ラナード王国
あれから1週間後、俺は今ラナード王国へ向かう為に屋敷のある部屋にいた。
「はぁ~、コレが『ゲート』ね~」
俺の目の前には、高さ3m横幅5mぐらいの四角い鏡のような物が複数あった。
なんか思ってたのと違う。
もっと人が1人通れるぐらいのこじんまりとした魔法的な物を思い浮かべていたんだが、想像よりかなりデカい。
鏡の部分をよく見れば、うっすらと光って見え辛いが、なんとなく別の景色が見えるから多分これがゲートで間違いないはず。
ゲートは全部で4つあり、これがそれぞれの町とラナード王国に繋がっているんだろう。
「うちから繋がってるゲートは全部各町の責任者の屋敷に繋がっててな、んでこっちがラナード王国の王城に繋がってるやつな」
親父がそう言いながら、ゲートの1つをポンポンと叩いている。
「いやいや、王城とかってそれ大丈夫なのか?ってか防犯とか大丈夫なのか?ここの部屋ってうちの屋敷から少し離れた場所にある割には見張りみたいな人とかいなかった気がするんだけど?」
「ん?ああ、向こうからこっちに来れる奴は制限してるしな。各町の責任者かそいつらと一緒なら通れるようにしてるぞ。あっ、カイエンは通れるようにしてあるからな。よくここ使ってるぞ?ラナード王国はタカシだけだな。昔はよく家族を連れてちょくちょくは来てたんだけどなぁ、ここ数年は忙しいのかさっぱり来なくなったな。まぁ、変わりに俺が向こうに行ってるけどな」
なるほどね、こっちは自由だけど相手には制限があるのね。便利だな。
あと、カイエンが頻繁に来れる理由はソレか.....
今更だけど、あいつ少し自由過ぎない?いい加減ソウカにおしおきされるんじゃないか?
俺は少し自由人な友人を心配するが、すぐに切り替える。
「じゃあそこを通ればすぐにラナード王国に行けるんだな?」
「おうっ!んじゃ、まぁ、さっそく行くか」
親父の号令で俺達はゲートを通る。
ちなみに向かうメンバーは親父と母さんと俺の他に、嫁さんズ5人だ。
アリアは親父と母さんの代わりにこっちで留守番のようだ。
俺は恐る恐るゲートに足を踏み込む。
おお、なんか変な気分だな。
振れた部分は波打つのだが、触れている感触はしない。
不思議な感触に驚きながらゲートを通ると、そこは少し広い部屋だった。
部屋の内装はやけに豪華なのだが窓が無い。
あるのは扉が1つだけだ。
「おう、今呼ぶから少しこの部屋で待機だ。あの扉は向こうから鍵が掛かってるからな。開けてくれるまではここで待つ事になってるんだよ」
親父はそう言うと、うちの屋敷にもある呼び出しの魔道具にも似た道具のボタンを押す。
なるほど、こっちが制限かけてるように、向こうもこっちが好きに出入り出来ないようにしてるのか。
まぁ、当然だろうな。しかもここ、王城って聞いてたし.....
しばらくの間、部屋でくつろいでいると、扉からガチャガチャと鍵を外している音が聞こえてきた。
その音はすぐに止むと扉が開き、1人の男性が兵士らしき人を従えて部屋に入ってきた。
「お待たせしました。ジン様、ミリア様、お久しぶりです。お元気そうでなによりです。そちらの方がカズキ様かな?初めまして、私はこの国の第1王子で今は父の補佐をしております、ヒロキ・タナカ・ラナードと申します。お話はお2人に伺っております。どうか仲良くしてやってくださいね」
まさに金髪の王子様といったイケメンな男性がそう言って俺に自己紹介をしてきた。
俺は慌てて返事を返す。
「ご丁寧な挨拶ありがとうございます。お、私は2人の息子で神代和希、こちら風で言えばカズキ・カミシロと申します。こちらこそ以後よろしくお願い致します」
俺は精一杯失礼のないように返す。
いや、こちら風の礼儀なんて知らないけどもさ.....
「アハハ、もっと砕けた感じで普通に話してくれて構いませんよ。ジン様と父の会話なんて遠慮がありませんからね。私も少し砕けた感じで話をさせてもらうね。カズキと呼ばせてもらってもいいかい?私の事も気軽にヒロキと呼んでくれて構わないよ」」
あぁ、親父だからね。きっと普段通りの感じなんだろうね.....
