肌色がいっぱい
「ふぅ~.....気持ちいいですねぇ~.....」
俺の横でお湯に浸かりながらポルトがそう零す。
俺は今、この宿にある大浴場に入っている。
残念ながら俺の目の前に広がる光景は、ムキムキでむさ苦しい肌色がいっぱいだ。
だが、久しぶりにのんびりお風呂に入れるというのもまぁ、いいもんだ。
「そうだね.....僕達はこの国に来るまで、せいぜい湯で身体を拭くぐらいだったからね」
ランドリックが湯に入りながら言ってくる。
「だよなぁ~.....このお風呂の文化を知ったら、もう昔みたいな生活はしたくないよなぁ~」
「いつか村へ帰れたら、まずはお風呂を作りたいね」
「だなっ!村の連中も、風呂を知ったらもう戻れないんじゃないのか?」
「だよねっ!」
そう言ってポルトとランドリックは笑い合う。
「そういえばランドリック.....ニーナとは少しは進展したのか?兄の俺が言うのもなんだが、あいつは鈍いと言うか、色恋に疎いと言うか.....もっとガンガン行かないと進展しないぞ?」
「ぼ、僕は別にそんなじゃないしっ!仲間として好きってだけだよっ!」
どうやら話はランドリックとニーナの話になったらしい。
俺はすかさず口を挟む。
「いや、ランドリック。恥ずかしいのかも知れんが、そういうのはもっとアピールしないと伝わらないぞ?気付いたらニーナに、好きな男が出来てましたってのは嫌だろう?」
「そうだぞ?兄としてもランドリックになら安心して任せられるからな。もっと積極的にガンガン行けっ!」
「だからっ!そ、そんなんじゃないってばっ!」
いやぁ~、あれだけバレバレなのに今更そんな事言っても誰も信じないよ?
「ほっほっほっ、そうですな。若い時の恋はもっとガンガン押すべきですな」
そう言って背後から声を掛けられ、俺達は後ろを振りむく。
「いや、失礼。何やら楽しそうなお話をされておいでで。つい年甲斐もなく懐かしくなってしまいましてな」
確か、トネルコさんの商隊の1人で、バードンさん.....だったか?
「いえいえ、お気になさらず。男同士の会話に年齢なんて関係ないですよ」
「ほっほっほっ。ありがとうございます。しかし、少年の恋ですか。やはり若い者はいいですなぁ」
「まぁ、全然アピールが足りてないせいか、本人に想いは伝わってないんですけどね」
俺がバードンさんにそういうと、ポルトがランドリックのアピール不足を嘆く。
「もうっ!だから違うってばっ!!」
恥ずかしいのか、顔を真っ赤にさせて必死に否定するランドリックの言葉に耳を貸す者はいなかった。
「ふわぁぁぁぁ~、リロロさんの胸、おっきい~.....」
ニーナはリロロの胸を見て何やら驚いている。
「.....そうかな?」
リロロは自分の胸を、下からもにゅんっと持ち上げで首を傾けた。
「どうやったらそんなに大きくなるんです?」
何故と聞かれても分からない。
自然とこの大きさにまで成長したのだ。
「適度な運動と快適な睡眠、それにバランスの取れた食事っすよ」
リロロが何と返答していいのか困っていると、ネルが助け船を出してくれた。
「そうだねっ!後は、好きな人に揉まれると大きくなるって噂もあるよっ!」
「あら?それは迷信ではなくて?」
ミラーカとリリーナが参戦してくる。
「ふえぇぇ.....ネルさんもミラーカさんもリリーナ様も、おっきいぃ~.....」
3人は胸が大きいだけでなくスタイルも整っている、同じ女性のニーナから見ても、その姿は目から離せないほどだ。
「ぐぬぬ.....あんなもん、脂肪の塊じゃしぃ~?胸なんぞ無くともカズキ様は喜んでくれるしぃ~?」
「.....肩こりの原因.....運動する時にも邪魔.....夏場は汗疹も出来やすい.....」
少し離れた場所で、持たざる者達が呪詛を吐く。
「シャルミナさん!フローラさん!私にはお2人の気持ちがよく分かりますよっ!」
「サラよっ!お主は妾達の仲間じゃ!妾達3人は今から、魂の絆で結ばれた仲間じゃっ!」
「.....サラは親友になれる.....わたし達と共に苦しみを.....分かち合える.....」
