↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あたしの恋人  作者: 紫月 飛闇
Season1 始まりと出会い
PR
69/86

18、あなたに贈るプレゼント <Side 和馬>






自分の誕生日なんて今更祝うような歳でもないだろ、って俺は思ってた。


だから、次のターゲットの展示期間最終日が俺の誕生日でも、当然怪盗夜叉として<仕事>があるんだと思ってた。


だけどその日、父さんの部屋で作戦会議をしているときに、実がおもむろに言った。


「じゃぁ、今回の予告日は11月14日でいいね?」


「・・・あれ?これって15日までの展示じゃなかったか?展示最終日じゃなくていいのか?」


「かずくん、誕生日にまでお仕事する気かい?」


実に確認をとる俺をからかうように、宗次がそんなことを言ってくる。


「・・・今更誕生日がどうとかって歳でもないだろ?」


「が。それを盛大に祝いたいと思っているありがた~い<恋人>がかずくんにはいるだろ?」


「・・・・・・殴るぞ?」


「・・・そーゆーのは殴る前にオネガイシマス」


グーで俺に殴られた宗次に苦笑してから、里奈が言った。


「でも、本当に愛良ちゃんは和馬の誕生日をお祝いしたいと思っているわよ?もちろん、私たちも」


「そんなの、当日じゃなくてもいいだろ?またバイトとでも言えば・・・」


「・・・引き下がると思うか?あの<ふたり>が」


宗次の問いかけに、答えるまでもなかった。


「・・・・・・ロゼか・・・」







18、あなたに贈るプレゼント♪    <Side 和馬>








唐突にそれを提案されたのは3日前。


愛良とロゼ、3人で夕飯を食べているときだった。


「ねぇねぇ、和馬お兄ちゃん」


「ん?」


「15日、予定ないよね?」


「・・・なんで断定的なんだよ?」


「あるの?!」


「・・・あるって言ったら?」


「なくさせるわよね」


ロゼの最後の一言で空気が一瞬凍った気がする。


そのロゼは、にっこりと笑ってない目で絶対零度の笑みを浮かべている。


「それで、ナイト?予定はあるのかしら?」


わ、笑ってるけど、威圧的・・・。てか、その笑顔、怖いから!!ロゼの気配だけど、ノワールの笑顔を彷彿させる・・・。


「な、ないデス・・・」


思わず後退りしながら、俺は正直に答えた。


「やった!!じゃぁ、その日に和馬お兄ちゃんのバースデーパーティーするから、空けといてね!!」


ウキウキと愛良がそう言ってくる傍らで、


「かしこまりました・・・」


と消えそうな声で俺は返事をするしかなかった。






「・・・ったく、自分の誕生日だってのに、なんであんなに脅迫されなきゃいけないんだ?!」


『あっはっは!!でも予想通りだったろ?予告日、今日にしといてよかったな!!』


「へーへー、おっしゃる通りで」


俺が今いるのは、人気のない公園の木の上。


ちょうど今夜の怪盗夜叉としての<仕事>を終えて、一休みしているところだ。


今日は11月14日。ま、それもあと2時間くらいで終わるけど。


予定より1日繰り上げて手に入れた<獲物>を、木葉から漏れる月明かりに無造作に翳す。


ちなみに、すでに怪盗夜叉としての衣装は解いてるし、とりあえず<組織>の連中の気配もないから、俺はのんびりと<ブラック>たちと合流するためにそこで待っていた・・・・・・んだけど。



「おやおや、不用心だね、瀬戸 和馬くん」




闇から溶け出してきたかのように現れた気配。姿は見えないから、どこかの木の上にでもいるんだろう。


「・・・あんたのお目当ての怪盗は、もう営業終了したけど?」


「そのようだね。だけど、今のわたしの目的は怪盗くんではないよ」


「・・・え?」


すでに身を起こしてあたりを警戒していたにも関わらず、俺は咄嗟の反応に遅れた。チリッとした手の痛みに視線をそこにうつせば、すでに手に持っていたはずの今夜の<獲物>がなくなっていた。


「・・・なっ・・・!!」


「油断大敵だね」


クスクスと、相変わらず姿を見せずに気配だけでノワールがそんなことを言ってくる。


「情報収集力も注意力もまだまだ。この世界を渡り歩きたかったら、もっと精進することだね」


「・・・・・・ご忠告どーも」


「そうそう、少し早いけれど、ハッピーバースデー、瀬戸 和馬くん」



なにがハッピーバースデーだ!!


