そしてこれからも
少し酔いを醒ます為バルコニーへ出た俺は、ググッと一つ伸びをする。
う~ん、風が気持ちいい。
そんな中ふと上を見上げれば、綺麗な星空が俺の目に入ってくる。
「おお~、凄いな.....やっぱ地上より高い分、綺麗に見えるのかね?」
俺は思わず口からそんな事が漏れた。
そうだ!....よっと。
俺は屋根の上へ飛び乗りマジックボックスの魔法を発動させて、中から少し大きなクッションを取り出した。
こ~いう時は魔法って便利だよなぁ~。
俺はそんな事を思いながら、そのままクッションにボフッと飛び込み横になると、そのまま空を眺める。
空には無数に輝く星々と、大きな月と小さな月が寄り添うように浮かんでいた。
俺は少しの間、そんな夜空をボーっと眺める。
こうやって地球ではありえない景色を見せられると、やはりここは異世界なんだなぁと思い知らされる。
しばらくすると、不意に地球で生活していた頃の事が頭を過った。
.....皆、元気にやっているのだろうか.....
「.....カズちゃん.....」
俺は声に驚き、ガバッと身体を起こし顔を向けると、そこには親父と母さんが立っていた。
何やら少し気まずそうな、悲しそうなそんな表情をしている気がする。
なんだ?
一体どうしたんだろうと内心首を傾けていると、2人はバツが悪そうに言ってくる。
「あぁ~、その、なんだ?カズキは.....その、日本に帰りたいとか.....思うか?」
「カズちゃんは、その.....ママ達の事を、恨んでない?」
どうやら俺が日本にいた頃の事を考えていたのを悟られたらしい。
よく見ると、2人の身体は少し震えていた。
きっと2人は怖いのだ。
俺が日本に帰れない事を嘆いて傷付いていないかが。
それで罵声や恨み辛みが、俺の口から2人に向けて吐き出されてしまう事が。
そんな事、ある訳ないのに.....
2人は必死でなんでもないように装ってるつもりみたいだが、俺は息子だぞ?
全く.....何年親子やってると思ってるんんだよ。仕方ねぇ~な.....
「そりゃ心残りは当然ある」
俺の言葉に2人は小さくビクッと反応する。
でも、俺は知っている。
俺が日本を離れる原因は自分だと、自分を責め涙する母さんの姿を。
「友達に別れとかも告げられなかったしな」
俺は知っている。
俺の気が少しでも紛れるようにと、いつも以上に馬鹿やってくれる親父を。
「会社の人達にも迷惑掛けちゃったかなぁとかも思う」
俺は知っている。
日本との環境の違いのせいで俺が不便しないようにと、少しでも日本での生活に近づけるようにと頑張ってくれているのを。
.....いや、少しやりすぎで明らかに日本を超えてる部分も多いんだけど.....
「後、ネット環境がないから調べものがめんどくせ~って思う事も多いし」
俺は知っている。
小さい頃からずっと、2人がどれだけ俺の事を愛してくれているかを。
「だけど、まぁ.....思うだけで特に帰りたいとかは思ってないし、別に2人の事を恨んだりなんてしてないかな」
だから俺は2人に伝える。
「俺は2人の息子で心の底から良かったって思ってるよ。父さん...母さん...俺を産んでくれて、ありがとう.....」
こんな事、普段なら恥ずかしくてとても言えたもんじゃない。
酒だ、酒のせいって事にしておこう。
「....カズぢゃん!」
俺のそんな言葉に反応して、親父は後ろを向き肩を震わせており、母さんは胸に飛び込んで来た。
泣きじゃくる母さんをあやすように背中をポンポンと優しく叩く。
しばらくして落ち着いた母さんが俺に優しく語り掛ける。
「カズちゃん、この世界で夢や目標、やりたい事が出来たらママに教えてね?私達は全力でソレを応援するわ.....」
やりたい事かぁ~.....実はある程度は決まってるんだよな.....
今度話してみるか?
俺はそんな事を考えながら、この世界にきた頃からの出来事を思い出す。
最初はただ困惑してただけだ。
でも友達も出来たし俺を慕ってくれる人達がいて結婚までできた。
魔法は使ったり覚えたりする事はとても楽しいし、今は毎日が充実している。
色々な事があり、本当に驚いた。
そう、本当に色々な.....色々.....イロイロ.....なんか思い出したら少し腹が立ってきたな.....
「.....なぁ、2人共?」
俺の身体から溢れる怒気に、母さんはササっと距離を取る。
相変わらずこんな時の感はいい.....
「カ、カズちゃん?そんな怖い顔してどうしたの~?ママは笑顔の素敵なカズちゃんが好きだな~。なんて~.....」
「そ、そうだぞ?男は小さい事は気にせずに、ドーンと構えておくもんだぞ?な?」
そう言い、少し焦りながらジリジリと後ずさる2人。
「いやな、いい加減2人にはOHANASHIしておこうと思ってな。俺には許されると思うんだよ?なぁ?」
俺は2人との距離を少しづつ詰める。
HAHAHA!そんな目で見ても駄目デース!お説教デース!
「いい機会だ、今夜はじっくりと親子で話し合うじゃないか!」
俺がそう言うと、2人は背を向けダッシュで逃げていく。
俺はその以外な行動に一瞬目を丸くするがすぐに我に返り、クスリと小さく笑う。
「待ちやがれっ!今日という今日は絶対に説教するからなっ!覚悟しやがれっ!!」
俺はそう叫びながら、2人の背中を追いかけて走り出したのであった。
突然始まったこの異世界ミーアゼルクでの俺の生活ライフは、まだまだこれからも続いていくだろう。
焦る事はない、とりあえずゆっくりのんびりと生きていこうと思う。
この先もきっと色々な事があると思うけど、皆と一緒なら楽しいはずだって信じられるから.....
これで1章は終わりです。
ここまで読んでくださった方、ありがとうございます。
次の2章からは地上での活動がメインになってくると思いますが、その前に閑話をいくつか挟もうかなぁと思っています。
誤字脱字報告ありがとうございます。
読んでくれている方、応援してくださってる方、これからもどうかよろしくお願い致します。




