ローグンの治安
キキさん達を車に乗せ、俺達はローグンの街を目指し移動中である。
馬車は壊れて動かせないので、そのまま置いて行く事となったが、後でちゃんと回収の兵を向かわせるとの事だ。
俺、リロロ、シャルミナ、ネルは、ゲンコウさんと一緒に外の兵士さん達と馬に乗りながら、楽しくお喋りしながら移動中だ。
馬車は駄目でも、馬は無事なので、そのまま数頭お借りして乗らせてもらっている。
ふふふ、こう見えてもちゃんと上にいた時に仕込まれているのだ。
.....まぁ、練習の時は馬じゃなくて馬のような魔物だったけど.....足が8本もあって物凄くパワフルだったよ.....それに比べたら普通の馬ぐらいどうって事ない。
ちなみに俺の後ろにはリロロが座っており、何がとは言わないが背中がとても幸せだ。
車の中にはキキさんと怪我した兵士さんが数人乗っている為、流石に定員オーバーなのだ。
俺達が外に出る原因ともなった怪我した兵士さん達からは、凄く遠慮されたのだが無理は良くないのでそのまま大人しく車に乗ってもらう事となった。
「ローグンってダンジョンのある街ってぐらいしか知らないんんですけど、どういった街なんですか?」
俺はローグンの事を何も知らないので、道中の暇つぶしも兼ねてゲンコウさんに聞いた。
「そうですね.....多分、カズキ殿が思っている以上に治安は悪いかと思います。カズキ殿は、ラナード王国からラライに寄ってから来られたんですよね?なら、治安が悪いと感じるでしょうな」
「えっ?それは何か治安が悪くなる理由でもあるんですか?」
ラナード以外は治安はあんまり良くないと聞いていたが、自分達の街を治安が悪いと言うぐらいだ、何か訳でもあるのだろうか?
「ええ、ローグンの街はジーポーンの冒険者も多く流れて来ております。なので困った事に治安が少し悪いのですよ.....」
どういう事??
俺が頭を傾げていると、ネルが教えてくれた。
「ローグンはっすね、ライクニフとジーポーンの境目と言っていい街なんすよ。どちらが先にダンジョンを制圧して、その資源を自国の物にするか競ってるんす。ジーポーンの冒険者はまともな人は少ないっすからね。だから治安が他より悪いんだと思うんすよ」
「えっ?ポルト達はめっちゃまともだったと思うが?」
「ポルトさん達はジーポーンの人では珍しいタイプっすね。あそこの国の冒険者は、基本自己中で横暴で乱暴な、まさにチンピラって感じの奴ばっかっすよ」
「えぇ.....何でそんな事になってんだよ.....普通ギルドから注意とか受けるんじゃないのかよ?」
「ジーポーンのギルドはギルド職員も不正まみれっすよ。残念な事に.....期待するだけ無駄っす」
マジかよ.....あんまり関わりたくねぇなぁ.....
「ハハハッ.....まぁ、そんな訳でローグンは治安がそこまで良いとは言えないのですよ。ダンジョン攻略も、ジーポーンの冒険者によって我が国の冒険者が妨害されたりとかされてますからね」
「そこまでするもんなんですか?」
「それだけダンジョンの恩恵ってのは大きいのですよ。ちなみに街の半分は我が国のザザ様が治め、もう半分はジーポーンの領主が治めております」
ゲンコウさんはそう言って教えてくれた。
国境を境に半分はライクニフでもう半分がジーポーンって事か。
よくそんな形で街が維持出来るな.....ダンジョンの恩恵ってのは、俺が考えてるよりもこの世界じゃ大きいのかもしれないな。
「まぁ、問題あるまいて。妾達に絡んでくるようなら、キッチリと分からせてやればよい」
「はいっ!頑張りますっ!」
シャルミナの言葉にリロロが気合いを入れる。
「ほどほどにな.....」
俺は2人の様子に苦笑いしか出てこない。
いや、マジでリロロさんは手加減してあげてね?相手さんがミンチになっちゃうよ?
「ダンジョンの入口はどちらの国が管理してるんです?」
1つの街にダンジョンを争って2国が競ってるのだ、そういった主張は激しい気がするのだが?