だけど、すでにノワールの気配はそこになく、同時に取り落とした今夜の<獲物>も奴に奪われた。






「よ、お迎えに来たぜ」


「・・・・・・遅い」


入れ違いに公園にやってきた宗次に、俺はむすっとしながら文句を言って木から降りる。


「遅いか~?これでも実の車、とばしてきたぜ?」


「公道でも高速並みにね」


宗次の後ろから、実と里奈があとからやってくる。


「で?今夜の<獲物>は?」


「・・・ない」


「・・・ないって?盗みに成功したろ?」


「ノワールに奪われた」


「ノワールに?!いつ?!」


「今」


「今ぁ?!」


「宗次、いい加減、うるさい」


俺の返答にいちいち過大なリアクションを返してくる宗次に、実が冷静に指摘する。


そして不貞腐れてる俺に苦笑しながら言った。


「ま、<組織>の連中に奪われたわけじゃないから、よしとしよう、和馬」


「でもよ~ノワールの奴、<シリーズ>見つけたって、<レーザー>がないのにどうやって<解読>するんだろうな?」


宗次の疑問に、俺たちは首を傾げるしかできない。


あの闇の住人が何を考えているかなんて、わかるわけがない。


思わずため息をついた俺に、里奈が深夜とは思えないほど明るい声で言った。


「そういえば、和馬たちは明日、6時まで実くんの家で待機しててね?」


「は?明日?なんだ?藪から棒に?」


「明日、パーティーの準備するのに主役がいたら邪魔でしょ?」


「あぁ・・・パーティーね・・・」


なんだかもう、そんな気分じゃないんだけどなぁ・・・。


切り替えの早い里奈の発言に、とりあえず相槌だけ打って承諾した。







次の日、俺は起きた途端、ロゼに追い出された。


そもそも昨日の今日でロゼと顔を合わせるのも嫌なのに。


「パーティーの用意ができるまで、どこかで時間潰しててね」


何事もなかったかのようににこにこ笑いながら話しかけてくるロゼに、もはや怒る気力も失せて、俺はただ黙って実の家に向かった。


「お、やっと来たな、和馬」


実の部屋に入るなり、すでにそこに座り込んでいた宗次にそう言われた。


「んじゃまぁ、はい、かずくん、ハピバ!!」


「・・・略すなよ・・・・・・って、これ、なに?」


「僕たちから和馬へのバースデープレゼントだよ」


宗次に手渡されたでかい紙袋に首をかしげると、実がくすくす笑いながら教えてくれた。


「お~、悪いな、気を使わせて。中身、見ていいか?」


「どーぞどーぞ。<今>見てもらうためにこうして渡したんだし」


にやにや笑う宗次に嫌な予感がしながら大きな包みを開ければ、そこから出てきたのは真っ黒な服。


・・・・・・服っていうか・・・。



「・・・これ、夜叉の衣装じゃないか」


「そー。特殊素材の夜叉の装束を新調しました!!」


「・・・ていうか、<俺>の誕生日にこれって・・・」


がっくり項垂れながら、俺は実が先程から変わらずくすくす笑ってる理由がわかって、じろりと睨み付ける。



でも、こうしてプレゼントを考えてくれて、用意してくれたのは、感謝しないと・・・だな。



「そんなに拗ねるなよ、かずくん。なんだかんだ言っても、その衣装はかずくんが着るんだから」


実同様、いや、それ以上に楽しそうににやにやと笑いながら言ってきた宗次に、俺は呆れとも諦めともつかないため息をついた。


「わ~かってるよ。サンキュ。これ着て、キリキリ働かせてもらいますよ」


「・・・でも、早くこの衣装が脱げる日が来るようにしないと、な・・・」


