大運動会の花形競技
俺とフローラは、放課後まで学院長室で過ごしていた。
お昼には、『子供たちと同じ物ですけど.....」と言われ、給食までご馳走になってしまった。
給食を食べた俺は、少し昔を思い出し懐かしくなった。
俺は栄養バランスの事は、詳しく知らないが、肉も野菜もバランス良く入っていてとても美味しかった。
その後放課後までは、久々の再会を果たしたフローラとフローリアさんが、その隙間を埋めるかのように話しているのを、俺は邪魔しないようにと見守っていた。
もちろん、所々では会話に参加している。
その際に、少し大運動会についても聞いてみたのだが.....
概ね、日本の運動会と似ている感じがした。
リレーに障害物競走、棒倒しに騎馬戦、そして何故かバスケとサッカーまで入っていた。
.....球技大会も混ざってる感じか?
そして何故か、このバスケとサッカーがこの大運動会の花形競技であるらしい。
まぁ、運動会の内容を聞いた訳だが、きっと俺の知っているモノと中身は別物な可能性が高い。
呼び名を聞いた事があるからと、その競技を知った気になるとひどい目に合う気がする。
.....オレ、学ベル子ダカラ.....
そして俺は、覚悟を決めて詳しい内容を聞き出したのだ.....
まずリレー。
これは問題ない。普通に走って速さを競う、至ってまともな俺の知っている競技だ。
次に棒倒し。
これもやや過激ではあるが、まだセーフと言った所だろう。
次に騎馬戦。
これは騎馬に、本物の馬を使い身体に3つの的を着け、制限時間の内に、どれだけ相手チームの的を壊せるかを競うらしい。時間後に的を死守した数が得点となり、その得点の多い方が勝ちみたいだ。
本物の合戦かな?とか思ったが、まだ俺の常識の範囲内ではある。ギリギリだけどね!
問題はここからだ。
障害物競走。
これはリレーと同じように速さを競う競技なのだが、その途中には様々な障害物が有り、それを乗り越えていかなければならない。
ここまでは俺の知ってる障害物競争なのだが、問題はその障害の方にある。
まず、相手チームの選手を魔法で攻撃して妨害する。
もちろん、選手の命に危険が無いように、人数も決まっており、威力を一定まで落とす魔道具を装備しての話らしいのだが、危なくない?
しかも、この妨害方法、スタートからゴールまでいくらでも魔法を打ち込んでもいらしい.....
そして道中には様々な障害が置かれている。
悪路を進むとかは普通なんだけど、何故か魔物や教員が立ちふさがるのだ。
いやいや、本当に危なくないの?
俺がそう聞くと、フローリアさんに『毎年のことですから大丈夫ですよ』っとニッコリと返された。
ちなみに毎年ゴール出来る者は殆どいないらしく、ゴール出来た者はまるで英雄のように生徒達からの人気者になれるのだそうだ。
.....ゴールさせる気ねぇじゃね~かっ!!
そして問題の2つ。バスケとサッカーだ。
この2つには、親父が関わっている.....
それを聞いた瞬間、俺の顔はスンッとなり、帰りたい気持ちでいっぱいになった.....
この2つの説明をする前に、この国の国王でもあるおじさんの悲しき話をしよう。
元々おじさんは、この2つの球技を普通に地球レベルのスポーツとして広めようとしていた。
しかし、この世界には魔法があるし、身体能力は地球のレベルを大きく超える。
そこでおじさんは考えた。魔法を封じ、身体能力を制限するエリアを作り出す魔道具を作ろうと.....
そうすれば、なんとかスポーツの範囲に収まるのではないか?と.....
それから半年、おじさんは城に籠り、研究員達と必死に開発を進めた。
生徒達に危険がないように、自らがその魔道具の実験体となり、安全制も完璧に確かめた。
そして遂にその魔道具は完成し、いざっ!って時にはすでに手遅れだった.....
