ランクアップを目指して
「そろそろ冒険者ランクを上げたいと思います!」
俺は、朝食後の嫁さんズとの話し合いで、唐突に話し出した。
「突然なんじゃ?やぶからぼうに.....」
シャルミナを含め、嫁さんズは怪訝な顔で俺を見つめる。
「いや、そろそろランクも上げたいなって思っただけなんだが?何か問題でもあるか??」
ただの思い付きである。
「いや、問題はないっすけど、どうするんすか?この国だと盗賊とかあんまり居ないすよ?」
ネルの言う通り、ラナード王国は治安が良い為、盗賊の類は国境沿いの田舎ぐらいにしかいない。
「そこはちゃんと考えてある、ライクニフ国に行こうと思うだ」
ライクニフ国は、魔族が多く住んでいる国で、ラナード王国の北にある国だ。
ラナード王国の北東側がジーポーン帝国なら、ライクニフ国は北西の方角に位置する。
ちなみにシャルミナの故郷でもある。
「むっ.....ライクニフかや.....」
「嫌なら別の国に行ってもいいんだけど、どうする?」
「いや、大丈夫じゃ。丁度良いから、ついでに弟の顔でも見るとするかの」
ライクニフ国の王様を務めているのは、シャルミナの双子の弟で、昔シャルミナから王位を押し付.....譲られたそうである。
「んじゃ決まりだな!何かライクニフに行く商隊の護衛でもあれば、ついでに依頼を受けて行こうと思うんだけど、反対の人はいる?」
俺の問いかけに、嫁さんズから反対意見は飛んで来なかった。
「ねぇねぇ、カズキ様。リリーナ様はどうするの?」
ミラーカの言葉でリリーナの存在を思い出す。
「う~ん、俺はそのまま色んな国を見て周ろうかと思ってるからな.....他所の国に、長々とお姫様を連れ歩く訳にはいかないだろ?まぁ、なんとか説得して諦めてもらうさ」
「諦めてくれるんでしょうか?」
「.....無理矢理付いて来る予感.....リリーナ様は結構頑固.....」
リロロとフローラの言葉にリリーナを思い返すが.....
(そうなんだよなぁ.....何か無理矢理にでも付いて来ようとしそうなんだよな。まぁ、そこはおじさんにも説得に協力してもらうしかないか)
「そこはおじさんに、この国を離れる旨を伝える際にでも相談してみるよ」
「タカシ陛下がリリーナ様に勝てるっすかね?」
ネルさん.....不吉な事を言わないでください。
こうして俺達の方針は決まり、ギルドでライクニフ行きの護衛依頼を受けたのだった。
その夜.....
「――って訳で、そろそろこの国を出て色々見て周ろうと思う」
「.....そうか。まぁ、俺がどうこう言える事でもないしな。無理や無茶だけはするなよ?」
「ありがとう、そこは気を付けるよ。それで.....リリーナの事なんだけど.....」
「.....カズキ、リリーナの事は嫌いか?」
「いや、好きか嫌いかで言えば好きなんだけどさ、流石に連れまわすのはマズいだろ?」
俺がそう言うと、おじさんは少し考えてから口を開いた。
「.....いや、連れて行ってやってくれ。な~に、リリーナに手を出したからと言って、もうこの国を継げとは言わんさ」
「.....本気で言ってるのか?ソレ.....?」
何か企んでるのはなかろうか?
