閑話-アリアエルの指導
アリアさんとミラーカの訓練時のお話です。
「その調子です。そのまま維持し続けなさい」
「ぐうぅぅ.....」
今、私の目の前ではミラーカが自身の影を触手のように伸ばし、その先に氷の塊を出現させて維持している。
余程辛いのか、歯を食いしばり、額からは大粒の汗が流れている。
「氷が少し小さくなってますよ?一定に保ちなさい」
「ぐぐぐっ.....もうダメ.....限界っ!」
ミラーカの魔法は解かれ、横になったミラーカはゼーハーと息を荒げる。
「1時間と40分ぐらですか。まだまだ足りませんね」
私の言葉に返す余裕はないのか、ミラーカは肩で息をしたまま視線だけをこちらに向ける。
「いいですか?貴女はもっと自信の持つ特性を生かすべきなのです。本来であれば貴女は血を自分の手足の延長のように操れるはずです。ですが今の貴女は多少の形態変化と操作が出来るぐらいです。これでは全然貴女の特性を生かし切れていません」
そう。本来ヴァンパイア族であるミラーカは血をもっと自在に操れるはずです。
形や硬さ等は当然として、自分の手の変わりにその先に魔法を発動させるなんて事も出来るはず。
しかしミラーカはその種族の特性である血の操作の練度はかなり低い。
「.....だって、痛いの嫌なんだもん.....」
少し回復してきたのか、ミラーカは少し拗ねた感じで答える。
ミラーカの血の操作の能力が中々向上しない理由がコレだ。
血を戦闘で使おうと思うと、割と多くの血が必要になる。
その為には自身の身体をそこそこ深く傷付ける必要があるのだが.....
ミラーカはそれを嫌う。
戦闘で傷付き、血が流れたら使うのだが、自らを傷付けてまで血を使おうとはしない。
だから血を使う行為が極端に少ないだ。
仕方のない子ですね.....私は小さくクスリと笑う。
「ええ、だから特性の近い影魔法を使って練習しているのです」
私も可愛い妹でもあるミラーカに自傷行為を無理強いするつもりはありませんしね。
「それとも.....諦めますか?」
「ぐっ.....諦めないよっ!次こそは絶対にチャンピオンに勝ってみせるんだっ!」
「ふふっ、その気迫があれば大丈夫そうですね」
まぁ、実はその相手は私なのですが。
ミラーカには申し訳ないですが、まだまだ負けてあげるつもりはありませんからね。
しかし、先日の試合では1本取られてしまったのも事実です。
カズキ様が私を応援してくれなかったショックで3秒も気絶してしまったとはいえ、1本は1本ですからね。
そこは素直に可愛い妹の成長を喜びましょう。
問題はカズキ様です。
カズキ様は私の正体に気が付いていたはず。
なのに私の応援はせずにミラーカだけ応援するとは.....
そこは二人を応援するべきでしょう。
あの後戻ってきたカズキ様に、少し非難を込めた視線を送りましたが無視されてしまいました。
最近カズキ様は少し私に冷たいように感じます。
ハッ!?もしやこれが反抗期というやつでは?
なるほど、であるならば仕方のない事なのかもしれませんね。
最近は私と模擬戦をしてくれる機会も減っているのでとても残念です。
あぁ、カズキ様の攻撃を身体で受け、その成長を実感するという至福の時をまた味わいたいものです。
ふむ、その威力をハッキリと受ける為に、今度は防御を極端に下げて受けてみるのも良さそうですね。
一体どれ程の痛みと快感.....成長の大きさを感じ取れるのか楽しみですね。
あぁ.....想像しただけで身体の奥底から熱くなってきます.....
「.....アリア様、何考えてるの?身体をくねくねさせてなんか少し気持ち悪い顔してるよ?」
ハッ!?いけないいけない、危うく姉としての威厳を落としてしまう所でした。
そんなミラーカの言葉に我に返った私は、咳払いをして誤魔化すように言う。
「んんっ!なんでもありません。それよりも続きを始めますよ?休憩は十分に取れたでしょ?」
私がそう言うと、ミラーカは素直に立ち上がり練習を再開した。
この子なら、いつかきっと私の位置まで上り詰めるでしょう。
私はそう思いながら、頑張る妹の姿を眺めていた。
お待たせしました。次の話から2章に入ります。
誤字脱字報告ありがとうございます。
読んでくれている方、応援してくれている方、いつもありがとうございます。




