閑話-とある店主の日常
ファンタスに店を構える鼬獣人の店主のお話です。
モブキャラなんですけどね....
俺の名はオコジ。
今はジン様とミリア様の管理されている上と呼ばれる浮遊大陸にあるファンタスの町で雑貨店を営んでいる鼬系獣人の男だ。
俺も昔は地上にある、鼬獣人で纏まった村で平凡に暮らしていた。
そこで妻のイズナと結婚して、子供まで授かれたのだ。
しかし、生まれた子は俺達とは違い、一部を除いて人族に近い容姿をしていたのだ。
俺の娘は村では呪い子やら半端者などと呼ばれ、その親である俺と妻まで迫害されていた。
俺と妻は当然、娘を守ろうと必死で抗ったさ。
抗ったけど、無理だった......
俺達家族は村を追い出された。
途方もなく森を彷徨っていると突然、巨大な美しい銀色の毛をした狼の群れに囲まれたのだ。
俺はそのあまりにも神々しい姿に、伝説のフェンリル様であると悟った。
そして、俺達家族の命はここで終わるのだと.....
そんな時だった。
「こんな森の奥で何やってんだ?魔物も出るし危ないぞ?迷子か?街へ向かうなら逆方向だぞ?」
そう言いながらフェンリル達の足元をかき分けながら一人の男がこちらへ近づいて来た。
ジン様だった。
ジン様はどうやらテイムしているフェンリル達の散歩にこの森までやって来たんだそうだ。
俺は村を追い出された事、この先どこへ向かったらいいかも分からない事を何故か初対面であるジン様に話してたんだ。
きっとジン様の雰囲気のせいなのかもしれない。
そんな話を聞いたジン様は
「ならうちに来ればいい。似たような境遇の奴も沢山いるしな」
と笑いながら俺達家族を温かく迎え入れてくれた。
そうしてここに連れてきてもらえたが、初めは驚きの連続だった。
ここに来た者は、まず学校という場所で色々学ぶ必要があるのだそうだが、俺達にはまだ小さい娘がいた為に中々その時間を作るのが難しい。
そうしたらわざわざジン様は乳母を用意してくれたのだ。
貴族でもない、ただの平民の為にだ。
俺と妻は、それに甘えさせてもらい娘を預けている間に必死に学んだ。
しかし残念ながら俺も妻も全然強くはなれなかった。
ここの食材は強さを引き上げてくれるらしいのだが、俺も妻もすぐに頭打ちになってしまったのだ。
多少は前より強くはなったが、ジン様の屋敷で仕事をしている人達のような強さにはなれなかった。
だから俺も妻も勉強の方を必死で頑張ったのだ。
そのおかげか僅か2年で卒業する事が出来た。
今ではこうやって雑貨店を営んでいる。
うちの店では学校で使う物を主に扱っている。
俺が過去を懐かしんで振り返っている時、店のドアに取り付けられた鐘がカランカランッと音を鳴らした。
「お父さん、ただいまー」
娘のフェレが学校から帰ってきたらしい。
フェレも大きくなり、今年から学校に通っている。
「おかえり、フェレ。ん?後ろにいるのはお友達かい?」
フェレが店に入ると、その後ろからすぐにフェレと同年代の獣人族の娘さん達が2人入ってきた。
彼女達もフェレのように人族に近い容姿をしている。
「うん!同じクラスのポポちゃんとココちゃん!」
「そうか、そうか。うちの娘がいつも世話になってるね。これからもフェレと仲良くしてあげてね」
「は、はい。こちらこそフェレちゃんには仲良くしてもらってます!」
「そ、そうです!フェレちゃんは明るくてクラスでも人気者なんですよ!」
「もーっ!2人共!恥ずかしいからそういう事はお父さんに言わなくていいからっ!お父さん!明日学校で使う物があるから少し2人と店を見て回るね!」
「そうかい?何か必要ならお父さんが準備するよ?」
「いいのっ!3人で相談しながら探すんだから、お父さんは見ててっ!」
そんな娘の言葉は受け、俺はクスリと笑う。
俺は楽しそうに商品を物色する娘たちの姿を眺める。
3人はとても楽しそうに笑い、その姿はとても幸せそうだ。
そんな3人の姿に俺の心もじんわりと温かくなっていく。
きっと彼女達もここに来るまでに色々と苦労したのであろう.....
でも今はそんな事なんて微塵も感じさせないような笑顔を浮かべている。
ここに来るまでは、こんなに幸せな光景なんて想像も出来なかった。
ただ村を追い出され、行く当てもなく彷徨い、運よく街にたどり着けても物凄く苦労しただろう。
俺は、ジン様とミリア様に言葉では言い表せない程感謝している。
いや、きっと俺だけじゃなく、ここに住んでいる皆だろう。
俺は心の中でジン様とミリア様に祈りをささげながら、娘たちの楽しそうな姿を目に焼き付けていった。
どうかこの幸せが、この先も続きますように....
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いつも読んで下さってる方、ありがとうございます。