実の呟きに、俺と宗次も真顔に戻る。


「・・・そのためにも<失われた誕生石>の情報だよな・・・・・・クソ、あと少しってとこなのになぁ!!」


宗次が八つ当たりするように実のベッドに拳を叩きつける。


「・・・焦らずやるしかないさ。とりあえず<組織>の連中に奪われる前に奪えれば、今はそれで」


――――――だけど、いつかは必ずこの<失われた誕生石>の秘密を暴いてみせる。


誰も口にしなかったが、その場にいた3人とも同時にそう思ったはずだった。






それからしばらくして始まった、俺のバースデーパーティーは、愛良の時と同様賑やかに時間が過ぎていった。


この歳になって、こんなに盛大に周りに祝ってもらうのも、なんだかうれしいような恥ずかしいようなくすぐったい気分だった。


そして食事が終わった頃、里奈がまたまたでっかい紙袋を俺に差し出してきた。意味がわからなくて彼女を見返せば、いたずらっぽく笑いながらその答えをくれた。


「3人からのバースデープレゼントよ」


「え?だって・・・」


「あら、いらないの?これは普段着なのに」


は、はめられた?!


ばっと実と宗次を見れば、ふたりとも笑いを堪えてる。


怪盗夜叉の衣装だけがプレゼントとみせかけて、ちゃんと<表>のプレゼントまで用意してくれてたなんて・・・・・・悔しいけど、うれしいじゃないか。



「・・・サンキュ、まさかこっちまでもらえるとは思ってなかったから」


「どういたしまして」


さらに驚いたのは次の瞬間だった。


「じゃぁ、次は私ね」


「・・・は?」


発言者は、このメンバーで唯一の金髪のお騒がせ美女。




「はい、ナイトへのバースデープレゼント」


彼女が俺に差し出してきたのは、細長い茶封筒。


何のつもりだ?


バースデープレゼント?


爆弾とかじゃなく?


昨日の夜は<ノワール>として、こっちの獲物を横取りしたくせに。


だけど、ニコニコと笑う<ロゼ>に、文句は言えない・・・・・・。



「ま、まさかロゼからそんなもんを用意されてるとは思わなかったな・・・」


恐る恐る、俺は彼女からプレゼントを受け取る。


た、たとえ爆弾が入ってても、相手がコイツなら不思議じゃないし・・・・・・。


「あら、大好きなナイトのバースデーよ?当然じゃない?」


「・・・アリガトウゴザイマス」


もう、意味がわからない。


色々な覚悟を決めて、俺はまず、その封筒を覗き見た。中に入っていたのは一枚の図書カード。


それから・・・・・・。




「ナイトが欲しいもののひとつだと思うけど?」




封筒を覗き込んだまま固まっていると、ロゼの笑いを含んだ言葉が降り落ちてきた。


「どういう・・・つもりで・・・・・・」


「せっかくのバースデーですもの。サービスよ」


サービス?<これ>が?


もし<これ>が、本当に俺が欲しいもののひとつだとしたら・・・・・・。


考え込み始めた俺だったが、愛良に話しかけられたことによって、それを中断した。


しかも、愛良までプレゼントを用意してくれてたっていうから、驚きとうれしさとごちゃまぜになった気分だった。


こうして二十歳の誕生日を祝ってくれる誰かがいるなんて、こうして笑って迎えられるなんて、父さんと母さんが死んだばかりのあの頃には、思いもしなかった。



・・・・・・本当は、わかってる。この穏やかで幸せな瞬間を築いてくれているのは、ここまで俺を支えてきてくれた実たちと・・・そして、突然俺の前に現れた、愛良のおかげだってことは。


