おいでませ!ビークンの町へ②
俺達は今、ゴブロウの案内の元、牧場へ来ていた。
.....牧場へ来ていた.....はずなんだけど.....
「ねぇ.....コレなに?」
俺の目の前には、何処かの巨大な刑務所かと思わせるような大きな塀が建っていた。
巨大な塀は高さ5mぐらいはあり、左右に広がっていてその先は見えない。
少しずつ内側に向かって伸びていっている感じからすると、この塀で囲まれた中に牧場があるんだろうとは思うけど、何か広すぎるんじゃない?
「塀でございます」
俺の呟きにゴブロウが答えてくれる。
「いや、そういう事じゃ.....いえ、いいです.....」
違うんだよ、なんで牧場なのにこんな刑務所みたいになってるのかが気になるんだよ.....
普通、牧場っていったら広々と草原が広がっていて、もっと開放的な場所なんじゃないの?
いや、なんかもういいや.....俺は諦めた。
俺達はそのまま、塀に取り付けられた立派な巨大な門をくぐり、中を目指して進んでいく。
この門なんなの?デカすぎない?牧場にこんな立派な門とかいるの?
いや、もう、本当.....どこからツッコんでいいのか分からないよ.....
門を潜り抜け、ようやく見えた牧場の様子に俺は固まる。
.....ソウカー.....ソウキタカー.....ハハハハハ.....
もはや乾いた笑いしか出てこない。
「.....アレはなに?」
「牛っす」
「牛ですね」
「.....じゃあアレは?」
「.....山羊.....」
「山羊だよ?」
「.....あの奥のモコモコの山は?」
「あれは羊達ですな」
牛だと教えてくれるネルとリロロ、山羊だと教えてくれるフローラとミラーカ。
羊の群れだと教えてくれるゴブロウ。
ありがとう.....でもね、そうじゃないんだよ。
「んなもん見りゃわかるわいっ!俺が言いたいのは、なんであんなにデカいんだ?って事だよっ!どう見ても俺の知ってる牛と山羊じゃないぞ!?大きさとか明らかに5倍ぐらいあるんですけど!?あの巨大なモコモコの山が羊の群れ!?何それっ!めっちゃダイブしたいよっ!ってか飛び込ませろよっ!」
遂に俺は我慢しきれずに大声でツッコんでしまった。
最後のはただの願望だけど.....
そんな憤慨する俺に、ネルがポンっと肩に手置く。
「カズキ様.....何事も慣れっす。慣れ.....」
そんな事を言ってくるネルの顔は物凄く慈愛に満ちていた。
他の3人もまるで、そこは私達も通った道ですよ。と言わんばかりの優しい視線を俺に向けていた。
「ハハハハハっ!皆、最初は驚きますがすぐに慣れますからね。カズキ様もその内、気にならなくなりますよ」
ゴブロウが笑いながら言う。
そうかもしれない、そうかもしれないんだけどさ.....ぐぬぬ.....
「ハァ~.....もういいや。それで、ついでに聞きたいんだけどさ、あの奥に、なんか物凄い威厳のありそうな大きい銀色の毛並みをした狼の群れみたいなのが寝そべってるんだけど、一緒にいて襲われたりしないの?.....ってか何かめっちゃこっち見てるんですけど?気のせいだよね?」
「ああ、あの狼達はジン様のテイムされているフェンリル様の群れですね。フェンリル様達は牧羊犬としてここで仕事をしてくれているんですよ」
「.....ナンテ?ごめん、聞き間違いかな?フェンリルって聞こえた気がしたんだけど.....」
「ええ、フェンリルです」
「え~と...俺の認識だと、フェンリルって竜と並ぶぐらいの伝説の生き物で、場所によっては神獣って呼ばれるぐらいの高位な狼って感じなんだけど.....」
「その認識で間違いありませんよ?」
.....親父ィィィィィィィィィっ!!
あんた何してんのっ!?なんでそんな伝説上の存在に牧羊犬なんてさせてんのっ!?
そういや、マッシュは割と会うから忘れてたけど、ポテチ達竜族も番犬みたいな扱いされてたな!?
竜とフェンリルって、最強格として扱われるツートップじゃねーかっ!
扱いが雑だよ雑っ!!
俺は思わずその場に頭を抱えて蹲る。
あぁ、神よ...なぜ.....いや、その神がめっちゃ身内だったわ。
思わず祈るところだったけど、ご利益ね~わ。
「あっ、フェンリル達がこっちに来るっすよ?」
そんな言葉に視線を向けると、1頭のフェンリルを先頭に、のっしのっしとこちらに歩み寄ってくる姿が見えた。
フェンリル達は俺の近くまでくると立ち止まり、おすわりの姿勢になると戦闘の1頭が口を開く。
どうやら彼?彼女?がこの群れのボスなのかな?