「ええ、もちろん構いませんよ。ヒロキ様は――」
「待った!様はいらない!私の友人達も普通にヒロキって呼んでるからね。流石に公式の場では難しいけど、それ以外なら友人達のように呼んで欲しい」
俺に言葉を遮り、ヒロキ様はそんな事を言ってくる。
本人にそこまで言われれば、逆に様を付ける方が失礼か?でもいきなり呼び捨てはハードル高くないですか?初対面ですよ?
「ありがとうございます。でも流石にいきなり呼び捨ては難しいので、ヒロキさんで勘弁してください」
「ふむ.....あまり無理強いも良くないしね。分かった!今はそれで良しとしておこう!」
『今は』なんですね.....出来ればこれで許してくれないかなぁ.....
「話を遮ってしまってすまなかったね。それで?何を言いかけたのかな?」
ヒロキさんはそう言って俺に続きを促してくる。
「いえ、別に大した事ではないんですけど、ヒロキさんは第1王子で今は陛下の補佐って事は、次期国王陛下って事ですよね?そんな偉い人が迎えなんていいのかなぁって思いまして.....」
「ああ、そんな事は全然問題ないよ。ジン様とミリア様は父の大事な友人でもあり、我が国にとってもとても大事な御方達だ。それに王位継承も本来は辞退したかったんだけどね.......チッ、あいつらめ、結託してから俺に押し付けやがって、覚えてやがれ、俺が王位に付いたら死ぬほど仕事回してやるからな」
ヒロキさんは苦笑いしながら大した事ではないと言う。
最後の方はなんか小声過ぎて聞き取れなかったけど.....
なんか少し黒い顔でクックっクッて笑ってるような気がするけど気のせいだよね?
やっぱり王族とか次期国王とかって俺の想像も付かないぐらい大変なんだろうな。
「あっ、そうだ!良かったら妹を紹介しよう!なんならそのままカズキが王位に付いてくれてもいいぞ?」
なんでだよっ!なんでいきなりそんな話になるんだよっ!
「いえ、もう結婚してますんでその話はお断りします。あっ、紹介します。私の後ろにいるのが私の妻達で、右から順にリロロ、ミラーカ、フローラ、シャルミナ、ネルと申します」
俺が嫁さんズを紹介するとヒロキさんは何やら驚いて固まっていた。
どうしたんだろう?俺がそう思っていると突然ヒロキさんは大声を出す。
「シャルミナ先生っ!ご結婚されたんですか!?おめでとうございますっ!」
「うむ、久しいの。ヒロ坊も元気にしておったかや?ちゃんと精進しておるか?」
「はいっ!先生の教えを胸に今も精進を続けております!」
「うむ、良い事じゃ」
どうやら2人は知り合いらしい。
「ふむ、ジン様とミリア様もご子息でシャルミナ先生の旦那様.....カズキ様と呼ぶべきだろうか.....」
「いやっ!カズキでいいですっ!様とかいらないですからっ!いいですね?絶対に様を付けてはいけませんよ?絶対ですよ?振りとかじゃないですからねっ!?ねっ!」
何やら恐ろしい事をブツブツと呟くヒロキさんを必死で止める。
王族、しかも次期国王に様付けで呼ばれる。そんな恐ろしい事絶対にやめて欲しい.....
「え~っと、話の流れからすると、2人は子弟関係みたいなものなのかな?」
俺はシャルミナに訊ねてみた。
「うむ、昔はよく上にタカシ陛下と来ておったからの。その時にちくとばかり面倒をみておったのじゃ」
「ええ、そうです。シャルミナ先生にはよく指導をしてもらいましたよ。時には優しく、時には厳しく、時にはもっと厳しく、時には更に厳しく、時にはさらにもっと厳しくといった感じでお世話になりましたよ」
なるほどね、余程厳しかったってのは物凄く伝わってきたよ。
だって4回も強調して言ってるからね.....
