苦労人の王様
11月は忙しくなって、更新できる機会が減りそうなので、今の内にストックを頑張って書き溜めております。
なんとか忙しい間も更新を止める事なく頑張ろうと思いますが、もし止まったらごめんなさい.....
王族が誰も後を継ぎたがらない。
そんな事は普通に考えてもおかしい。あり得ない事だ。
って思ってたらその原因は俺の両親のせいだったでござる。
俺は今直ぐに逃げ出したい気持ちを抑え、親父の友人でこの国の王でもあるおじさんの言葉を待つ。
「カズキ、この2人が何をやらかしてくれたのか話す前に、少し簡単な説明をしておくぞ。
お前も魔動車って知ってるだろ?車だよ、車。それをこっちで俺がなんとか再現して、似たような乗り物を作ろうとした訳だ。それでその車に使われてる魔石って物があるんだがな、魔石とは魔力を蓄えてる特殊な石でな。この石は魔力を放出する事も出来るし、その逆に魔力を注いでやる事も出来る。
そこで俺はこの放出する力をなんとか動力に変えれないかと考えた訳だ。まぁ、エンジンの代わりだな。なんとか無事に成功して動力に変えられた訳なんだが.....まぁ、そこまで大した力も速度も出なかった訳だ。せいぜい出ても30kmぐらいだな。この放出する力が強ければ強い程、パワーも速度も出る訳なんだが.....
お前の親父のジンがな、ある日唐突にある魔石を持ってきたんだよ.....作ったって言ってな。
その魔石はな、魔力が無尽蔵で、いくら使ってもその魔石の魔力が減らないんだよ.....
そんな魔石を使えば、速度なんてどれぐらい出るのかも分からんし、下手すりゃ吹き飛ぶ可能性もある。おまけにそんな魔石の存在を知られて、もし軍事技術に使われてみろ。いくつもの国が簡単に消し飛ぶぞ!
そんな非常識な物を持ってきて俺にどうしろって言うんだよっ!世界でも制服しろとでも言うのかっ!?
そもそも、そんな物使わなくてもジン1人いれば世界征服なんて簡単だろうがよっ!!」
確かに、そんな扱いに困る物をポンっといきなり渡されても困るよな.....
「それだけじゃない!カズキ!お前はエリクサーって知ってるか?」
「エリクサー?それってゲームとかでもよくある、全回復したりどんな状態異常も治す貴重なアイテムの?」
「そうだ!そのエリクサーで間違ってない。この世界でもエリクサーはとても貴重でな。下手をするとそれ1つで国を傾けかねないほどの物だ。それをこの馬鹿は『なんか知らんけど沢山作れた』って理由で俺に渡してきやがったんだぞっ!?それも何本だと思うっ!?」
「えぇ~っと.....10本ぐらい.....かな?」
「1万本だっ!1万本っ!!そんな事が知れ渡れば、それを狙って四方八方から敵が押し寄せてくるぞっ!?なんだっ!?そんな事になればこの国はすぐに火の海に包まれるぞっ!こんな事軽々しく言える訳ないだろうがっ!そもそも晩御飯の御裾分け気分でそんな物を軽々と持ってくるんじゃねぇ~よっ!!」
たまに何かゴソゴソ作ってるなぁとは思ってたが、まさかそんな非常識な物まで作ってたのかよ.....
今度親父の作った物、チェックしとかないといけないな.....
はぁ~.....なんで俺が.....
「だがな、ジンはまだいい。俺が誰にも漏らさないように気を付ければ最悪は防げるからな。これでもまだマシな方だ。俺の胃は持たんがな.....それよりももっと問題なのがミリアさんだ!」
母さん.....もう聞きたくないんですけど?
「ミリアさんはな.....この国の景観が少し寂しいと言って、エルフの所から世界樹を植え替えやがった.....」
母さぁぁぁぁぁんっ!?何やってんだよっ!!
「何とかすぐに戻してもらったが、下手するとエルフとうちとで全面戦争だ。すぐにエルフ達に謝罪しに行ったさ。俺自身が.....
