もう1人の問題児は何処に?
支部長であるクマロクとその一味と思われる者達を捕縛した後、ギルド本部へと運ぶついでに本部から急遽人員をこちらに連れてくる事となった。
そうしないとローグンのギルドが機能しないからね。
ちなみに捕縛者達を連行する時に、母さんに捕縛されたであろう者達が尋常でないぐらい怯えて憔悴しきっていたので俺は聞いてみた。
この時の聞き取りから、ある程度母さんが何に見えていたのか推測した俺は、サラサラッと紙に簡単な絵を描いて確認してみた。
その絵を見た元冒険者達は、悲鳴を上げながら恐怖していたので俺の推測に間違いはないようだ。
(.....何で巨大なペンギンなんだよっ!もっと、こう.....普通の人に見えるとかじゃ駄目だったのかっ!?そのチョイスは何なんだよっ!!)
母さんの謎の感性に内心ツッコみを入れながら、俺は気になっている事を訊ねた。
「ところで.....親父はどうしたんだ?」
親父と母さんは基本、2人で一緒に居る事が多いので片方が居ないと微妙に違和感がある。
あと.....放って置いたら何をしでかすのか分からないので心配で俺の心の疲労が半端ない。
「パパなら、この街の東にある平原に陣取ってるわよ~?ジーポーンが3万の兵を率いて攻めて来てるみたよ~?」
「はぁっ!?」
予想の斜め過ぎる母さんの返答に、俺は思わず素っ頓狂な声を出して驚く。
「いやいやいやっ!攻めて来てるって何だよっ!?えっ?まさかそれを親父1人で迎え撃とうとしてるのかっ!?」
流石に親父でもそれはキツイんじゃないのか!?3万だぞ!?
「1人じゃないわよ~?カイエンくんとマッシュとポテチも一緒よ~?」
あっ.....ジーポーン終わったわぁ.....オーバーキル確定だよ。
「いや、そもそも何でカイエンが一緒に?」
「実戦を経験するいい機会だからって言ってたわよ~?」
軽いっ!理由が軽すぎるよっ!!
「まぁ、ジン様お1人でも余裕じゃろうて。心配はいらんと思うぞ?」
「そうっすね。ジン様1人で十分殲滅出来ると思うっすよ?」
シャルミナとネルは全く心配しておらず、寧ろ親父1人でも余裕だと言う。
「カイエン様の活躍、私も近くで見たかったなぁ~」
「お手伝いしたかったね~」
ココンとコロンも余裕の表情だ。
「そう言えば、親父が強いってのは知ってるけどさ.....どれぐらい強いんだ?」
俺は気になったので聞いてみた。
「いや、カズキ様.....ジン様はこの世界で最強じゃぞ?」
「そうっすね。昔ジーポーンから幾度となく暗殺者を向けられてた時も、何もしないでただ寝てたって聞いたっすよ?」
「えっ?なにそれ?どゆこと?」
「なんでも、普通に寝てるだけでもジン様には傷1つ付けられず、毒とか飲ませても全然効かずにケロっとしてたそうっすよ?それでジーポーンもジン様の暗殺は諦めたって聞いたっす。ジン様にとっては少しウザい虫ぐらいの感覚なんじゃないっすかね?」
どんな身体の構造してたらそんな事になるんだよっ!!
それって最早人間なのかっ!?
いや、親父は強いとは思っていたけどさ、まさかそこまで非常識だとは思わないじゃんっ!?
万が一があるかもとか少しでも心配した俺の気持ちを返せっ!
「ちなみにママより強いわよ~?」
嘘だろっ!?
こうして俺は、驚愕の事実を知らされて驚きと共にその非常識な存在に頭を抱えるのであった。
.....心配?そんなモノ必要ないだろ?