おじさんが魔道具の開発で城に籠っている間、フラッとうちの親父が現れ、生徒達に指導をしていたそうのだ。
そうしてバスケとサッカーは、おじさんの理想を他所に、魔改造された超次元球技となっていたのである。
.....親父自身、完全に善意からの行動なので余計にタチが悪い.....
こうして魔改造された2つの球技なのだが、まずはバスケ。
こちらの世界では『リングゲット』と呼ばれているらしい。
大きなルールはバスケとそう変わらない。
しかし、今風の4Q10分に別れているのではなく、昔風に前後半20分で別れている感じだ。
コート上には1チーム5人が入り、それぞれのポジションに別れてプレイする。これも同じだ。
しかし、ここからが大きく違う。
まず、1試合につき1人、計5分間身体強化の魔法を使用できる。
これは親父が『バスケってのは、ゾーンって呼ばれる状態になる事が出来るんだぜ?』っとアホな説明をしたせいである。
制限時間があるのは、『ゾーンってのはな、長時間は続かないんだよ。必殺技みたいなもんだ!』といったからだ。
.....ぶん殴りてぇ.....
そして、ゴール下の特定のエリアでは、相手を攻撃する事が出来る。
文字通りの攻撃だ.....
魔法は使えないので、主に格闘になるのだが、そのエリアでは殴ろうが蹴ろうが許される。
それもう、バスケじゃねぇ~よっ!!
こんな事になっているのも当然あのアホな親父のせいだ。
『いいか?ゴール下は戦場なんだ!どんな事をしてでも自分達のゴールを死守しなくてはならない!』
ってね.....
この親父の発言から、日本でも有名であろう漫画を参考にしやがったって事は分かる。
分かるのだが.....
混ぜるんじゃねぇ~よっ!!片方は超正統派の漫画で片方はバスケって名の超次元スポーツじゃねぇ~かっ!!せめて参考にするならどちらかにしろよっ!!
俺は心の中で大きく叫び、頭を抱え込んでしまった。
「あの.....カズキさん?どこか具合でも悪いのかしら.....?」
「.....大丈夫.....たまにああなる.....でもすぐ元に戻るから心配ない.....」
そんな俺の姿をフローリアさんに心配され、フローラにいつもの事だと説明される。
流石フローラさん。俺の事をよく理解しておいでだ。
そしてサッカーである。
これは『ボールシュート』と呼ばれているみたいだ。
まぁ、慣れないので俺はバスケとサッカーと呼ぶ事にする。
こちらはもう説明されなくてもある程度は予想できた。
日本には、世界のトッププロたちも愛読している超有名サッカー漫画があるし、日本にも子供達から大人気となった超次元サッカーで有名な漫画とアニメがあるのだ。
そしてそれを親父は、サッカーの指南書としてそのまま渡したのだ.....漫画を。
そのおかげで、こちらの世界のサッカーは地球では在り得ない感じの超次元サッカーになってしまっているのだ。
.....ウへへ.....スゴイナー.....
俺は白目を向き、考える事をやめた.....
「ちょっ!?フローラ!?本当に大丈夫なの?何かカズキさん、凄い顔して『ウへへへへッ』って笑ってるわよ!?」
「.....問題ない.....あれはカズキ様の.....常識の許容量を超えた時の顔.....でもすぐに戻るから.....心配ない.....多分.....」
「そ、そうなの?とても大丈夫そうには見えないんだけど.....?」
「.....割とよくある.....あっ.....顔が変わった.....アレは少し落ち着いて.....家に帰りたいって.....思ってる顔.....」
.....フローラ正解。
俺はそんな母子の会話を他所に、1人遠くを見つめ、黄昏れる。
おじさん、やっぱり俺にも親父と母さんのコントロールは無理です.....
この後、フローラとフローリアさんは母子の会話を再開し、俺はなんとも言えない気持ちになりながら放課後までの時間を過ごしていくのであった。




