言葉は理解出来るが会話が通じぬ
「クマロク!貴様っ!このギルドの現状はなんじゃ!!」
ガツインさんが支部長と呼ばれた男、クマロクに詰め寄る。
「何なの?このジジイ?」
「突然支部長を呼び捨てとかありえないわよね~」
「支部長、この失礼なジジイはどうしますか?」
クマロクの取り巻きと思われる女性職員達は次々にガツインさんを非難する。
自分達の組織のトップをジジイ呼ばわりとか、アホなのかな?
それとも末端過ぎて、ガツインさんの顔を知らないとかか?
写真などない世界なのであり得るな.....
まぁ、これでこいつ等も敵だと判明した訳だ。
「まぁまぁ、抑えなさい。優雅ではありませんよ?.....おや?ギルド長ではないですか?連絡もなく突然来られるとは、一体何用で?」
クマロクは取り巻き達を嗜めると、ガツインさんに対して何かあったのか?と言わんばかりの態度で答える。
「このギルドの現状はどうなっておるのかと聞いておるんじゃ!入って早々、冒険者が他者に絡むなぞありえんわいっ!それに人を物のように使うなどどほざく始末!貴様はどんな指導をしておるんじゃっ!」
「物?.....半端者の獣人3匹に魔族の子供が1匹。人族の子供が1人と獣のオスが1匹と.....アレは何の生物だ?新種の魔物か何かか?テイムしてるのか?まぁいい。ふむ.....何か問題でも?」
クマロクは心底何が問題なのか分からないと言った様子で答えた。
(.....いや、それよりも母さんは一体どんな見え方してるんだよ?気になってそれ所じゃねぇ~よっ!)
「貴様っ.....本気で言っておるのか!?人をなんじゃと思うておるんじゃ!」
「人?獣と獣の成り損ないと邪悪な魔族の子供の事ですか?メス達は見た目だけは良いようですが。まぁ、我々選ばれたジーポーンの人間に使われる事なんて、彼女達からしてみれば大変栄誉な事でしょう?ギルド長が何故そこまで怒っているのか私には理解できませんね」
ある意味スゲェな.....言葉は分かるのに話が通じないとはまさにこの事だな。
もうサクッと殺っちゃいたい気分なんだが、流石にガツインさんを無視して勝手な事する訳にもいかないしなぁ~。
「貴様と言う奴はッ!.....それだけではないぞっ!貴様っ、ライクニフからダンジョンの賊討伐の依頼を突っぱねておるらしいな?それは一体どういうつもりじゃッ!」
「賊?おかしな事を仰る。我がローグンのダンジョンに賊など居りませんよ。居もしない賊の討伐をしろと言われても、出来る訳ないじゃありませんか」
「じゃが現にライクニフの冒険者は襲われておるじゃろうがっ!被害を受けておるのに賊訳がいない訳ないじゃろうがっ!!」
「ああ、その件ですか」
クマロクは眼鏡を指でクイッと上げる。
イチイチ行動と言動がイラつく奴だな.....
「アレは単なる魔族退治ですよ。魔物退治。邪悪な魔族とそれに組みする者達を討伐していただけです。当たり前の事ではないですか。それの何処に問題があるのですか?」
「ふ、ふざけるでないわッ!ギルドは種族問わずに門が開かれておる組織じゃ!それをギルド側が種族差別するのも大問題じゃが、犯罪に加担しておるじゃと!?許される事ではないぞっ!.....それにライクニフの冒険者に仕事を受け付けさせぬと言う話も聞いておるぞっ!」
ガツインさんは怒りの矛先を取り巻きの3人にも向ける。
「え~?私達は人の依頼を受注するのが仕事だし~?」
「そうそう。ジーポーン人でもない家畜の相手なんてするだけ無駄だわ」
「ね~。ってか~このジジイさっきからウザくね?」
取り巻きの職員達も全く反省の色が無い。
それどころか自分達は悪くないとほざく始末。
馬鹿の取り巻きはやはり馬鹿なのだろうか?
どんな脳をしてたらこんな思考になるんだ?やはり教育か?だとしたら、想像以上にジーポーンってヤベェな.....
さっさと滅ぼしたいって言ってた意味がよく分かる気がするよ.....
「ガツインさん、どうします?まともに話が通じる奴等じゃなさそうですよ?」
「.....仕方ありません。もう少し穏便に済ませたかったのですが、そうも言ってられないようですな.....クマロク!貴様らはクビじゃ!犯罪者として捕縛させてもらうぞっ!」
俺の問いかけにガツインさんは力なく答えると、そのままクマロク達をクビすると宣言した。
「おや?それは困りましたね。クーズッ!その者達をさっさと何とかしてこのジジイを殺しなさいっ!」
「へっへっへっ、良いのか?支部長さんよ?一応そのジジイ、ギルドのトップなんだろ?」
「構いませんよ。ギルド長はここへは来なかった、そうなるだけですから。ギルド長が行方不明で不在になるのです。そのまま私がギルド長になるのもいいですね。その方が余程ギルドの為になる事でしょう」
「おぉ~っ!なら当然俺達にも恩恵はあるんだろうな?」
「ええ、勿論です。私の権限で優遇する事をお約束しましょう。では、さっさとこのジジイを殺してしまいなさい。あぁ、メス共は好きにして構いませんよ」
「へへへっ、聞いたか野郎どもっ!さっさとこいつ等を片づけるぞっ!」
「「「「オウッ!」」」」
黙って聞いてりゃこいつ等凄いな.....もう成功した気でいやがる。
頭ハッピーセットか何かか?