・・・・・・ロゼは別格で。



愛良と暮らすようになってから今まで以上に慌ただしくなったが、それ以上に穏やかな日々も過ごすことができるようになったことは自覚してる。


この、ミサイルのような思い込みの激しい少女によって。


だから、俺は感謝の気持ちを込めて、今夜は特別に愛良の希望を叶えてやった。






一騒ぎしたあとの深夜。


時間はとうに俺の誕生日は終わってる。


愛良はすでに寝ているし、ロゼも自室にいる。


そんな中、俺は自分の部屋に宗次とふたりでパソコンを立ち上げていた。


俺のバースデーパーティーなるものがおひらきになり、里奈と一緒に帰ろうとした宗次を、俺は呼び止めた。ロゼから<プレゼント>として渡された<これ>をひとりで見ることができるか不安だったから。


・・・・・・いや、ひとりで見たくなかったのかもしれない。



ロゼがくれた、図書カードの入った茶封筒の中にテープで落ちないように張り付けてあった<それ>。


それは、小さなマイクロチップ。これが何を示すのか、俺にはさっぱり見当もつかない。


ロゼの言う、俺が欲しいもの、であるなら、<失われた誕生石>絡みの何かだと思いたいが・・・・・・そんな簡単に情報を渡すか?


あいつが・・・・・・。



それでも、見てみないことには先には進まない。


俺は宗次が見守るなか、静かな部屋でパソコンの起動音だけを聞いていた。いつもと変わらないはずなのに、気が競っているせいか、パソコンの起動時間すらじれったい。やっと立ち上がったそれに、マイクロチップを読み込ませて、宗次と共に結果を待つ。


そして、そこに写し出されたのは・・・・・・。



「これって・・・地図・・・・・・?」


写し出されたのはどこかの地図。すると、それを覗き見た宗次がみるみる目を丸くした。


「・・・宗次?」


「いったい・・・なんでここの地図が・・・・・・?」


「どこの地図かわかるのか?」


「京都だよ。京都、嵐山だ」


「へぇ?」


なんで嵐山の地図が?


しかも、その地図に赤い印がついているところは、民家のようだ。


ロゼ・・・・・・ノワールのやつ、何を考えてるんだ?



「いったい何考えてるんだ?!なんでこの家がまた関わってくるんだ・・・?」


「宗次?」


俺とは違う理由で驚いている様子の宗次に声をかけてみる。


「この地図の家、知ってるのか?」


「和馬、忘れたか?おまえだって一度は見ただろ?」


「え・・・・・・?」


確かに、この地図を初めて見た気がしない。じゃぁ、どこで見たんだ・・・・・・?


京都・・・・・・嵐山・・・・・・。




「・・・まさか」


浮上してくる記憶。たしかに、一度だけこれに似た地図を見た気がする。


だけど、まさかそんな・・・・・・。


「・・・間違いないぜ、俺と里奈は実際にここに行ったんだから」


そう、この地図の場所にある目的があって、ふたりは向かった。


今年のゴールデンウィークに。


「だけど、なんで今更・・・」


驚愕と戸惑い。俺と宗次の間にはそれしかなかった。




ノワールが提示してきた地図の場所は、かつて<失われた誕生石>のひとつだった、<レイニー・ブルー>の持ち主の家だったのだ。









やっとここまで来ました~!!


最近ノワールもがんばって仕事してますね(笑)


<瀬戸 和馬>の格好のときには命は狙わないけど、<シリーズ>はいつだって狙われている。だから油断大敵だよっていう忠告付き。


まるで屁理屈な鬼ごっこのようですけど。


ロゼがマイクロチップをプレゼント、は前々から決めていたものの、いきなりそれだけ渡すのもな~と考えて、なにかオマケをあげよう、ってことで図書カード(笑)ちゃんとこれの使い道もあったりして(笑)



そしてそして!!


みなさん覚えてますか、<レイニー・ブルー>を!!


番外編でフライングしようか考えながらも、ネタバレが強そうだったので我慢して我慢して、やっと来ました!!


<レイニー・ブルー>は、和馬サイドの話で2話~4話まで登場した<シリーズ>のひとつです。この物語としては最初のターゲットですね。



ということで、新章突入です!!



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。