ライクニフの国とは
無事、ロレアシを出発した俺達はラライを目指して進む。
サマトリさんは逃げおおせたのだろうか?それとも捕まったのだろうか?
そう言えば、何か女性陣が風呂から出てきた時に、凄く疲れてる感じがしたんだが何かあったのだろうか?
そんなどうでもいい事を考えてしまうぐらい、この旅は平和そのものだ。
「なんじゃ?眠そうな顔して?一応護衛中じゃぞ?もうちと気を引き締めんか」
俺の欠伸を見たシャルミナから注意が入る。
「いや、シャルミナには言われたくないんだが?ってか、勝手に移動していいのか?」
俺の膝の上に座って背を預けているシャルミナにだけは言われたくない。
「妾はちゃんと今も魔法で索敵と警戒もしとるし?それに勝手に移動する訳なかろ?ちゃんとネルに許可ももろうておるわ」
この護衛の責任者と言うか、指揮を執っているのはネルだ。
そのネルの許可を貰っているのならば、俺から言う事は何もない。
「索敵と警戒って言われてもな.....賊どころか、魔物一匹すら見かけないんだが?」
「なんじゃ?気付いとらんのか?魔物は先頭のリロロが見つけ次第、フローラが魔法で片づけておるぞ?」
えっ!?そうなの?全然気が付いてなかったんだが?
「わははっ!こんなに快適な旅は初めてですよ。いつもはもう少し慎重に進むんですけどね」
俺達の会話を聞き、トネルコさんがそう教えてくれる。
「いつもは違うんですか?」
俺がそう聞くと、トネルコさんはそれはもうと言わんばかりに頷く。
「ええ、いつもならも少し冒険者の方が多いですね。それに前方の危険を探る為に、馬車もちょくちょく止まります。今回みたいに1度も馬車を止める事なく進めるのは初めてですね。皆様を専属で雇いたいぐらいですよ!」
「へぇ~、そうなんですね。ありがたい話ですが、専属はちょっと.....すいません.....」
「いえいえ、カズキ様の目的は聞いておりますからね。あくまでも私の願望ですよ」
申し訳なさそうに断るを俺を見て、トネルコさんは自分の願望だと笑う。
「そう言えば、トネルコさんの商会って何を扱っているんですか?」
俺は興味本位で聞いてみた。
「うちは主に食料品と魔道具ですね。食料は王家から卸された物を扱わせて頂いております。魔道具もそうですね」
「へぇ~、それって国外に出してもいいんですか?」
「勿論です。ライクニフはラナード王国の同盟国ですからね。我が国で技術を独占するつもりは陛下にはないみたですよ。逆に同盟国でもあるライクニフの民の生活向上の為に、食糧や魔道具をバンバン広めろと仰ってましたな」
へぇ~、まぁ、おじさんらしいっちゃらしいな。
「そう言えば、ライクニフってどんな国なんですか?魔族の国ってぐらいしか分かってないんですけど.....」
俺のその問いには、シャルミナが答えてくれる。
「ライクニフはの、魔族が集まって出来た小さい国じゃ」
「集まって?」
「うむ、昔、魔族は人族達から世界中で攻め立てられておった。見た目が人族とは違い過ぎる種もおるからの。そんな魔族たちに声を掛け、集まってきた者達で作り上げたのがライクニフと言う国じゃ」
「攻め立てられてか.....でも、魔族って人族より身体力があるんじゃないのか?」
「そのような者も少なからずおるのは事実じゃ。じゃが、妾達はいかんせん数が少のうてな.....それに、魔力は人族よりははるかに多いが、身体力はそこまで変わらんと言う者も多い。現に妾も、魔力は膨大じゃがか弱い乙女じゃしな」
.....シャルミナ、この前リロロとの模擬戦で、リロロの大槌を片手で軽く受け止めてなかったか?
『まだまだ甘いのうっ!もうちと踏み込みを強くせんと、妾には届かんぞ?』
なんて言ってた気がするんですけど?日本とこの世界じゃ『か弱い』って意味が違うらしい。
「ほほう?それはどういう意味じゃ?んっ?」
あれっ!?何も言ってないよ!?何で考えてる事がバレたんだ!?
「いや、カズキ様は考えてる事が顔に出まくりじゃぞ?フローラと良い勝負なんじゃないかのぉ?」
えっ?俺ってあのレベルで分かりやすいの?
あの、ババ抜き最弱のフローラと同レベルって.....
いや、待てっ!そう言えば、俺はよくフローラと接戦を繰り広げているような.....
き、気のせいだっ!流石にあそこまで分かりやすくはないはずだ!