「おいおいっ!俺はリリーナの父親だぞっ!?娘の幸せを1番に考えるなんて当たり前じゃないかっ!」
「そんな台詞は、今までの言動を振り返ってから言ってもらいたいもんだが?」
「あっはっはっはっ!そんな昔の事などもう忘れたっ!まぁ、連れて行ってやってくれ」
「ハァ~.....分かったよ。でも、絶対にこの国は継がないからな?絶対だぞ?」
「分かった分かった。この国はヒロキに継がせるし、問題ない!元々その予定だったしな」
「じゃあなんで俺に継げとか言うんだよ.....」
「そりゃぁ、ヒロキよりもあいつに手慣れてる優良物件だからな!ところで、どこの国に行くんだ?」
「人を便利屋扱いするなよ.....ライクニフ国に行こうと思ってるよ」
「ライクニフか。最近、ジーポーンの奴等が何やらキナ臭い。ライクニフもジーポーンと隣接してる国だからな、大丈夫とは思うが、気を付けるんだぞ?」
「分かった。ありがとう、気を付けるよ」
「本当に頼むぞ?万が一にでもお前に何かあれば、あの2人がすっ飛んで行くぞ?そうなるとどうなるか分かってるな?絶対に気を付けろよ?絶対だぞっ!」
「アッ、ハイッ.....めっちゃ気を付けるわ」
俺はおじさんの言葉に凄く真剣に頷いた。
その5日後
「お~っ.....今日はいい天気で、絶好の旅日和だな!」
空は快晴で、時折少し風が吹いており気持ちが良い。
「カズキさんっ!今日からよろしくお願いしますっ!」
そう言って俺に声を掛けてくるのは、ポルト達『赤の希望』の面々だ。
「こちらこそよろしく頼む。何しろまだまだ新米だからな。分からない事とか多くて迷惑掛けると思うが、色々と教えて欲しい」
「ええっ、任せてください!それにしても.....カズキさん達が、まだランク3だったなんて信じられませんね.....」
「まぁ今回は、そのランクを上げる為に行くようなもんだけどな」
「あぁ.....確かにこの国は治安が凄く良いですよね。僕達も驚きましたよ」
「へぇ~、俺は他の国を知らないからなぁ.....この国が物凄く治安が良いって事だけは聞いてるんだが、他の国の事とか想像も付かないなぁ」
「あははっ!カズキさん達なら全然大丈夫だと思いますよ?逆に絡んでくる賊の方が可哀想なんじゃないですか?」
ポルトはこの国に来て、メキメキと腕を上げている。
出会った頃はランク4だと言っていたが、今ではランク6にまでなっているのだ。
「そう言うポルト達も、めちゃめちゃしごかれてるって聞いてるぞ?この国の王様に目を付けられるなんて、大したもんだと思うぞ?」
俺がそう言うと、ポルトの顔が少し曇る。
「いやぁ.....あはは.....今思い出しても緊張で胃が痛くなるよ.....まさか、タカシ陛下が直接僕達が借りている借家にくるなんて思わないじゃないか.....」
おじさん.....ポルト達を呼ぶんじゃなくて、自分から行ったのかよ.....
そりゃ、突然のその国の王様が訪問してくるとか、どんな嫌がらせだよっ!って感じだよな.....
「それに、あの不思議な食材.....僕達が苦労して鍛えてきたのは何だったんだろうって、少し悲しくなったよ.....」
あっ、ポルト達もあのドーピング不思議食材を食べたのね。
って事は、おじさんのお眼鏡には適った訳か。
それにしても.....なんかスマン.....アレ、俺の母さんのせいなんだよ.....
「.....だよなぁ.....」
俺とポルトの間に、虚しい空気が流れる。
「ちょっとポルトっ!何しんみりしてんのよ!そろそろ出発するらしいわよ!カズキさん、よろしくお願いしますね」
そう言って声を掛けてきたのは弓使いのサラさんである。
このサラさん、ポルトと同じ村出身の幼馴染で、現在はポルトの奥さんでもある。
彼女の弟の、魔法使いのランドリックくんは、ポルトの妹でもある神官のニーナに恋心を抱いているらしいのだが、当の本人のニーナには残念ながらその想いはまだ届いていないのだそうだ。
頑張れ、少年。
「こちらこそよろしく。出発を教えてくれてありがとう、サラさん。じゃあ俺達もそろそろ、護衛の隊列を作って行くとしますか!」
こうして俺達はライクニフ国の国境沿いの街、ラライを目指して出発するのであった。




