ラブな物語は突然に②
「ふぅ~.....お茶が美味しい.....」
俺は今、リロロが淹れてくれたお茶を飲みながらのんびりとしている。
他の嫁さんズもリリーナを除いてそれぞれ思い思いの物を口にしながら寛いでいる。
「ほぉ.....ピコも中々やるではないか」
「そりゃあリリーナの護衛って言ってるし、アレぐらいはやるんじゃない?」
リリーナとピコの2人を眺めながらシャルミナとミラーカがそう言う。
その言葉に俺もチラリとリリーナ達の方を見てみると、2人は壮絶なバトルを展開していた。
何故このような事になっているかと言うと.....
「ピコ、いい機会ですわ。私の傍付きの任を解きますので、これからは自分の幸せの為にお生きなさい」
「お断りします。私は生涯リリーナ様にお仕えすると誓ったのです。と言うか、勝手に話を進めないで頂けますか?」
「あら?ピコはフリーグルさんは好みでなくて?」
「いえ、顔は好ましいと思いますが.....しかしどのような方なのかもまだ存じませんので」
「突然始まる恋もあればお付き合いして育まれる愛もありますわ。私も今、カズキ様と出会えて幸せですもの。ですのでピコにも絶対に幸せになってもらいますわ!」
「リリーナ様のお気持ちは大変うれしく思っております.....ですが、今でも十分に幸せですので」
「強情ですわねっ!ならリリーナ・タナカ・ラナードとして命じますわ!ピコ、私の傍を離れて自分の幸せの為に生きなさい!」
「残念ですがリリーナ様にそのような権限はございません。お忘れですか?私の雇い主は陛下ですよ?その陛下の許可も無くそのようなご命令には従う事は出来ません。それにリリーナ様は既にカズキ様に嫁いでおります。なのでリリーナ・カミシロになるのではないでしょうか?」
「ぐぬぬ.....そんなんで行き遅れたらどうするんですの.....今でも結構ギリギリ――」
「フンッ!!」
「ちょっ!?突然何ですのっ!?」
「リリーナ様なら十分に躱せるでしょう?それに.....今聞き捨てならない台詞が聞こえた気がするのですが?私の気のせいでしょうか?
「.....ヒュ~、ヒュ~」
「.....全く口笛が吹けてませんよ?ってか誤魔化すならもう少しマシな反応をしてください!」
「な、何を言ってますのっ!?私は行き遅れの年増なんて台詞は言ってませんわっ!」
「.....よろしい。リリーナ様には少しお仕置きが必要なようですね?お覚悟をっ!!」
みたいなやり取りをしていて、急に2人でドンパチやり始めたのだ。
シャルミナもだが、年上の女性に年齢の話はしてはイケない。
死んだばあちゃんもそう言ってた気がしないでもないような気のせいのような.....
そんな訳で2人が戦いだしてからカレコレ2時間ぐらい経つ。
それで少し小腹も空いてきたので、おやつ休憩を取っている訳だ。
.....本当、何でこんな事になってんだよ。
「いやぁ~、このお菓子も美味しいですね」
「いやいや、フリーグルさん?事の発端は一応あなたですよね?責任取って止めてきてくださいよ」
ってかこの人のせいで面倒な事になってる気がするんだが.....
「あの2人の戦いに混ざれと?ご冗談を。僕に死んでこいと?僕はこう見えても戦闘はからっきしでしてね」
「.....お兄ちゃんはパパと似てる.....頭は良いけど弱っちい.....」
「おいおい?せめて研究者と言ってくれよ?」
アハハと笑うフリーグル。
「まぁ、うん.....もういいや。それは良いけどさ.....ところで、ピコさんに言ってた事は本気なのか?」
「うん?勿論だとも!彼女こそ僕の運命の人さ!一目見た時からビビッときたよっ!」
「あっ、そうですか......」
一目惚れでこんな事になるのか?
う~ん、俺にはよく分からんな。
「思い出しますね!カズキ様を見た時の私もそうでした!」
「そうだねっ!僕も思い出すよっ!こう血が騒ぐって言うかっ!」
「.....わたしも.....懐かしい感覚.....まさに運命.....」
「そうっすね。ウチも一目見てビビっときたっすよ」
「うむ、言葉では言い表せぬ感覚が身に走るからの」
嫁さんズは何故か全員共感していて、俺の味方はいない模様.....