「一応両方の国から派遣しておりますが.....最近はジーポーンが我が物顔で権利を主張しておりましてな.....実は、我々は魔王様にご助力を願いに行っていたのです」
「えっ?ダンジョンを攻略する助っ人にって事ですか?」
シャルミナの弟さんなら、難なく攻略してしまうのではなかろうか?
「ええ.....しかし、風呂に入れないから嫌だと断られてしまいましてね.....」
「ポポイの奴めっ!今度会ったら本当に折檻が必要なようじゃな!」
ゲンコウさんの話を聞いていたシャルミナがポポイさんの断り文句に怒りを漲らせる。
いや、俺も流石にどうかと思うよ?気持ちは分からんでもないが.....
「あ、あの、シャルミナ様、どうかお怒りをお鎮めください」
「しかしじゃなっ!あ奴は困っておる民の願いをなんじゃと思うておるんじゃっ!」
「シャル姐、それは仕方ないっす。1人1人の願いを聞いてたら、身がいくつあっても足りないっすよ?」
「むう~ッ、それは分かっておるっ!分かっておるんじゃが.....」
ゲンコウさんがシャルミナを嗜めると、ネルが仕方がない事だと言う。
シャルミナも頭では理解しているのだろう、感情が納得していないだけで.....
「そ、それにですね、ユリエル様から近々攻略出来る者が来るだろうと言われましてね。それで我々は戻って来た訳なんですが、シャルミナ様達の事だったと確信しております」
えっ?なんでそんな事になってんだ?俺達はただ賊退治をしに来ただけで、攻略しに来た訳ではないのだが.....
ってか何でユリエルが.....ってアリアかっ!!
そう言えば母さんと眷属は念話でいつもで情報のやり取りが出来るって言ってたな!
つまり、俺達が向かうのを知って、そのまま攻略させようって事か.....
「ほう.....ポポイめ、妾達を利用しようなぞ、随分偉くなったもんじゃな」
シャルミナも意図に気付いたらしいのだが、少し魔力を押さえてくれませんか?
物凄く怖いです.....
「ど、どうか我々にお力をお貸し頂けないでしょうか.....お礼ならば私に出来る事なら何なりと!命を差し出せと言われるのなら、迷い無く差し出しましょう!」
いやいやいやっ!重いよっ!命とかいらないんですけどっ!?
「いや、特にお礼とか命とかはいらないんですけど.....う~ん、どうする?ランク上げる為に賊退治に来ただけなんだけどなぁ.....」
俺は3人に意見を聞いてみる。
「妾はやってもよいぞ!ポポイの奴には思うところがあるが、実際に民が困っておるのを見過ごせんのじゃ!」
「ウチも別にいいっすよ?特に問題なく攻略出来ると思うっすからね」
「私はカズキ様が行くと仰るなら行きます。行かないと仰るなら行きません」
賛成2に俺次第1か。
「まぁ、車に乗ってる他の嫁さん達にも聞いてはみますけど、多分攻略する事になると思いますよ」
ミラーカとリリーナはノリノリで参戦しそうだし、フローラは俺次第だろうな。
「あ、ありがとうございますっ!では、街に戻り次第早速私の首を落として―――」
「いらないからっ!!お礼も命もいらないですからっ!!」
俺は物騒な事を言い始めるゲンコウさんを慌てて止める。
何でそんな事になるんだよっ!
「し、しかしそれではお礼が.....」
「いや、普通にありがとうだけで十分ですけど?それに、俺もジーポーンって国はあんまり好きじゃないんですよ。だから全然気にしないでいいですよ」
話を聞いただけで実際に見た訳ではないが、あまりいい国とは思えない。
「あ、ありがとうございます.....ありがとうございますっ.....」
そう言って、ゲンコウさんはお礼を言いながら涙を流していた。
(.....結構ローグンの街は、ジーポーンに喰い込まれていてライクニフ側はギリギリなのかもしれないな。うっしっ!頑張るかっ!)
こうしてローグンを目指しながら俺は心の中で気合いを入れ、ダンジョン攻略を前向きに考えるのであった。




