旅の道中は平和です
ライクニフ国のラライを目指して出発した俺達は、全5台の馬車を連ねてガタゴトと揺られていた。
俺達の布陣は
先頭の馬車にリロロとフローラ。
2番目の馬車に『赤の希望』のランドリックとニーナとシャルミナ。
真ん中の馬車に俺とリリーナとピコさん。
その後ろ、4番目の場所にポルトとサラさん。
最高峰の馬車に、ミラーカとネル。
と言った布陣になっており、今の所は何事もなく、平和そのものである。
「いやぁ~.....案外何も起きないんだなぁ.....」
「ここはまだ、ラナード王国ですからね。この国は治安がいいので、私達もそこまで心配なく通れるので助かってますよ」
そんな俺の声に反応して答えてくれたのは、この商会の代表でもあるトネルコさんだ。
残念ながらふっくらとした体形ではなく、シュッっとした体形の初老の男性である。
「当然ですわ!この国で賊などといった輩など、お父様が許しませんもの!それに、この辺りはサマトリお兄様の領地ですもの。お兄様の騎士団が街道など巡回しておりますから、旅人の安全などはちゃんと守られておりますわ」
俺とトネルコさんの会話に、リリーナは当然だと言った様子で答える。
流石にいつものドレスではなく冒険者らしい恰好をしているのだが、そんな姿も良く似合っている。
ピコさんはメイド服のままなんだけど.....
ちなみにサマトリさんとは、この国の第3王子でリリーナの別腹のお兄さんだ。
ヒロキさんに王位を押し付けた人の1人でもあり、押し付けた後は『領地の経営があるから』っと言って、そそくさと王都から離れた人である。
俺達はラライを目指す道中、今日はこのサマトリさんが収める『ロレアシ』と言う街を目指している。
王都から、そこまで離れてはいないのだが、いかんせん移動は馬車だ。
なので8時間ぐらいはかかる。これが車での移動であれば、物凄く早くて楽なんだろうけどな。
「それにしても.....馬車って初めて乗ったんですけど、思ったよりお尻が痛くなったりしないんですね?」
俺のイメージではお尻が痛くなるイメージなのだ。
「そうですね、昔はカズキさんのおっしゃる通り、高級な馬車でも長時間乗ってるとお尻が痛くなったもんですよ」
トネルコさんは懐かしそうに笑い、でも.....っと続ける。
「タカシ陛下が色々な物を開発されましてね、その技術を、私達民にまで惜しみなく公開してくれるものですから.....おかげ様で今は、とても快適な旅ができますな」
トネルコさんの言う通り、おじさんはこう言った、民が便利になるような技術は惜しまない。
トネルコさんの馬車も、サスペンションのような物は勿論、車輪にも何やらタイヤのような物が使われている。
ゴムではないようだが、コレは一体なんの素材なのだろうか?
俺はトネルコさんに聞いてみる。
「ああ、この馬車の車輪には、『スライム樹脂』と呼ばれる物でコーティングされてるんですよ。なんでも.....衝撃を吸収して、振動を抑えてくれる効果があるとか.....私達が座っている、この座席にもこの『スライム樹脂』が使われてるんですよ。いやぁ~、おかげでお尻が痛くならずに済んで助かりますな」
トネルコさんはそう言うと、豪快にワハハッ!と笑った。
なるほど、この世界でもスライム素材が有能なのは定番みたいだ。
このスライム素材を使った物と、馬車の下部に取り付けられたサスペンションのような役割を果たす四角い魔道具のおかげで、この馬車で快適に旅が出来るらしい。
『サスペンションのような物』っと言ったのは、このサスペンション、バネみたいな形はしていない。
流石におじさんにも、バネの形状を作るのは無理だったらしく、その変わりに魔道具を使用して衝撃を軽減させているのだそうだ。
.....アレかな?日本の車とかで使われている、エアーサスペンションみたな感じを目指したのかな?
