宝樹祭デート?・ネル編
前日にリロロに襲われ、俺はフラフラで次の日の朝を迎えた。
いや、愛されてる事は嬉しいんだけど、身体が持たないんだよ.....
特にリロロとネルの獣人組は、本能のせいで本人ですら止められないレベルで気持ちが昂っちゃうから本人に注意したら収まるって訳でもないからな.....
ってな訳で俺が頑張るしかないんだが、もうちょっとこう.....いい方法はないだろうか?
主に俺の平穏な夜の為にも。
そんな事を考えながら、俺は寝室から出て朝食を取る為に食堂へと向かう。
この家は、ユグドレフィアで俺達が滞在中に暮らせるようにとこの里の長であるウッディニさんとシロさんが用意してくれた家だ。
元々来客用の家は複数あるらしく、その中でも極めて大きな家を俺達の為に今回用意してくれたらしい。
俺達だけでは若干持て余しそうな程広い家なのだが、ちゃんと使用人としてブラウニーの皆さんが数人滞在してくれているので家の雑事等を俺達がする事は無い。
いや、本当に助かってます。
「おはよう~」
俺は食堂に入り、朝の挨拶をする。
俺より先に起きてこの場にいるメンバーは、リロロ、フローラ、ネル、リリーナ、ピコさんの5人だ。
リロロとピコさんは料理の手伝い等で早起きだし、リリーナはピコさんが付いているので基本的には規則正しい生活を送っている。
フローラとネルは俺と同じような時間帯に起きる事が多いが、今日は2人の方が少し早かったみたいだ。
ミラーカとシャルミナは相変わらず朝に弱いらしく、きっとまだスヤスヤと寝ているのだろう。
そのうちブラウニーさん達が起こしに行ってくれるはずだが、2人が起きてくるのはもう少し先になりそうだ。
「おはようございます!カズキ様!」
「おはようございます。カズキ様」
まず料理を手伝っていたリロロとピコさんが俺に挨拶を返してくれる。
「.....おはよう.....カズキ様.....」
「おはようですわ!今日も1日晴れるそうですわよ」
「おはようっす。カズキ様、今日はウチの番なんでよろしくっす」
フローラとリリーナの挨拶の後にネルが続き、笑顔で俺にそう伝えてくる。
俺はネルのその言葉を聞き、崩れ落ちそうになる身体に必死で力を入れて堪えるが、心の中はヘルプヘルプと叫びたい気持ちでいっぱいだ。
ナンデ.....ドウシテ.....
別にネルとデートするのが嫌な訳ではない。むしろネルとデートとか嬉しい。
でもさ.....リロロ→ネルの順番は勘弁してもらえないですかね?
リロロとネルは嫁さんズの中でも1,2を争う夜のバーサーカー。
つまり何が言いたいのかと言うと.....
リロロとネルの連続とか俺が持たないからっ!!頼むから順番変えてくれないかっ!?
本当はそう叫びたいのだが、ネルのニコニコとした顔を見るととてもそんな事は言えない。
(いや、逆に考えるんだ俺っ!今日を乗り越えたら残りは比較的大人しいメンバーだけだ.....今日を生き残れば楽になる.....そう考えるんだっ!)
俺はそんな事を考えながら覚悟を決める。
.....おかしい、この世界に来てから1番命の危機を感じるのが嫁さんとの夜の生活なんだが.....
ま、まぁそれも今更か。それよりも今日は何をしようかな?
俺は気持ちを切り替え、今日のネルとのデートに頭を切り替える。
こうしてこの後起きて来たミラーカとシャルミナも合流し、俺達は朝食を美味しく頂くのであった。
☆☆☆
朝食を食べた後、俺とネルは早速出かける事となった。
とりあえず今日は、この里に設置されているステージの1つを見に行ってみようって事になったのだ。
どうもそのステージでは、妖精族達が歌や踊りをメインに披露しているステージらしく、俺とネルはその様子を見学しに行く事に決めたのだ。
妖精族は小柄で小っちゃい子が多く、無邪気で見ていてとても癒される姿をしている。
きっとファンタジー感満載な光景を見せてくれるに違いない。
.....え?上で妖精族達を見たじゃないかって?
あんな軍隊式で歴戦の戦士達みたいな妖精族はノーカンでいいんじゃないかな?