「カズキ様ですね?私はこの牧場での仕事をジン様に命じられているフェンリル達の長を務めている、トメィトゥと申します。どうか気軽にトメとお呼びください」
おい、親父っ!トマトか?トマトからなのかっ?なんで微妙にネィティブっぽい発音なんだよ、なんか少しイラっときたわっ!
ってか、なんでこの姿を見てトマトなんだよっ!?トマトは一体どこから来たんだよっ!
思わずウガーっと暴れたくなったが必死で抑える。
「ぐぎっ.....スゥ~、ハァ~.....え~っと....ご丁寧にどうも。カズキです。こちらこそよろしく」
俺は簡潔に返す。
だって無理だよ.....もう、俺にそこまでの気力は残ってないよ.....
トメ達は挨拶が終わると元の位置に戻り、再び横になって寝そべっている。
アレ、仕事してんの?日向ぼっこを堪能してるだけなんじゃない?
フェンリル達で少し脱線してしまったが、俺達は再び牧場の案内に戻る。
「それで?なんでにこんなに大きくなってるんだ?いや、誰の仕業かは分かってるんだよ?どうせ母さんが原因でこんな事になってるんだろ?でも、なんでこんな事になったのか気になるじゃん...」
「流石のご慧眼です。その秘密は動物達の食べている草に秘密があります。この牧場に生えている草はミリア様が御作りになられた物で動物達は皆、それを食べております。本来は草だけでは他の栄養素が不足してしまう為、こちらで色々と用意するのですが.....何故か、あの草以外は食べなくなりましてね。
そうしたらドンドン大きくなっていって、今の大きさになりました。あっ、今以上になるような事はないのでご安心ください」
流石でもなんでもね~よっ!こんな非常識な事ができる人物なんて1人しかいね~よっ!
それにその草、本当に大丈夫なの?変な中毒性とかないよね?
でも、まぁ.....これ以上大きくならないってのは良かった.....のか?
「では、こちらへどうぞ。今朝搾りたてのミルクやチーズなどの味見をして頂けるように用意しておりますので」
ゴブロウに案内された場所ではオークやゴブリンの牧場員たちが、手にそれぞれのお盆を持って待機していた。
他の種族の人もチラホラといるけど、やっぱここはゴブリンとオークが主体で働いてるのかな?
目に入る人達を見ながらそんな事を考える。
「ではまずこちらの牛のミルクからどうぞ。その横はチーズとなっております」
俺は言われるままミルクを手に取り口に含む。
「うんまっ.....何コレ?チーズは?.....うまっ.....美味過ぎて美味いしか言えねぇ.....」
普通、牛乳とかチーズって食べた後に味がずっと口の中に残るようなイメージだったんだけど、ここの牧場の物は物凄くサッパリしているな.....
味が後に引かなくてサッパリとはしてるんだけど、味自体は濃厚でしっかりしている。
ちょっと今まで食べた事のないレベルだな.....
「では次は山羊のミルクとチーズになります。どうぞ」
そう言って山羊のミルクとチーズを勧められる。
山羊のミルクは癖が強くて飲む人を選ぶイメージだ。
俺も昔、一度だけ飲んだ事があるが、正直得意ではない.....
俺は恐る恐る口を近づける。
「.....牛とはまた違った味でウメェよ.....しかもめっちゃ飲みやすいよ.....」
昔飲んだ味とはあまりにも違い過ぎて俺は愕然とする。
「ここの牧場のミルクやチーズは、新鮮で美味しくて飲みやすい事が自慢ですからね。あっ、もちろん飲んだり食べると力も漲りますよ」
あっ、やっぱりそのドーピングみたいな効果はあるのね.....
「お土産に色々とご準備しておりますので、お帰りの時にでもお渡ししますね」
「それじゃあお言葉に甘えます。正直これを貰えるのは物凄く嬉しいな.....」
「.....帰ったら.....料理長に渡す.....」
「そうだね~、それで何か作ってもらおうよ」
「そうっすね。お菓子とかも作ってもらいたいっすね」
「はい!楽しみです!」
フローラ、ミラーカ、ネル、リロロの4人は、帰ってからのお土産の用途に目を輝かせながら話し合っていた。
こうして帰った後のお楽しみも出来た俺達は、その後もゴブロウに色々と案内をしてもらいながらビークンの町を見て回った。
見学も終わり、ゴブロウ達ビークンの町の皆にお礼を言って、俺達は無事に帰宅する。
お土産で作って貰った料理長の料理はとても美味しかった。
いつもお読み頂き、本当にありがとうございます。
誤字脱字報告もありがとうございます。
後2話ぐらいで1章を締める予定です。
予定なんです.....