「ってかアレ、止めなくてもいいのか?.....今更だけど」
「.....本当に今更じゃな?まぁ、放っておいてよかろう。2人も本気な訳ではないしの。言うてみればじゃれあいのようなもんじゃな」
まぁ、本気ならここら辺一帯が吹き飛んでるわな.....
「はぁ.....しばらくはここでお茶でもしばいてるか.....」
「ズズッ.....ズルズルッ.....そうっすね.....ハフハフッ.....ズズズッ!」
「.....なぁネル?何でカップ麺なんて食べてるんだ?ってか何でそんな物がここに?」
「ズルズルッ.....いや、ジン様が沢山くれたっすよ?コレってカズキ様が居た世界の携帯食なんすよね?美味しいっす」
親父かよっ!!
何で俺じゃなくてネルに渡してんだよっ!!
俺だって食べたいわっ!!
俺が憤慨していると、ネルが一口俺に差し出してくる。
「カズキ様、あ~ん.....っす」
「いや、流石にカップ麺であ~んは厳しくないか?」
「じゃあウチがフーフーしてあげるっす」
「いや、それもちょっと.....普通に熱いの食べたいし」
「も~っ!たまにはウチといちゃいちゃしてもいいじゃないっすかっ!」
「十分してると思いますけどっ!?」
俺はネルと軽くじゃれ合う。
「「「「.....」」」」
他の嫁さん達の視線に気が付かないまま。
「カズキ様!あ~んです!」
「カズキ様っ!あ~んだよっ!」
「.....あ~ん.....」
「ホレッ!あ~んじゃ!」
「.....いや、流石に同時に差し出されても困るんだが?」
リロロはクッキー、ミラーカは何故かステーキ、フローラは野菜スティック、シャルミナはアイスと4人共バラバラだ。
「「「「.....むっ?」」」」
4人は激しく視線を交えて睨み合う。
「カズキ様?お茶にはクッキーですよね?」
「カズキ様?男の子だし、ガッツリお肉だよねっ?」
「.....野菜が最高.....健康にも良い.....」
「ハンッ!おやつと言えばアイスよ!のう?カズキ様?」
「「「「.....」」」」
俺としては順番に食べればいいだけだと思うんだけど?
だから喧嘩は止めて.....っと4人を止めようと動こうとして瞬間。
「「「「あ~んっ!!(じゃ)」」」」
4人は素早く動き、俺の口の中にそれぞれ手にしていた物を放り込んでくる。
.....4人同時に。
サクッとしたクッキーのほんのりとした甘みに油のたっぷりと乗った肉汁たっぷりのステーキの濃厚な旨味。
それに生野菜の苦みとシャキシャキした食感にアイス.....コレはチョコレートアイスだろうか?
とても甘くて冷たい。
それが同時に俺の口の中を襲ってくる。
(不っ味ッッ!?口の中に色々な味と食感が広がって言い表せないような不味さが俺の味覚を蹂躙している!まさに食の大乱闘や~.....って言うてる場合かっ!!)
「.....うっぷっ!.....オロロロッ.....」
俺は思わずその不味さに吐いた。
1つ1つは美味しい物だとしても、同時に味わっても美味しいとは限らない。
ってか、何で.....何で順番にしなかったんだよ.....
順番なら素直にあ~んしてあげたのにっ!
俺もこんな不幸な目に合う事もなかったのにっ!!
「「「「カズキ様っ!?」」」」
「いや、同時に口の中に突っ込んだら当然じゃないっすか?皆、手に持ってる物がバラバラっすよ?どう考えても同時に食べて美味しいとは思えないっす」
驚く4人にネルが冷静にツッコむ。
ネルさん、もっと言ってやってください。
「アハハッ!フローラが幸せそうでなによりだよ」
そんな俺達を眺めながら、フリーグルは1人そう笑う。
何かこの人が楽しそうなのが納得行かないんですけどっ!?
何で俺がこんな目に.....
こうして俺は不幸な目に遭いながら、リリーナとピコさんのやり取りが早く終わるのを願うのであった。




