宝樹祭デート・フローラ編
俺は今、ユグフォレシアの少し大きな広場にある木の下でとある人物の到着を待っていた。
普段より少しお洒落な服装に身を包み、ソワソワと落ち着きが無く何度も時間を確認する。
そう、デートの定番.....待ち合わせである。
(初めてデートっぽい入りだが.....何かそれが逆に緊張してくるな.....)
思い返すと全然デートっぽい事してないもんなぁ.....
「.....お待たせ....,待った.....?」
俺がそんな事を考えていると、フローラがやって来てそんな台詞を言う。
デートだ.....これはもう完全にデートだ!
「.....っ!?い、いや、全然待ってないよ。今日のフローラの恰好、凄く似合ってるよ」
おっと、イカンイカン。感動している場合じゃなかった。まずはちゃんとフローラの恰好を褒めないとな!
俺はフローラに目を向けると、頑張ってオシャレしてくれたであろうフローラの恰好を褒める。
フローラの今日の恰好は、淡いグリーンのワンピースに少し重ね着をして、その服装の邪魔にならない程度のアクセサリーを着けていた。
しかも普段はあんまりしないお化粧までバッチリで、フローラの可憐さは増々高まっている。
思わず見惚れて言葉に詰まりかけたが、何とか言葉を吐けて良かったよ.....
「.....そう.....?.....嬉しい.....」
俺の言葉にフローラはニッコリと微笑む。
「よし、じゃあ行こうか」
「.....うん.....」
俺はそう言ってフローラの手を取り、2人仲良く手を繋いで歩き出す。
フローラに今日のデートで何がしたいのか聞いたら『.....カズキ様に.....任せる.....』っと言ってくれたので、今日のデートはフローラの期待に応えようと俺が張り切ってプランを考えたのだ。
「.....今日は.....どこに.....行くの.....?」
「それは着いてのお楽しみって事で」
「.....分かった.....」
フローラの質問に俺はそう答えると、フローラは素直に頷いてくれた。
俺とフローラはそのまま軽くお喋りをしながら目的の場所まで歩いて行く。
ありがたい事に道中で、このユグドレフィアに顔見知り程度になった人々から軽く声を掛けられ挨拶をされたりもした。
俺達がユグドレフィアに来てから、そこそこの日数は滞在している。
こういった現地の知り合いが増えるの嬉しい事だ。
俺はそんな事実を噛み締めながら、ノンビリとフローラとまったり歩き続けた。
しばらく経って、俺達は目的の場所までたどり着く。
「.....わぁ.....」
その光景を見て、フローラは思わず感嘆の声を漏らす。
俺が今日選んだ場所、それはフローラが好きであろう自然の綺麗な少し小高い丘だ。
.....いや、ユグフォレシアは基本森ばっかりなんだけどさ。
この前、シロさんおススメの場所として皆でピクニックをした所とはまた少し違った場所を事前に調べておいたのだ。
この場所は少し小高い丘になっており、木々もそこまで多くはなく、青空を望めてユグドレフィアの豊かな自然を眼下に収める事の出来る、中々見晴らしのいいスポットとなっている。
そんな場所に俺達は草花を潰してしまわないようにシートを広げ、そこで寛ぐ事となった。
「.....カズキ様.....んっ.....」
フローラはそう言って、自分の膝をポンポンッと軽く叩く。
膝枕をしてくれるという事だろう。
俺はフローラに従い、ゆっくりとフローラの膝に頭を下ろして横になる。
少し華奢なフローラの膝は、女の子特有の柔らかさを感じさせつつ、フローラのフンワリといい匂いが俺の鼻をくすぐる。
.....良いっ!凄く良いッ!!
.....いや、何か変態っぽいな.....止めておこう。
「.....綺麗.....風も気持ち良い.....」
フローラはそう言いながら静かに目を瞑り、少し尖った長い耳も上下に
時折吹くそよ風にフローラの長くて綺麗な髪が靡く姿を下から見上げる俺は、思わず見惚れてしまう。
しばらく無言の時間が2人の間に流れた後、フローラは俺の髪を優しく撫でながら静かに語りだす。
「.....パパが死んじゃって.....ママも死んじゃったと思ってた.....ジン様に拾われた後も.....わたしはずっと.....ずっと未来を見る事が.....出来なかった.....」
俺はフローラの言葉を静かに聞く。
「.....ずっと.....塞ぎこんでた時.....カズキ様の事を知ったの.....不思議な気持ちだった.....会ってみたい.....声を聞いてみたい.....そう.....思ったの.....そして.....実際にカズキ様に会って.....何て綺麗な.....魔力なんだろうって.....その時.....思ったの.....あぁ.....コレが.....一目惚れなんだ.....って」
フローラやエルフ族の人たちは、人の魔力を可視化して見る事が出来る人も珍しくない。
「.....カズキ様と過ごして.....思いを伝えて.....伝えてもらえて.....結婚出来て.....ママともまた会えた.....それに.....おじいちゃんや.....おばあちゃんとも.....」
フローラは俺に視線を向けると、輝くような笑顔で俺にこう言った。
「.....だから今は.....凄く幸せ.....ありがとう.....」
不意に言われた言葉に、俺は思わず泣いてしまいそうになるが、何とか堪えて返事をする。
「.....それは俺の台詞だよ.....いつも一緒にいてくれて.....俺を好きになってくれて.....ありがとな.....」
俺はフローラにそう言って身体を起こすと、そっと顔を寄せて口づけを交わした。
「きゃ~、そこよカズちゃん~。押し倒すのよ~」
「シーッ!ミリアーナ様、そんな大きな声を出したらバレちゃうよ?それにこんな覗きみたいな真似してもいいの?」
「あら~?こっそり後を付けて~、2人の様子を見たいって言ったのは~、シロちゃんよね~?」
「うっ、それはそうなんだけどさ.....やっぱり邪魔をするのは友達として良くないと思うんだ」
「大丈夫よ~。バレなきゃセーフよ~」
「そうなのかなぁ~?」
.....オイッ!バレバレなんだよっ!!
何で真横で見ててバレないと思ってんだよっ!!
何処から現れやがった!!
「.....何してやがるのかな?んっ?」
俺は拳を握り、コメカミに青筋を浮かべながら1人1匹に近づく。
「ち、違うのよ~?カズちゃん~?」
「そ、そうだよっ!これは違うんだよっ!カズキッ!」
「やかましいわっ!!折角の雰囲気をぶち壊しやがってっ!少しキツイお話が必要なようだなっ!!」
「「ご、ごめんなさい!(~)」」
「待ちやがれっ!!」
そう言って逃げて行く2人を俺は追いかける。
「.....フフッ.....静かなのも好き.....でも.....こういう賑やかなのも.....好き.....やっぱり.....幸せだよ.....」
そんな俺達の様子を見ていたフローラは、静かにそう呟いて優しく微笑むのであった。