幸い許してもらう事はできたが、俺はエルフ達から『あの.....大変ですね?頑張ってください』とかって物凄く可哀想な者を見る目で見られたんだぞっ!いいかっ!?これと似たような事を、この2人は何度も!何度もっ!何度もっ!!起こしてくれてるんだぞっ!おかげで俺の胃に穴は空くし、その度にジンから貰ったエリクサーを飲んでるんだぞっ!?そんな俺の姿を身近で見てた子供たちが、俺の後を継いで王になりたがる訳ないだろうっ!?」
「おお~、俺の作ったエリクサーが活躍してるようでなによりだ!」
「やかましいわっ!」
うっうっうっ.....おじさん.....なんて不憫な.....なんか目から汗が出てきやがるぜ。
あと、親父はもう少し反省しろよ.....
「だからカズキ!この2人の扱いにも慣れているお前は俺の後は継ぐに相応しいと思わんか?んっ?いや、お前以外務まらないだろう?これほど相応しい人物はカズキ!お前しかいないっ!」
おっと、矛先がこっちに向いてきたぞ。
「ハハハ、何を仰いますやら。俺にもこの2人のコントロールは出来ると思ってませんし?それに国のトップになって運営なんて.....俺にそんな能力はありませんよ。HAHAHA」
「いやいや、何も完璧に制御する必要はないんだ。ある程度出来るってのが重要なんだよ。それに国の運営も心配するな!その辺はこっちもフォローしてやる」
「いやいやいや.....絶対に断る!」
「まぁまぁまぁ.....絶対に逃がさんっ!」
ガシッと俺の肩を両腕で力強く掴むおじさんと、それを必死で振り払おうとする俺。
ぐぬぬ.....馬鹿力め.....
こうしてしばらく俺とおじさんは睨み合っていたのだが決着は付かず、とりあえずこの話はひとまず置いておく事になった。
俺はメイドさんの淹れてくれたお茶を口に含みながらおじさんに聞く。
「そういや、さっき色々喋ってたけど大丈夫なの?普通に兵士さんも側にいるけど.....」
俺はそう言いながらチラリと壁際に立っている3人の兵士を見る。
「ん?ああ、こいつらは大丈夫だ。おっと、紹介が遅れたな。真ん中の奴がガイン、騎士団の団長をやっている。その右にいるのがグリーエン、近衛の隊長だな。1番左の奴はビッグズ、魔法兵団の団長だ」
そうおじさんから紹介され、3人は揃って頭を下げた。
「まぁ、この3人だけじゃなくて、この城で働いている奴やうちの兵達は心配いらんぞ?全員一度は、俺が直接この目で見て雇っているからな」
んん?何かおかしくないか?王であるおじさんがわざわざ人を雇うのに直接見るって.....
しかも全員.....普通はそんな事はしない。
権限のある部下に任せるだろう。って事は.....
「おじさんが直接その人を見たら、何か分かるって事?」
「ほぼ正解だ。俺がこっちにきてから授かった能力なんだがな、そいつが嘘を吐いているかとか、こちらに害意を持っているか、裏切るかどうか、悪人か否か、とかまぁ、色々分かる訳だ。なんで分かるのか聞かれても俺も分からん。分かるから分かるとしか言いようがないからな。まぁ、そのおかげでこの城の奴らや兵達は問題ない。コネで雇うのは禁止してあるし、どんな奴でも必ず俺が一目見る事になってる。まぁ、兵士とかは人数が多いからな、複数人にまとめて見るが、それでも問題ないしな」
おおー、なんかチートっぽい能力だな。
あれか?チートの定番の鑑定みたいなもんか??
「まぁ、ただ.....流石に国中は無理だ。残念ながらこの国にも犯罪はあるし、差別意識を持った者や人を迫害するような奴もいる。他国に比べるとかなり少ない方なんだがな。当然、他国からの間者なんかも街にはいる。うちの技術を真似てきてる国も出て来てるしな。まっ、その辺りは公開しても問題ない物しかないから平気なんだけどな!そういったヤバい物は、全部この城の地下で研究されてるからな」
「いや、普通に強行突破とかで侵入して狙ってくる奴もいるんじゃない?」
「それこそ問題ない。うちの国がそっちから少量を仕入れてるのは知ってるか?うちの国民に流す物は全部、あの非常識な強化されるっつー事のない物なんだが、うちの城にいる奴らは違う。そのおかげでうちの兵達は強いぞ~?そこいらの賊なんざ話にもならんぐらいにな」
「いやいや、その人達からその食材が流れたりとか普通に危険なんじゃ?」
「それは大丈夫だ。使い切るように厳命もしてるし、なにより、まぁ、これが1番の理由なんだが、こいつら全員、敬虔なミリアーナ教の信者だぞ?」
うへぇ.....なにそのあんまり関わり合いになりたくないような宗教.....