こうして、しばらくのんびりと進んだ俺達は、少し開けた場所で昼食を取る事となった。
都合よくこんな開けた場所があったなぁ、なんて思っていたのだが、どうやら休憩場所として、予め国が整備していた場所のようである。
昼食の準備をリロロ、フローラ、シャルミナ、ピコさん、サラさん、ニーナで行っている間、俺達は周囲の警戒だ。
ランドリックはニーナに良い所を見せたいのか、積極的に料理の手伝いを行っている。
俺は周囲に注意を向けながら、隣にいるリリーナに話しかけた。
「.....そういえば、身体は大丈夫か?無理してないか?キツイならちゃんと言うんだぞ?」
「大丈夫ですわ!まだ少し、カズキ様が入っているような感じがして違和感はありますけど、とても幸せな気分ですわ」
リリーナはそう言って、顔を真っ赤にさせている。
.....ええ、そうです.....ついにリリーナにも手を出してしまったんです.....
ち、違うんですっ!アレは俺は悪くねぇ!
自分を受け入れ、一緒に連れて行ってもらえると聞いたリリーナは大変興奮していた。
それはもう、いつでもバッチこいって程に。
しかし、俺が中々自分の元に来ない事に業を煮やし、ついに昨夜、俺の部屋に突撃してきたのだ。
そしてそのまま俺は襲われたのだ。
.....抵抗?無理無理!
嫁さんズに比べたら俺の力など無力にも等しい。
それに特に断る理由も、もうないのですし.....
本来その日はミラーカの番であった。しかし、ミラーカが来なくてリリーナが来たって事は、ちゃんと話も通っているのだろう。
そうして俺は見事に喰われた訳なのだが.....リリーナは普通?の人族のせいか、営みは至って普通であった。
俺からしてみれば、物凄く楽な戦いだったと言えるだろう。
干からびると思う程、絞り取られる事もなく、血をチュウチュウ吸われる事もない。
とても平和な夜だったと言っておこう。
「早く奥様の御子を、この手で抱きたいものですね」
おわっ!?ビックリした。
突然背後から、ピコさんに声を掛けられる。
「昼食の準備が出来ましたので、お呼びに参りました」
どうやらご飯の準備が出来たので、呼びに来てくれたらしい。
.....がっ、急に背後から声をかけるのは止めて頂きたい。
(ってか、警戒してたはずなのに全く気が付かなかったんですけど!?)
改めて実力の差を感じてしまい、俺は少し凹んだ.....
「奥様は人族ですからね。他の奥様方よりも子は成しやすいかと」
ピコさんは、リリーナの事を『姫様』から『奥様』呼びに変えた。
俺の事も『旦那様』と呼ぶようになった。
リリーナとは書類もちゃんと提出して、夫婦にはなっているのだが、結婚パーティーなどは帰ってから改めてと言う事になっている。
「ええ、頑張りますわ!ですが、私は新米ですので.....その、他の方を差し置いて.....と言う気持ちもありますわ.....」
「奥様、それは種族差なので仕方のない事かと。それに、他の奥様方は、そのような事を気になされるようなお方ではないかと思われますが?」
「それは私も分かっておりますわ!.....そうですわね.....そのような些細な事を気にする方が返って失礼ですわね!」
「その意気です、奥様。旦那様にバンバン子種を出して貰いましょう」
「勿論ですわっ!」
ねえ、やめてっ!?そう言った話は、せめてもっと小声で話さない!?
ほらっ!商隊の皆さんの視線がとても怖い事になってますよっ!
明らかに『爆ぜろっ!』って目付きで睨まれてるんですけどっ!?
俺は必死で2人を止め、なんとかそれ以上のリリーナとピコさんの会話を阻止する事に成功した。
こうして俺達は昼食を取り、再びロレアシの街を目指し出発するのであった。
道中、魔物や賊に襲われると言う事などなく、旅は安全のまま進んでいく。
そして、その日の夜
俺達は、リリーナの兄のサマトリさんが治めるロレアシの街に、無事に到着するのであった。