そこにサラが加わり、女湯は更に混沌としていく。
しばらく時間が経ち、落ち着いたのか、話題は自然と恋バナになっていく。
「うむ、そうすると、カズキ様は喜んでくれるんじゃ」
「そうですね。カズキ様はソレが好きみたいです」
「そ、そうなのっ!?お、男の人って、その.....そんな事で喜ぶの!?」
シャルミナとリロロの赤裸々なカズキとの夜の生活について聞き、ニーナの顔は真っ赤に染まる。
「そうっすね。他にも〇〇な事や××な事も喜んでくえるっすよ」
「.....そうなると激しい.....カズキ様は喜ぶ.....私達も喜ぶ.....」
「そうですわね。カズキ様が興奮してくれてるのを見ると、何だが愛おしくなりますわね」
「あぁ~、確かにそうかも。ポルトも喜ぶわ」
ネル、フローラ、リリーナの追撃に、サラも自分達もそうだと告げる。
「ふむ、ニーナにはそう言った相手はおらんのかや?」
「えっ!?いませんよっ!そんな人はっ!」
シャルミナの言葉に、ニーナは慌てて手を振りながら答える。
「ランドリックとかどうなの?」
ここでサラは、少しでも弟の援護すべくランドリックを押してみる。
「えっ?ランドリックですか?アハハ、ないですよ~。う~ん、ランドリックは手の掛かる弟みたいな感じですかね?」
ランドリックの春は、まだまだ遠いらしい。
「じゃあ、ニーナはどんな男性が好きなんすか?」
「あっ!?まっ――」
「それは勿論お兄ちゃんですっ!」
ネルの質問をサラが止めようとするが、ニーナは喰い気味に勢いよく答えた。
「お兄ちゃんは昔から優しくてカッコよくてとても素敵なんですよ!私が一緒に冒険者をやりたいって言った時も心配はしてくれましたけど反対はしませんでした。私の心配をしつつも私の気持ちを汲んでくれるなんてとても優しいでしょ?それだけじゃないんですよ!昔私が転んで足を怪我した時なんかにも優しく抱きかかえて家まで運んで治療してくれたんですよ?そして泣く私を慰めるように優しく頭を撫でてくれるんです。それに冒険者になってからは戦闘の時には私を出来るだけ守ろうと動いてくれてるんです。お兄ちゃんは何も言わないけど私には分かるんです。それに上手く魔法を使えたら『よく頑張ったな』って褒めて頭を撫でてくれるんですよ。えへへ。お兄ちゃんはサラお姉ちゃんと結婚しちゃったけどお兄ちゃんが望むなら私はいつでもどんとこいですよ!あぁ、昔みたいにまたお兄ちゃんと一緒にお風呂に入りたいな。お兄ちゃんの背中を流してあげて褒めてもらいたいな。いっそお兄ちゃんから私を襲ってくれないかなぁ」
ニーナは物凄く早口で捲し立てた後、ナニかを想像し、頬を染めながら『デュフフッ』っと乙女がしてはいけない笑いを漏らしている。
そんなニーナの姿に、一同ドン引きである。
サラはあちゃ~っと言わんばかりに額に手を当てて空を仰いでいた。
ニーナは所謂、重度のブラコンである。
ニーナからしてみれば、サラは愛する兄であるポルトの妻であり、本来ならば憎き恋敵のはずなのだが、サラに対しても姉と慕っているので問題はない。
それどころか、そこに自分も混ざりたいとった願望を持っている。
ちなみにランドリックとポルトはこの事を知らない。
ポルトは単に、妹から慕われているとしか思っておらず、ランドリックは気付いてすらいない。
唯一知っているサラは、何とか矯正しようと弟であるランドリックとくっ付けようと考えているが、全くと言っていい程上手く行っていない。
このままでは兄のポルトがその内襲われてしまうかもしれない。
だからその前に、ニーナを何とかしようとサラは1人で奮闘するのだった。
こうして、ニーナの意外な一面を知った面々は、何とも言えない気持ちになりながらもお風呂から上がり、英気を養う為に自分達の部屋へと戻っていったのであった。
おかしいな.....ニーナはこんなにやべー奴にする予定は無かったんですけどね?
何か勢いとノリで書いてたらこんな事に.....
この回で、閑話を含めて50話です。
いつも読んで下さっている方、応援して下さっている方、本当にありがとうございます。