「ハハハッ!カズキは近すぎるからあんまりピンとこないんだろうがな、ミリアさんは間違いなく神だ。考えてもみろ、自分達を救ってくれた地を作り、豊富な食材で植える事もない、おまけに空に浮く巨大な大地を作り出す。まさに神の力以外の何物でもないだろう?それにうちの国民達は、元々難民や他所から虐げられたり追い出されたりして来た者が多い。そんな自分達に安住の地を授けてくれた神の不利益になるような事は、こいつらは死んでもしないと思うぞ?」
おじさんがそう言うと、一人の兵士が口を開いた。
たしか.....ガインさんだっけ?
「陛下の仰る通りです。私も小さい頃に住んでいた街をジーポーン帝国に攻め込まれ、父と母に連れられ、この地まで逃げて参りました。ミリア様やジン様、陛下のおかげで両親を職に就け、私も学校という場所で学ぶ機会を頂けました。夜に凍えるの事の無い寝床に、お腹いっぱい食事も出来、我々にとってはまさに楽園と呼べるべき場所でしょう。そんな場所を用意してくださったミリア様を、祈り崇めるのは当然の事かと。我々は例えこの命を失おうともミリア様やジン様、そしてこの国の不利益になるような事は致しませんとも!」
ガインさんはなにやら物凄く熱の入った口調で俺に説明してくれる。
いや、確かにやってる事は凄くいい事だとは思うんだけどさ.....
思うんだけど.....母さんに祈るねぇ.....
普段が普段だから、妙に納得できないと言うか.....
「おっ?その顔は納得いかないって顔だな?ワハハ!まぁ、納得しようがしまいが大丈夫だって事だ!そういうもんだとでも思っておけ!」
そうおじさんに言われ、笑われた。
まぁ、確かに俺がどう思おうが変わらんか.....
「え~っと、何の話してたっけ?」
俺は母さんが信仰されてるとか驚きの情報を聞いて、頭が少し真っ白になってしまっていた。
「うちの連中は強いし信頼できるぞって話だな!聞いただけでは中々信じられんのも分かるが、そこは自身の目で見て納得しろ!」
「わかった」
確かに自分の目で見てみないとな。
「その話はここまでにするとして、カズキ。お前、冒険者になるんだって?」
「え?うん、この世界を色々見て周りたいから、都合がいいかなぁって思って」
「その気持ちはよく分かるな。やっぱ日本人でその手のゲームとか漫画が好きな奴なら憧れるよな!俺もジンと色々旅をして、そりゃもうワクワクしたもんだ!旅はいいぞ~?」
「おおっ!やっぱそうだよねっ!まぁ、ついでに俺の出来る範囲で、困ってる人とかを助けられたらいいなぁっとも思ってるよ」
「そりゃ立派な心掛けだが、世の中にはどうしても助けられない事ってのもある。冷たいようだがな.....だから無理はするなよ?」
「ありがとう、それは理解してるつもりだよ。あくまでも俺に出来る範囲でって事だから」
「分かってるならそれでいい。じゃあ、どうする?早速登録にでも行くか?流石に今から行くと昼を過ぎちまうからな。昼飯の後にでも行くなら案内を付けてやるよ。まぁ.....ネルがいるから必要ないかもしれんが、終わって時間でもあればそのまま案内させてもいいしな」
「ありがとう、じゃあご飯食べたら登録しに行こうかな。案内の人には悪いけど、少し付き合ってもらおうかな」
俺はおじさんの心遣いにお礼を言い、案内の人に付いてきてもらう事にした。
街の事とか色々と聞きたいしね。
さぁ、いよいよ冒険者ギルドだ!楽しみでワクワクしてくるな!
こうして俺は、流行る気持ちを抑え、お城で用意された食事を頂く事にしたのだった。




