大運動会②
「な、なんじゃ?カズキ様が急に青ざめとるが?」
「さ、さぁ?僕にも分かんないよっ」
焦る俺を後目に、シャルミナとミラーカが何やら話していいるが、今の俺にそれを気にしている余裕はない。
『さぁ、まずは初戦!王都北学院vs王都南学院の試合ですっ!王者に南学院の選手達がどのように挑むのかっ!注目したいですね!』
『ああ、特に今回は各学院にジンの息子とその妻達が指導したと聞いた。北学院は我が娘のリリーナが指導しているがな』
『俺の息子のカズキが指導したんだ。南学院の優勝で間違いないなっ!』
『おいっ!ちょっと待てっ!優勝はリリーナの指導した北学院で決まってんだろ~がっ!』
『ああんっ?カズキが指導した南学院に勝てるとでも思ってんのかっ?』
『それはこっちの台詞だっ!うちのリリーナが指導してるんだぞっ!そもそも、北学院は王者だっ!元々強かったが、そこにリリーナの指導が加わったんだ!優勝は当然だろうっ!』
『甘いなっ!うちのカズキが指導してるんだぞ?どんな弱小チームも世界と戦えるようなチームになるに決まってんじゃねぇ~かっ!』
『なんだと、テメェ』
『やんのか?コラッ』
『『オォッ?』』
おいっ!そこの親馬鹿2人!止めろっ!
2人の親馬鹿丸出しな会話を聞き、来賓席にいるリリーナは両手で顔を覆って机に伏せている。
その耳は真っ赤に染まり、とても恥ずかしそうだ。
その気持ちは良く分かる。俺も物凄く恥ずかしい.....
ってか親父はハードル上げるんじゃねぇ~よっ!
俺が少し教えたぐらいで世界レベルのチームになる訳ねぇ~だろうがっ!!
『あ、あの、その、お、お2人共落ち着いてください!』
マイラクさんも困ってるじゃねぇ~かっ!
『え、え~、お2人のお話で、今回はいつもと違った試合が見られそうですね!これは観客の皆さまも期待しておきましょう!』
未だに睨み合う馬鹿2人を無視し、マイラクさんは話を進める。
ぷ、プロだ.....マイラクさん.....アンタプロやでぇ.....
.....でも、あんまり期待はしないでください!お願いします!
その間にも選手達は、各チームで円陣を組むと気合いを入れ、それぞれのポジションに移動して行った。
『さぁ、各チームの選手も位置に付き、まもなくキックオフですっ!』
そんなマイラクさんの言葉の後に、審判からピーーーッ!っと開始の笛が鳴らされた。
『さぁ、今年の大運動会の目玉の1つでもあるボールシュート!その初戦が今、始まりましたっ!先行は南学院チームで、今サキ選手からキャプテンのフェザー選手にボールが蹴り出されましたっ!さぁ、ここからどのような攻撃を見せてくれるのか注目しましょうっ!』
試合が始まり、まずはうちの先行か.....まずは立ち上がり、落ち着いてせめて欲しい。
俺がそんな事を考えてると、試合は早くも動き出す。
『おおっと!?これは何だっ!?フェザー選手が早くもシュートの体勢だっ!しかもそれを鏡写しのようにサキ選手も同じ体勢を取っている!まさかっ!まさかここからシュートを打つつもりなのでしょうか!?』
待って.....何やってんのぉ!?
『むっ!?なんだっ!?その二人の後ろから、ミギス選手が物凄い勢いで走ってきたぞ!?そしてそのまま、2人のシュートに合わせるように、ボールに向かってスライディングをしていくっ!?これは、まさか3人同時にシュートを打つつもりなのかっ!?』
マイラクさんも驚く中、3人はそのままシュート打つ。
「くらえっ!コレが俺達が先生から教わって編み出した、『トリプルバーストシュート』だっ!!」
教えてませんけどもっ!?