☆☆☆
カズキ達がローグンのギルドでアレコレしている頃、2人の男と2頭の龍が草原から東の方を見つめていた。
「おぉ~、ゾロゾロと来たなっ!ジン様っ!あいつら全員ぶっ殺せばいいのか?」
額から角の生えた巨漢の鬼族のカイエンは、初めての実戦に少し興奮気味に訊ねた。
「いやいや、前の少し装備の劣ってる集団いるだろ?あいつらは一応除外な!」
「そうなのか?何でなんだ??」
「あいつらは今回、ジーポーンから強制的に集められた集団だ。下級平民って言ってな.....ジーポーン内じゃ奴隷以下の扱いを受けている。大方、使い捨ての肉壁要因として強制徴兵したんだろうよ」
「なんだそれ?同族なのに仲間を使い捨てにするってのか?.....人族は理解出来ねぇ~な.....っつか、あいつらは逃げようとか戦おうとか思わないのか?」
「まぁ、俺も同じ人族だが、ジーポーンの考えは理解出来んよ。カイエン、それは無理なんだよ。あいつらは家族や恋人を人質に取られている。逃げたり反抗すれば殺されるだけだ。だから従う他ないんだよ」
「なんだよそれっ!卑怯な奴等だなっ!」
鬼族のカイエンは武人意識が非常に高い。
勝負とは正々堂々、真正面から己の力をぶつけ合う事だと思っている。
なので人質を取ったり卑怯な真似をする奴をカイエンは許せない。
「まぁ、心配するな!今頃トメ達フェンリル部隊が人質の救出をしている頃だ。あいつらは身体のサイズも変更出来るし鼻も良い。それに頭も良いからな、任せておけば問題ない」
「トメ様達が行ってるなら大丈夫だな!」
救出に向かったトメィトゥ達がどうやって人質を判別するのかと疑問に思うかもしれないが、そこはミリアの力を使った魔道具をジンが持たせているので問題はない。
「ではジン様、我達はあの後ろの小奇麗な集団を殲滅すればよろしいのですね?」
「ブレスの威力を調整できるかしら?難しいわ~。魔法も広範囲に被害が出て巻き込んでも困るし.....肉弾戦かしらね?」
マッシュがジンに確認を取ると、ポテチはどうやって相手を蹂躙していくか悩んでいる。
「まぁ、作戦は簡単だ!名付けて『突っ込んでドーンッ!』作戦だ!」
果たしてそれは作戦と言えるのであろうか?
「よし、後ろの連中に手加減はいらんぞ?思いっきりぶちかましてやれっ!つ~か1人も逃がすなよっ!あいつ等は盗賊みたいなもんだからな!」
ジンはジーポーンが嫌いだ。それも当然である。害は無いと言っても幾度となく暗殺者をけしかけられたのだ。害は無くとも鬱陶しい。
「そろそろか.....行くぞっ!!」
ジンの掛け声と共に、2人と2頭はジーポーン兵目掛けて突進して行った。
ジーポーン兵は恐怖と混乱によるパニックの中、次々と蹂躙されていき、直ぐに辺り一面血の海へと変わっていく。
「オルァッ!選ばれた人族なんだろ?さっさとかかってこいよっ!」
「ジン様、こいつ等弱すぎねぇ~か?学校の生徒達の方がまだ強いんじゃねぇのか?」
「大方ライクニフに攻め行って好き勝手にしようと考えておったのであろうが.....そのような事を我達がさせると思うのか?」
「はい、ドーンッ!あっ.....やり過ぎちゃったかしら?少し地形が変わってしまったわね.....どうせジーポーンの土地だし構わないわよね?」
2人と2頭は激しくジーポーンの兵を蹂躙していく。
ジーポーン側もなんとか抵抗しようとするが、全くと言っていい程相手になっておらず何も出来ずに次々と殺されていく。
こうしてジーポーンのライクニフ侵略は失敗に終わり、人質を取られ強制徴兵された兵以外は生き残りが存在しなかった。
後日、1万人を超える難民を突然押し付けられる形となったタカシは、怨嗟の籠った声で叫んだ。
「あんのっクソボケジンがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!」
彼は昔から変わらず、ジンに振り回されて苦労するのであった。