「しかし、シャルミナが厳しいって珍しいね?そんなイメージは全然ないんだけど?」
シャルミナは普段、とても優しい。
教え方も丁寧だし、教えてもらってる屋敷の皆からも慕われていたはずだ。
「アハハ、まぁ、なんと言うか....私も昔は悪ガキでしてね。その、まぁ、王族である事を鼻にかけていた訳なんですよ.....」
「うむ、それでタカシ陛下からお願いされての。厳しくてもいいから矯正してやっておくれとの。それで厳しく指導をした訳じゃ。まぁ、今ではこんなに立派になって、妾も誇らしいわい」
「いえいえ、私なんてまだまだ未熟ですよ。ですが先生の指導があってこそ今があると思っておりますので.....」
ああ、なるほどね。そんな事があった訳ね。
俺が1人で納得しているとヒロキさんは話を戻す。
「それで.....さっきの続きなんだけどうちの妹は兄の私が言うのもなんだが、可愛いし胸も大きいし何よりも強いよ?どうだい?悪くないだろう?」
いやいや、さっき断ったばかりですけど?
てか強いって情報いる?
「いえ、私には可愛い妻が5人もいますからね。これ以上は増やすつもりはありませんよ」
こういうのはキッパリと断らないとな。
ズルズルと引き延ばして気が付いたら嫁が増えている。
そんな物語でよくあるような展開には絶対にさせないぞ!
ってか嫁がこれ以上増えたら身が持たない.....夜の意味で.....
だからそれだけは絶対に阻止せねば!
俺がハッキリと断るとヒロキさんは少しガッカリしたような感じで
「そうかい?まぁ、無理強いはよくないね.....まぁ、気が向いたら是非娶ってやって欲しい。そしてついでに王位を次いで欲しい」
何かよく分からんが、王様になりたくないって気持ちだけは伝わってきた。
そしてこの感じ.....まだ諦めてないな?隙あらば妹を送り込んでくるつもりだな?
ふふふ、甘い甘い。絶対に増やさないぞ。
そんなやり取りをヒロキさんとしていると、ヒロキさんはハッと何かに気が付いたような表情になる。
「申し訳ありません。つい話込んでしまい、皆さんをお待たせしてしまいました。大変失礼致しました」
そう言って頭を下げる。
いやいやいや、王族ってそんな簡単に頭を下げたらダメなんじゃないの?後ろに兵士さん達もいるんだよ?
俺が内心驚いていると
「まぁ、気にすんなっ!今後もうちの息子と仲良くしてやってくれ!」
「ええ~、私達は全然気にしてないわ~、私のカズちゃんと仲良くしてあげてね~」
親父と母さんは軽い調子で全然気にしていないと伝える。
「ええ、もちろんです。こちらからも是非お願いしたいぐらいですよ。では、どうぞ皆さまこちらへ!父の部屋でご案内致します」
そう言って歩き出したヒロキ様の後を追って、俺達も歩きだした。
あっ、荷物は大丈夫です。ええ、はい。ありがとうございます。
荷物をお預かりしますと言ってくれた兵士さんにお礼を言うと、俺もヒロキさんの背を追いかける。
タカシ陛下.....親父の友人か.....どんな人なんだろう?
俺は少し、ワクワクしながら歩いていった。
~キャラ設定メモ⑫~
本名:田中隆
種族:人族
性別:男
身長・体重:173cm・70kg
年齢:45歳
好きな食べ物:ラーメン・たこ焼き
嫌いな食べ物:小骨の多い魚類
戦闘スタイル:後衛サポートタイプ
容姿:黒髪黒目の日本人顔。飛びぬけたイケメンではないが容姿は良い。
性格・その他:ノリが良くて明るい性格。ジンとミリアによく振り回されて苦労をしてきた苦労人。
ジンと一緒に召喚されてしまったジンの幼馴染で親友。
ジン達と助けた人達の中でジンが上に連れていかなかった人達は人族が多く、差別意識を持っている者も少なくなかった。しかし悪人ではないからと見捨てられずに受け皿的な場所として面倒をみていたのが始まりだが、気が付けば国となり王となっていた。
なんとか地球の文明を再現させようと頑張っており、ジンの屋敷以外で使われている魔道具のほとんどは実はこの国で作られた物である。
地球に未練はなく、帰らずにこの世界に留まる事を選択した人物で、奥さんの数は15人と多く、子供も多い。
悩みは子供たちが自分の後を継ぎたがらない事なのだが、これはいつもジンとミリアに振り回されて苦労しているタカシの姿を子供たちがみていたからである。
誤字脱字報告ありがとうございます。
読んで下さってる方、応援して下さってる方、いつも本当にありがとうございます。