3人が放ったシュートはそのまま敵陣ゴールに向け、物凄い勢いで飛んで行く。
勢いも凄いのだが、何故かはボールがぶれて複数に見える.....ふっしぎ~。
「舐めるなよっ!」
北学院の選手達はそう言うと、ボールを止めるべく自らの身体ごと突っ込んで行く。
「「「うわぁぁぁぁぁっ!」」」
『おおっとっ!?ボールを止めようと飛び込んだ3人が吹き飛ばされてしまったぁぁぁ!物凄い勢いだっ!』
ボールは勢いを無くす事なく、そのまま敵のゴールへと迫る。
「ペナルティエリアの外からのシュートで、俺からゴール出来ると思うなよっ!!」
相手のゴールキーパーがそう言い、ボールに向かっていく。
『で、でたぁぁぁぁ!今大会の№1キーパーでもある、ゲンゾ選手だっ!ゲンゾ選手はあのワバヤシ家の嫡男で、今までペナルティエリアの外からゴールを決められた事のない、まさに最強の守護神だっ!』
ゲンゾくんは、そのままボールに向かって両腕を伸ばし、横っ飛びでボールを掴む。
『と、止めたぁぁぁ!やはりゲンゾくんの守備は抜けなかったのかっ!?3人も吹き飛ばす威力のシュートを簡単にその両腕でキャッチし.....んっ!?な、なんだ!?何か様子がおかしいぞっ!』
ボールをキャッチしたゲンゾくんは、威力を殺し切れていなのか、徐々にボールの勢いに押されるように身体ごとゴールへと引っ張られて行く。
『ご、ゴ~~~ルッ!!止めたと思われたゲンゾ選手ごと、そのままゴールへと突き刺さったぁぁぁぁ!!試合開始と同時に信じられない事が起こりましたっ!ジン様、これは一体どういう事なのでしょうか!?』
『あれは、ツ〇ンシュートを改良した、新必殺技だな!3人同時に、タイミングも完璧に揃えた事で、爆発的な威力になったんだろう!』
『ツ〇ンシュートと言うと、あの指南書に乗っている伝説のシュートの事ですかっ!?タイミングが難しぎて、今まで誰も会得した事のないシュートだと聞きます!それをまさか会得するだけではなく、改良してしまうとは.....南学院の選手達は、とんでもない事をやってのけましたねっ!』
マイラクさんが親父に話を振り、親父が得意げに何か喋っている中、おじさんが俺をギロリと睨む。
その目はこう語っていた。
テメェ、コドモタチニナニフキコンデヤガル
っと.....
違うんですっ!俺が教えたんじゃないんですっ!信じてくださいっ!
「先生が言っていた。皆と力を合わせる事だ大事だと!自分1人では敵わないかもしれないけど、皆と一緒なら王者にも通用するって教えてくれたんだっ!」
ちげぇ~よっ!チームワークってそう言う意味じゃねぇ~よっ!
いやっ!ある意味チームワークなんだけども、俺が言ってた意味はそうじゃねぇ~よっ!
「ま、まさかゲンゾがペナルティエリアの外から決められるなんて.....」
北学院チームの選手達は、ゲンゾくんが決められた事に動揺している。
ゲンゾくん本人も、ショックだったのか少し顔色が悪い。
「いくぞっ!今までの俺達じゃないって事を、見せてやるっ!」
その逆に、うちのチームの士気は高い。
念願の初ゴールを、絶対的上位チームとして君臨していた北学院から奪えたのだ。
試合はその勢いのまま、南学院チームが優勢のまま進んで行く。
『ここで試合終了の笛だぁぁぁっ!初戦を制したのは、南学院チームだっ!!なんとあの王者、北学院に3対2で勝利を収めたぞっ!これは初戦から大番狂わせが起こってしまったぁぁぁ』
『.....北学院チームは、先制のゴールの影響を長い事引きずってしまったのが敗因だな』
『だな!後半は何とか気持ちを切り替えて追い上げてきたが、南学院チームが予想以上に成長していたんだろう、結構攻めあぐねる場面も見られたな』
マイラクさんの言葉で、おじさんと親父が試合を振り返る。
南学院チームの選手達は、初めての勝利にみなとても嬉しそうだ。
中には涙を流している者さえもいる。
反対に負けた北学院の選手達は悔しそうだ。
まぁ、当然だよな.....必死に勝つために練習して、負けたら悔しいだろう。
だが、勝負の世界は非情なのだ。その悔しさを糧に、諦めずに頑張って欲しい。
俺がそんな事を考えていると、南学院の選手達が俺の座っているスタンドの近くまで走ってくる。
「先生~っ!俺達、勝ったよっ!勝てたんだよっ!」
フェザーくんがそう言うと、子供達は次々に大声で叫ぶ。
「やったよ先生っ!」
「見ててくれたっ!?」
「初勝利だぁ~っ!」
「先生っ!褒めてっ!」
「ご褒美楽しみにしとくねっ!」
「先生の教え通りに頑張ったよっ!」
子供達の顔は輝かんばかりの笑顔で溢れていた。
いや、最後の奴、俺はそんな事1つも教えてないからな?
「おうっ!よくやったぞお前らっ!!でも、まだ試合はあるんだからな?浮かれ過ぎるなよ?この調子で、初優勝を目指すぞっ!」
「「「「「はいっ!!」」」」」
こうして南学院の子供達は、無事に初勝利を収めた。
しかし、まだまだ試合は2試合残っている。
気を引き締めて、目指すは初優勝だっ!
俺と子供達は、そのままこの後の試合に備え、次の試合に目を向けるのであった。