「カズキ様、丁度始まるみたいっすよ?」
「おっ?タイミングが良かったな」
そう言って俺とネルは観客席みたいに置かれた椅子の端の方へと座る。
俺達が据わって直に、妖精族達によるパフォーマンスが始まった。
小っちゃい楽器を手に、一生懸命演奏する妖精族。
その音楽に合わせ、空中で華麗に舞を披露する妖精族。
その何とも微笑ましい姿に、心がほっこりとする。
「心地良い音色っすね.....」
「あぁ.....何か聞いてるだけで心が洗われるような演奏だな.....」
微笑ましいだけでなく、ちゃんと演奏としても素晴らしい。
妖精族達は小さいが、その数は結構多いので音の臨場感も半端ない。
「なぁ、ネル.....踊ってる妖精族の子達がたまに光ったりしてるのは何でだ?種族の特性とか?」
「いや、アレは踊りに合わせて魔力を纏ってるみたいっすね。ちゃんと色を使い分けてるみたいっす。それぞれの子で属性の担当を決めてるんじゃないっすかね?」
「へぇ~.....綺麗だな.....」
「.....凄い素敵っすね.....」
妖精族達は音楽に合わせて踊ると同時に、要所要所で自らの身体を光らせたりしている。
あるいは身体の1部のみを光らせたり、羽のみを光らせたり、激しく強く光ったり、儚く弱々しく光ったりと、それはもう幻想的な光景だ。
俺とネルはその光景に魅入られ、言葉少なくずっと眺め続けるのであった。
「いや~、良かったっすね」
「凄かったな、何かずっと見てられる自信があるぞ?」
「ウチもっす。いつまでも見ていたい気持ちになるっすよね」
妖精族達のショーを見終わった俺とネルは、そんな事を言いながら歩く。
このステージでの出し物は、この宝樹祭の間はずっと行われるらしく、披露する演目も多数あるのだそうだ。
勿論、妖精族以外の人達も参加している。
「今度は皆で見に来たいよな」
「そうっすね.....でも、今日はウチだけ見てて欲しいっす.....」
ネルはそう言って、スッと俺の腕に自信の腕を絡ませてくる。
ネルがこうやって甘えてくるような行動を取るのは非常に珍しいのだが、そんなネルのレアな行動を見れて何故か凄い得をした気持ちになる。
「.....少し座ってノンビリとでもするか?」
「.....はいっす」
そう言って俺達は近くのベンチへと腰を下ろした。
ネルは俺の腕に自分の腕を絡めたまま、俺の肩に頭をコテンと乗せながら口を開く。
「カズキ様.....ウチには両親の記憶がないっす.....それどころか、どこで生まれたのかも分からないっす.....ぼんやりと覚えてるのは、どこかの森の中で、1人で死に怯えて泣いていた事ぐらいっすね.....」
ネルが自分の事を語る事は滅多にない。
俺は黙ってネルの話の続きに耳を傾ける。
「その時に隊長に助けられてそのまま上で育ってきたっす。隊長とメイド長は、ウチの事を自分の子供みたいに愛情を注いでくれたっす.....他の仲間達も、ウチの事を妹のように可愛がってくれて、ウチにとっては皆が家族みたいなもんっす。それで隊長に憧れて情報収集班で働きたいって思ったんですけどね.....凄い反対されたっす。危険だから駄目だ!って.....」
隊長さんって、あのダンディな兎獣人の人の事か。
「ウチはその反対を押し切って何とか情報収集班になったんすけどね.....隊長が心配して、ウチを自分の班に入れるって条件で許してもらえたっす。過保護っすよね.....でも、愛されてるって思って嬉しかったっす.....下で活動するようになって、皆が心配していた理由が分かったっす.....ウチのこの容姿が、人族や獣人族から差別される容姿って事が」
俺はラナードしか人族の国を知らないが、ラナードでも少ないがそのような差別をする人間もいる。
この世界で1番まともなラナードでもゼロではないのだ。
俺は知らないが、きっと他の人族や獣人のいる国では相当酷いんだろうな.....
そういや、情報収集班って何の情報を集めてるんだろうか?
前にネルに聞いたら『機密なんで秘密っす』って言われたんだったな。
.....おっと、ネルの話に集中しなくては。
「まぁ.....それで色々あって止めようかなって思ってた時に、ミリア様がカズキ様の専属の募集してるのを知って、カズキ様の専属メイドになったっす。実は.....ウチは他の皆と違って、カズキ様に一目惚れしたて応募した訳じゃないんすよ.....最初は何となくだったんす.....」
「えっ?そうだったの?」
その割には結構最初からグイグイ来てたような.....
「カズキ様と最初に会ってお話した時に、ウチの容姿を見て綺麗とか可愛いとか褒めてくれたの覚えてるっすか?」
「そりゃ覚えてるが?言っとくけど、別にお世辞で言った訳じゃないぞ?」
「フフッ、分かってるっす。それでもウチの容姿を見ても嫌な顔一つせずに接してくれたのが、その当時色々あって傷付いてたウチにはとても嬉しかったんすよ。そこからドンドン、話す度にカズキ様を好きになっていったっす」
う~ん.....俺には最初から激しく攻勢を仕掛けられてたぐらいにしか思わなかったんだが、ネルがそう言うのならきっとそうなんだろう。
ってかそうだったの?なんて言える訳もないしな。
.....ってか、話に熱が入ってきてるのか、何かネルの力が強くなってきてない?
腕がミシミシって.....気のせいかな?
「ウチは今、凄い幸せっす.....子供も欲しくて欲しくて堪らないっす.....」
.....ネルさん?腕の感覚がなくなってきてるんですけど?
「.....子供.....欲しいにゃ.....」
イカンッ!これはアレだ!漫画だと目がハートになってる状態.....つまり、ネルが狂戦士になりかけている状態だ!
「ネルっ!落ち着けっ!デート.....ホラッ!今からどこを見に行こうかっ?なっ??」
俺は身の危険を感じ、必死でネルを窘める。
「.....落ち着ける場所.....2人っきり.....子供.....」
しかし、ネルの耳には俺の言葉が届いていないのか、ネルは俺の腕を掴んだまま立ち上がるとそのままズルズルと俺を引きずってとある場所へと向かいだした。
そこはこの祭りで疲れた人が途中で休憩出来るようにと、用意されている小さい家だ。
ありがたい事に家族や恋人で使えるようにとそこそこの数が用意されており、プライバシーの保護もバッチリだ。
だが、今の俺にとってはありがた迷惑な場所でしかない。
「ネルッ!!待ってっ!!デートッ!デート回だからっ!!小作り回じゃないからっ!!くそっ!拘束を外したいけどビクともしねぇなっ!!ネルさんっ!お願いっ!正気に戻ってっ!!」
そんな俺の心からの叫びが空しく響き渡るがネルに届く事はなく、俺はそのままネルに引きずり込まれてしまう。
こうしてネルとデートして楽しく過ごすはずだった1日は、何故かネルに喰われ続ける日へと変貌してしまうのであった。
.....ドウシテ.....ドウシテ
バーサーカーモード、ON!




