくる。


「・・・・・・ロゼは私がここに来る前からデザートを作り終えてたわよ、たくさん・・・」


ため息混じりに呟く里奈お姉さんに、あたしは乾いた笑い声しか返せなかった。


また、あたしのバースデーパーティーのときみたいに、た~くさんのケーキが用意されてるのかな?


とりあえず、早くパーティーの準備をしなくっちゃ!!




3人で準備をすればあっというまに用意もできちゃって、すぐにパーティーは始まった。みんなでわいわいしながら食べるお夕飯は、いつもよりもずっと賑やかであたしは楽しく食べてた。


「ルナール、これは何?」


ロゼがお茶碗によそわれたご飯を見ながら、ことん、と首をかしげた。


あ、そうか、外人さんには珍しいのか。


「お赤飯よ。お祝い事のときに食べるものなの。一応、和馬の二十歳の誕生日だし、成人のお祝いってことで炊いてみちゃった」


「お~気が利く~さすが里奈!!」


「ロゼが赤飯知らないなんて意外だったかもなぁ」


「たしかに」


赤飯の説明をする里奈お姉さんの横で宗次お兄さんがそれを誉めていると、実お兄さんと和馬お兄ちゃんでそんなことを言っていた。たしかに、ロゼって色々知ってるから忘れちゃうけど、日本で暮らしたことはないんだよね、たしか。


「お祝い事にお赤飯が出るのなら、私にはあまり関係なかったわね」


ロゼが不思議な日本語を使って納得顔で頷いてる。


お祝い事だと・・・ロゼには無関係ってどーゆーことだろ?!


「お赤飯ってモチモチしてるのね」


当のロゼは、餅米で炊いたお赤飯にご機嫌。和馬お兄ちゃんたちはそんなロゼを苦笑しながら見守っていた。


そうこうしているうちにご飯も食べ終わったから、あたしたちは和馬お兄ちゃんにプレゼントを渡すことにした。


最初は里奈お姉さんが和馬お兄ちゃんに。


「はい、3人からのプレゼントよ」


「え・・・?」


「普段着、よ?いらない?」


「い、いや。まさかこっちももらえると思わなかったから・・・サンキュ」


一瞬だけ戸惑ったような表情を浮かべたお兄ちゃんだったけど、すぐに照れたように笑った。里奈お姉さんたち3人からのプレゼントってだけあって、洋服の入った紙袋は少し大きめだった。


「じゃぁ、次は私ね」


「・・・は?」


「はい、ナイトへのバースデープレゼント」


ロゼが取り出したのは細長い茶封筒。


プレゼント包装とか全然されたものじゃないけど・・・ロゼって和馬お兄ちゃんが欲しいものを用意したって言ってた。


これが、それ?



「ま、まさかロゼからそんなもんを用意されてるとは思わなかったな・・・」


恐る恐るといった様子で、お兄ちゃんはロゼからプレゼントを受け取る。


「あら、大好きなナイトのバースデーよ?当然じゃない?」


「・・・アリガトウゴザイマス」


ぎこちなくお礼を言いながら、手渡された封筒の中を覗くお兄ちゃん。ちらっと中身を見てから、ふと、和馬お兄ちゃんの顔付きが変わった。


「ナイトが欲しいもののひとつだと思うけど?」


「どういう・・・つもりで・・・・・・」


「せっかくのバースデーですもの。サービスよ」


にっこり笑うロゼに、なぜか訝しげな表情を浮かべる和馬お兄ちゃん。



「何もらったの?和馬お兄ちゃんの欲しいものって?」


「え?あぁ、これだよ、これ」


あたしの目の前で封筒を逆さにして中身を見せてくる。そこから出てきたのは、一枚の図書カード。


「・・・え?これだけ?」


「そ、これだけ」


「お兄ちゃん、図書カードが欲しかったの?」


「まぁ、そんなとこ・・・かな?」


なぁんだ~図書カードくらいだったら、あたしも用意できたのに~。


でも、あたしのプレゼントだって、愛がたっぷりつまってるんだから!!



「はい、お兄ちゃん!!あたしからはこれ!!」


ジャジャン、とあたしは割と小さな箱をお兄ちゃんに渡した。


「愛良まで用意してくれたのか?ありがとな」


珍しく和馬お兄ちゃんが優しくあたしに笑いかけてくれる。


も~その笑顔で充分!!




「これは・・・・・・」


あたしのプレゼントを開けて、びっくりした様子であたしを見てくるお兄ちゃん。


「そうだよ。それは携帯用の救急セット。お兄ちゃん、よく怪我してくるから、これを使ってね」


「さ~すが恋人!!和馬のことをよく見てるな~」


「でしょでしょ?」


宗次お兄さんからのお褒めの言葉(?)にあたしはウキウキと答える。


「私も愛良ちゃんから相談受けたとき、それは最高のプレゼントねって話してたの」


「愛良ちゃんに和馬を任せて本当によかったよ」


「さすがプリンシアね」


里奈お姉さん、実お兄さんやロゼが口々に褒めてくれるなか、和馬お兄ちゃんからは何の反応もないから、あたしは心配になってくる。



「・・・お兄ちゃん?」


「どうした、和馬?感動のあまり言葉もないか?」


ケケケといたずらっぽく笑いながら宗次お兄さんがそう言うと、和馬お兄ちゃんが素直に頷いた。


「・・・あぁ、なんか、マジで感動したかも」


「ほんとに?!だったら、お礼はキスでいいよ!!」


「ば~か、調子に乗るなよ」


いつになく素直なお兄ちゃんにそう言ったら、額をデコピンされた。イ、イタイ・・・。


「でも、感謝してる」



一瞬。


ほんとに一瞬だった!!


デコピンされて痛かった額を擦るあたしの手を和馬お兄ちゃんがどけて、そっとそこに口付けてくれた!!


つまりは、額にキスしてもらった!!




一瞬で唐突の出来事にあたしは何も言えずに目を丸くするばかり。宗次お兄さんたちも一瞬のことだったし、すでに違う話題でおしゃべりしてたから、何が起きたのか気付かなかったみたい。


感動と驚愕の入り交じったあたしの表情を見て、和馬お兄ちゃんはにやっと笑った。



な、なんて素敵な日なの!!


今日は和馬お兄ちゃんのお誕生日だったけど、あたしにとっても言い様のないハッピーな1日になっちゃった!!



ハッピーバースデー、和馬お兄ちゃん!!








はいはい、和馬君おめでとう~(え)


赤飯に感動するロゼっていう構図をWEB拍手小話でやろうかと思っていたのですが、そういえばかずくんが20歳のお祝いだと思い出して(!)本編でのやり取りになりました。


まだ愛良サイドじゃお話は動いてないですね。


愛良のバースデーのときほど夜叉としてのスリルもないですし(笑)


それにしても、吉崎君がいると、愛良の小学校生活が充実して見えるのだから、なんとも素敵だ(笑)


ちなみに、キャッチボールしてるのに、吉崎くんはサッカー少年です。はい、どうでもいいですね。





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