「ガツインさん、こいつ等はどうすればいいですか?サクッと殺ります?」
「いや、一応捕縛でお願いできますかな?こやつ等共には、捕えて罰を与えたいと思っておりますでな。間違いなく下級犯罪奴隷になるでしょうが、自業自得ですな」
下級犯罪奴隷、犯罪者でも重い罪を犯し更生の余地無しと判断された者達である。
当然人権みたいな物は存在せず、死刑宣告と同義である。
いや、死刑の方がまだ軽いかもしれない.....
下級犯罪者奴隷のほとんどが人体実験のモルモットにされたり、致死率100%の危険な区域での強制労働になるのだ。
「ほう?私達に勝てるとでも?やはり同じ人族でも我々ジーポーンとは違いますね。実に愚かで浅はかな思考をしているようです」
「ねぇ、支部長?このガキ捕まえて売ったら?」
「確かに綺麗な顔してるわね?どこぞの変態貴族なら喜んで買いそうだわ」
「男のくせに私達より綺麗とか何かムカつくわね。このオ〇マ野郎!」
.....アァンッ?テメェ.....今言っちゃならねぇ事言いやがったな?
俺の顔は母さん似である為、女顔なのだ。
幼少の頃から中学卒業するぐらいまで、よく女に間違われる事もしばしばあった。
修学旅行の時なんて『神代、お前と一緒だと男子が間違いを起こすかもしれん』とか言われて俺だけ風呂と寝る部屋が別だったんだぞっ!
なんで修学旅行に来てまで1人寂しい思いしなきゃなんねぇ~んだよっ!
修学旅行の楽しみの大半は部屋でみんなでワイワイやる事だろうがよっ!
流石に高校生ぐらいからは成長して間違われる事も少なくなっていたのだが、それでも女顔の容姿は俺にはコンプレックスなのだ。
母さんが超美形なので、それに似ている俺も顔は良いと自分でも思う。
社会人になってからもよく告白とかされたしな.....3割ぐらいは男からだけどなっ!
俺にそっちの気は無いので当然お断りである。
しかし、中には諦めずに俺を追い回す者もいるのだ.....そういう奴等は何故か全員男なんだけどな。
想像して欲しい、男なのに男から追い回される事を。
そいつら全員、目が血走っていて俺の事を性欲全開の顔で追い回してくるんだぞ?恐怖以外の何物でもねぇ~よっ!
それらは今も俺の心の中でトラウマとなっている。
.....悲しい思い出話御終い。
「.....いい度胸だっ!テメェ等、全員覚悟しや.....あれ?」
「カズキ様、何やってるんすか?もう終わったっすよ?」
「.....えっ?」
ネルの言葉に俺は辺りを見渡すと、全員見事に簀巻きにされており、口には布を咥えさせられていた。
俺が悲しい思い出を思い返して怒りを燃やしている間に、事はスッカリと片付いているようだ。いつの間に.....
あの.....俺、まだ何もしてないんですけど.....?
「ふんっ.....雑魚共が!妾達を相手にしようなぞ1万年早いわっ!」
「口ほどにも無かったわね。こいつ等まともに訓練とかしてたのかしら?」
「余裕~余裕~。こいつ等プチッてミンチにしていい~?」
「駄目よ!我慢しなさい」
シャルミナが余裕余裕と言った感じで簀巻きにした奴等に吐き捨てる。
ココンは手ごたえが無さ過ぎてちゃんと訓練をしていたのか疑問を持つ。
コロンは物騒な事を言ってココンに窘められていた。
「こやつ等は本部に連れ帰って然るべき処置を取らせて頂きます。カズキ様、皆様、この度の事、ギルドとして大変申し訳ありませんでした。そしてご協力に感謝致します」
ガツインさんにそう言って頭を下げられるが、俺はとても複雑な心境だ。
.....だって、俺がしたのって入口でチンピラを1人殴り飛ばしただけなんだぜ?
とてもじゃないが、どういたしましてって胸を張れるような気分にはなれないんですけど.....
こうして、ローグンの冒険者ギルドでの騒動はあっと言う間に片付き、ローグンのギルドで不正を働いていた輩達は捕まったのであった。
.....周りがチート過ぎて全然活躍出来ねぇよ.....