「ハァ、まぁよい。数で劣る妾等が生き残るには、そうするしかなかったって訳じゃな。それを妾と弟でまとめ支えてきて今のライクニフと言う国になっておる。ちなみに大きい枠組みで見れば、ミラーカ達、ヴァンパイア族も魔族じゃな。鬼族のカイエンなども魔族に分類させるの」
「へっ?じゃあ、ミラーカ達も元々ライクニフ出身って事か?」
「いや、それは違う。魔族じゃからと言って、全ての魔族がライクニフに集まった訳ではないからの。ミラーアは確か、もっと北の方の国出身のはずじゃ。雪に囲まれた、ヴァンパイア達しか住まぬ小さな町だったと聞く。そこを人族の国に襲われて、たまたまマッシュ達の散歩をしておったジン様に救われたと聞いた.....しかし、ジン様が訪れる前に、ミラーカの両親や兄弟、姉妹などは賊にやられたみたいじゃがな.....」
「.....そうか.....なんで、その人族達はミラーカ達を襲ったんだろうな.....やっぱ、魔族だからか?」
「分からぬが、まぁ、大方予想は出来る。ヴァンパイア族は皆、男女問わす容姿が美しい者が多いからの。エルフ族もそうなんじゃが、そう言った種族は昔から良く人族に襲われておるよ.....」
.....それで捕まえて、自分達の好き勝手にしようって事か.....胸糞悪くなる話だな。
「まぁ、ミラーア達を襲ってきた者達は、しっかりとジン様に滅ぼされておるけどな。正確には、ジン様に命じられたマッシュ達竜族が、じゃな」
えぇ.....オーバーキルもいい所じゃない?それ.....
まぁ、同情するつもりなど一切ないのだが。
「まぁ、そんな滅びた馬鹿の話はどうでもいいとして、シャルミナの弟ってどんな人なんだ?確か、ライクニフの今の王様だろ?」
「見た目は妾とそっくりじゃぞ?双子だからの。性格は.....どうなんじゃろうな?妾と違って可愛げはないかもしれんのぉ~.....」
シャルミナと見た目がそっくりって.....見た目はショタって事か?
って事は、大きなお姉さんが見ると、大興奮するんじゃなかろうか?
「そう言えば話は変わるんだが、シャルミナって自分の事を魔族としか言わないよな?種族名とかはないのか?」
俺は少し気になった事を聞いてみた。
「種族のぉ~.....う~ん、無いのぉ~.....」
「えっ?無いの?」
「うむ、まぁ強いていうなら『魔族の祖』って感じかの?」
「『魔族の祖』?魔族はシャルミナ達から派生した種族って事か?」
「それは違う。う~ん、なんと説明したらよいかの.....妾と弟には両親はおらぬ。ある日、気が付いたら弟と2人でこの世界におった。妾達には何故、どのように、どうしてかは分からぬがな」
「よく分からんが、突然この世界に現れたって感じか?」
「うむ、概ねそのような感じじゃの。妾と弟は他の魔族より飛び抜けた強さを持っておる」
「う~ん、案外母さんが関係してたりするんじゃないのか?」
「いや、それは無いのぉ。妾も一応ミリア様に確認をしてみたんじゃが、ミリア様の眷属は皆、天使族らしい。そう言えば、ライクニフに1人眷属がおるぞ。弟の補佐をしてくれておる」
「はぁ!?なんで母さんの眷属がそんな所にいるんだよ!?」
「それは妾のおかげじゃな。妾がジン様とミリア様の元で暮らすようになり、弟の話をしたらの、ミリア様が『じゃあ~、私の眷属を派遣しておくわね~』って言って、いつでも連絡が取れるようにしてくれたんじゃ。そのおかげで、ラナードと同盟も組めたし、ライクニフからすればメリットしかないからの」
おいおいおい.....何か雲行きが怪しくなってきたぞ.....
せ、せめて、せめてまともな人物であって欲しい!
間違ってもどこぞの変態天使みたいな人じゃありませんようにっ!
俺は内心で祈っていると、トネルコさんが声を掛けてくる。
「あっ、見えましたぞ。あそこが国境になります。あそこを超えたら、もうラライは目と鼻の先ですよ」
俺はトネルコさんに言われ、視線を先に動かす。
.....なんと言うか、想像してたよりは大分ショボイな.....
国境だから、もっとこう、厳重な警戒でもしてるのかと思ってたんだが、なんか緩くね?
俺の視線の先では、ラナードの騎士団と思われる人達と、見た事もない鎧の兵士達がテーブルを囲み、なにやら楽しそうにワイワイやっている。
多分、あれはライクニフの兵士かな?
一応、砦のような物も建っており、通行を見張る兵士や騎士の姿も見えるのだが、漂う空気感はほのぼとしている。
確か、ジーポーンの方の国境には強固な要塞を作ってるんだったよな?
まぁ、あの国では仕方のない事なのかもしれないが.....
俺達は、国境を通る際、荷物や身体検査などを軽く受け、そのまま通行の許可を受ける。
いや.....すんごく軽くなんだけど.....大丈夫なのか?
危険物や違法な物とか、持ち込み放題なんじゃなかろうか?
俺はそんな心配をしていたのだが、後で聞いた話、門の所にそういった物を検知する魔道具を仕組まれているらしく、通れば分かるのだそうだ。
金属探知機みたいなもんか?
まぁ、そんなこんなで俺達は国境を越え、いよいよライクニフ国へと踏み入ったのであった。
さぁ、どんな国なのか物凄く楽しみだ!
閑話を数話挟んで新しい国でのお話となります。
いつも読んでくださり本当にありがとうございます。




