フローラの祖父母②
俺達はウッディニさんに教えてもらった通りに道を歩き、赤い葉の茂った家の前まで着いた。
ユグドレフィアでは魔道具がナラードと違いそこまで普及していないのか、ドアには呼び出し用の魔道具は見当たらずドアノッカーが取り付けられている。
俺はそのドアノッカーを片手で掴むと、コンコンっと軽く叩いて音を鳴らした。
しばらく待ってみるも、家の中からの反応は無い。
「.....反応が無いな?」
「.....もしかして.....留守.....?」
「さぁ?もう1回鳴らしてみるか」
俺とフローラはお互いに首を傾げ、俺はもう1度ドアノッカーを叩いた。
「すいませ~んっ!リュアンさ~ん!フランさ~ん!いませんかぁ~っ?」
俺はドアノッカーを叩きながら、ウッディニさんに教えてもらったフローラの祖父母の名前を呼ぶ。
1回目と同じようにしばらく待ってみると、今度は家の中から少し物音がした。
どうやら2人はちゃんと家に居てくれてるらしい。
「ごめんくださ~いっ!」
俺は更にドアノッカーを叩くと、しばらくしてドアが少し開いた。
「.....どちら様でしょうか?」
女性の声がした。フローラの祖母のフランさんだろうか?
「え~っと、自分達はリュアンさんとフランさんに会いにきた者でして、何と言いますか.....お2人のお孫さんのフローラも一緒に来ております」
俺がそう言うと、バンッ!っと音と共にドアが凄い勢いで開けられる。
「どこっ!?どこなのっ!?」
中から出て来たエルフ族の女性は、見た目は20代中半ぐらいの見た目だろうか?
とてもフローラのおばあちゃんとは思えない容姿をしているが、まぁそこはエルフ族だしな。
フランさんと思わしき人は、辺りをキョロキョロと探すように眺める。
そしてフローラをその視界に捉えたのか、ゆっくりとフローラに近づいて行く。
「.....あ、あなたがフローラちゃんね?いえ、言わなくても分かるわ.....あの子に.....リョシンの面影がハッキリとあるんですもの.....」
「.....おばあちゃん.....?」
「.....えぇ、そうよ.....あなたのおばあちゃんのフランよ.....」
フランさんはフローラをギュっと抱きしめる。
「あの子やフローリアの手紙にはあなたの事が沢山書いてあったわ.....そしてフローリアからリョシンが亡くなった事やあなたが行方不明になった事も.....」
フランさんフローラを抱きしめながらポロポロと涙を零す。
「.....ごめんなさい.....私にはそんな資格なんてないのにね?.....あの子が亡くなった時.....あなたが行方知れずになった時に何も出来なかったんですもの.....」
フランさんはそう言ってフローラから離れようとするが、フローラがフランさんをギュっと抱きしめる。
「.....わたし達は家族.....資格はいらない.....パパの事は.....おばあちゃんや.....おじいちゃんは関係ない.....わたしは.....おばあちゃんに.....会えて嬉しいよ.....?」
フローラはそう言ってフランさんを見上げる。
「うっうっ.....ごめんなさい.....ごめんなさい.....ありがとう.....」
フランさんはそのままフローラに抱き着きながら泣き崩れてしまった。
そんなフランさんをフローラは優しく背中を撫でながらも見守っている。
しばらくしてフランさんも落ち着いたのか、俺達に声を掛けてきた。
「お客様の前で年甲斐もなく泣いちゃってごめんなさいね。ところで、この方々はどなたかしら?フローラちゃんのお友達?」
「.....カズキ様.....わたしの旦那様.....」
ムフーッと少し自慢げにフローラは俺を紹介する。
「初めまして、カズキ。カミシロと申します。フローラさんと結婚させて頂いている者です」
「.....そして.....わたしの親友達.....みんなカズキ様の妻.....わたしと一緒.....」
フローラに紹介され、嫁さんズとピコさんもフランさんに自己紹介をする。
「あらあらまぁまぁ!フローラちゃんは結婚していたのね!?フローラちゃんの顔を見れば分かるわ。とても幸せそうですもの。あぁ.....フローラちゃんが幸せそうでおばあちゃんはとても嬉しいわ」
フランさんはとても喜んでくれているようだ。
.....よかった。どこの馬の骨とも知れない男に~って反対されなくて。
いや、まだおじいさんが残ってるから安心するのは早いか?
フランさんの様子を見て、俺は内心ホッとするもすぐに気持ちを引き締めなおす。
「ところで.....リョアンさんは?」
俺がそう言うと、フランさんの顔が曇る。
「.....あの人は家の中に居るわ.....でも、まだあの子の.....リョシンの事を引きずっているわ.....いえ、誰よりも責任を感じて自分を責め続けているの.....」
「.....おじいちゃん.....」
「フローラちゃんが旦那様やお友達を紹介しに来てくれたのは嬉しいわ。でも、あの人にはその事を受け入れて祝福できる程の余裕がまだ無いの.....だから、まずはフローラちゃんだけ会ってもらえないかしら?それで少しでも落ち着いてくれたら.....きっとあの人もフローラちゃんの大切な人達を受け入れてくれるわ.....どうかしら?」
「.....分かった.....まずは.....私がおじいちゃんに.....会ってくる.....カズキ様.....いい.....?」
フローラは俺にそう聞いてくる。
「あぁ、勿論だ。お爺さんと会って、ゆっくりと話してくると良い。俺達の事は気にしなくてもいいからな?フローラの大事なおじいちゃんなんだ。落ち着くまで傍に居てやればいいさ」
「.....うん.....行ってくる.....」
「気を使わせてしまい申し訳ありません.....お待ちの間はあちらの離れの家をお使いください。使用人のブラウニーにお世話を申し付けておきますので」
「あっ、お構いなく。ではお言葉に甘えさせて貰ってしばらくのんびりさせて頂きますね」
フランさんからそう言われ、俺達は少し離れた場所にある木の家へと移動して行った。
「へぇ~.....中ってこうなってんだな」
俺は木の家の中に入ると、家の中を見渡しながらそう呟いた。
「木の家の中って案外暖かいんですね?」
「そうだねっ。見た感じ、暖炉とか魔道具とか使ってる様子はないけど?」
「何か魔法的なもんなんすかね?」
「火の精霊と風の精霊が力を合わせて快適な温度にキープしてるですよ!」
リロロは家の中の暖かさに驚き、ミラーカはキョロキョロと辺りを見回す。
家の中の暖房がどうなってるのか興味深々といった様子だ。
ネルは何か魔法的な手段で暖を取っているのでは?と考えているようだ。
そしてそんな3人に、フランさんの家に仕えるブラウニーの使用人さんが答えてくれる。
「ふむ.....明かりの魔道具は使っておらぬようじゃな?」
「えぇ、でもまるで魔道具を使用しているかのような明るさですわね?」
「何かこの森特有の技術とかでしょうか?」
「それは光の精霊さんのおかげですよ!必要な明るさまで明るくしてくれるですよ!」
こちらではシャルミナとリリーナとピコさんが、家の中の明るさの秘密について別のブラウニーさんから説明を受けていた。
木の家に精霊達が生活を手助けしてくれている.....か。
ファンタジー凄いなっ!
俺達はフローラがリョアンさんと会っている間、用意してもらった家でのんびりと待つ。
会ってどんな話をしているのか、気にならないと言えば嘘になるが、そこは俺が立ち入っていい話ではないだろう。
それにフローラの事だ。
きっとリョアンさんを立ち直らせてくれるに違いない。
俺達はそう信じて、皆で静かにここで待っているのであった。




