宝樹祭デート・リロロ編
「あっ、カズキ様!アレを見てください。美味しそうですよ」
俺の横でそう言って楽しそうにはしゃいでいるリロロはとある屋台らしき場所を指さす。
そこでは、様々な肉類と思われる物が串に刺さっており、焼かれたその肉からは美味しそうな肉汁が垂れて今にも良い匂いがしてきそうだ。
いや.....俺の鼻では無理でも、リロロの鼻には確実に匂いがしてるんだろうけどさ。
俺は今、リロロと2人で宝樹祭を周っている。
何故他の嫁さんズが居ないのかと言うと、それはあのカオスな朝の出来事の後に、親父と母さんからとある提案をされたからだ。
『カズキ。お前は皆と個人個人との時間をちゃんと作ってるのか?』
『そうね~。そういうのは大事よ~?』
『いい機会だから1日ごとに、1人1人とデートしてみるのがいいんじゃないか?』
『それは名案ね~。きっとその日の夜は、燃え上がるわね~』
『カズキ達は絆が深まって嬉しい。俺達は早く孫が拝めるかもしれなくて嬉しい。まさにwinwinだな!』
『素敵な提案だわ~.....カズちゃん?ママの言いたい事は分かるわね?』
ってな事を言われ、それを嫁さん達はノリノリで承諾してしまったのだ。
別に俺としても構わないのだが、何故か母さんから最後に凄く念を押されてしまった.....
そんな事を言われても、コレばっかりは意志でどうこう出来る事でもないのでそんなに威圧しないで欲しいのだが.....
若干目が血走っていた母さんが怖くてとても言えなかったよ.....
まぁ、そんな訳で嫁さんズの皆と1日交代で順番にデートする事になったのだが、初日の今日はリロロの番に決まり、こうして2人でブラブラとしているのである。
ちなみに
『アレッ?私はっ!?.....友達.....お祭り.....楽しみにしてたのに.....グスンッ』
っとシロさんは嘆いていた。
スマンて!ちゃんと嫁さん達とのデートが終わったら一緒に遊ぶからっ!
だから少しだけ我慢して欲しい。
「何のお肉を扱ってるんでしょうか?」
おっと、イカンイカン。
今はリロロとのデートに集中しないとな。
「う~ん、1つはこの前見たジャイアントワームってやつじゃないか?他は.....分からんな?」
「では私が聞いてきますね!」
「いや、別にそこまで――」
俺はそこまで気になるって訳でもないし、朝ご飯も食べたばっかりだからお腹も空いてないので別にそこまでしなくてもいいんじゃないか?ってリロロに言いかけたのだが、リロロはあっという間にその屋台の前に移動して何やら調理をしていた1人に尋ねているようだ。
質問をしていたリロロは直にこちらへ戻って来て、俺に何の肉だったのかを楽しそうに教えてくれる。
「カズキ様の言ってた通り、1つがジャイアントワームで、あっちのがモーウ牛のお肉、あっちのがトンブーのお肉で、それとあっちのがコカトリコッコのお肉らしいですよ?」
「へぇ~、モーウ牛は聞いた事あるし、コカトリコッコは上で見たな.....卵だけじゃなくて、肉も食べられたんだ.....トンブーってのは何だろう?この世界の動物か?それとも魔物肉とかかな?」
「トンブーはこの世界でモーウと並んで良く食べられてるお肉で、少し潰れたお鼻と丸々とした体型が少し可愛い動物なんですよ?」
.....豚か?豚肉なのか?
「折角ですし、皆へのお土産に何本か包んでもらいますか?」
「そうだな。折角だし俺も食べてみようかな。皆の分も買って帰ろうか」
「あっ、お金は要らないみたいですよ?このお祭り中の飲食は全て無料で欲しい人に振舞ってるらしいです」
「えっ?そうなの?」
「はい!さっき私の質問に答えてくれた、エルフ族のお姉さんがそう言ってました。なんでも『外から来た人は意外に思うかもしれないけど、結局この祭りって私達からすればただの収穫祭の宴会の豪華版って感じだしね』って言ってました」
.....そういやそうだったわ。
ただの身内の派手な宴会にわざわざお金を取る必要もないって事か.....
そもそもユグドレフィアって通貨が流通してんのかな?
そこそこの日数滞在してたけど、そういったやり取りは見た事ないな?
俺はそんな事を考えつつ、リロロと共に屋台へと近づき、俺とリロロの分の串肉を数本、皆へのお土産の分で数十本包んでもらった。
お土産をマジックボックスに放り込むと、俺とリロロはゆっくりと食べる為に、どこか座れそうな場所を探す。
そこら中で宴会みたいに盛り上がってるせいか、座れそうな場所はすぐに見つかった。
俺とリロロは少し端の方にあるベンチへと座ると、貰ったばかりの串肉に齧りついた。
「.....うまいな!ジャイアントワームって、見た目はアレだけど焼くと旨いんだな.....外はカリっとしてるのに中は柔らかくて味も結構しっかりしてるんだな」
牛肉とも豚肉とも鶏肉とも違う、初めての味なのだが普通に美味い。
「カズキ様、こっちにトンブーのお肉も美味しいですよ?」
リロロはそう言って、俺にあ~んっとしてくる。
.....めっちゃ豚肉だわ。
いや、普通に美味しいんだけどさ、味はまんま豚肉っぽいんだよ!
高級な豚肉って感じ。
俺とリロロは串肉を食べ終わると、少しのんびりとベンチに座ったまま食休みをする事にした。
「皆さん、楽しそうですね.....」
「そうだな.....」
俺達の目の前では、豪快に酒を飲んでいる人や料理を味わっている人、歌を歌ったり芸を披露している人達で溢れかえっていた。
皆とても楽しそうで、その顔は笑顔で溢れていた。
「.....なぁ、リロロ.....こんな時に聞くのも何なんだが.....1つ聞いてもいいか?」
「何でしょうか??」
「.....俺のどこが良かったんだ?」
自分で俺のどこが好きなんだ?(キリッ)って言ってて凄く恥ずかしいわ。
でも、俺とリロロは初対面で面識さえなかったのに、リロロは.....いや、これは嫁さん達全員なんだが、最初から好意全開で俺に接してくれてたように思える。
純粋に何でなんだろう?ってずっと思ってた事ではある。
こうして2人きりでのんびり出来る事もそう無いだろうし、いい機会だから聞いてみたかったのだ。
.....夜も2人きりだが、俺にそんな事を聞く余裕はないしな.....
そんな俺の質問に、リロロはう~んっと可愛く眉間に皺を寄せて考え込むと、俺に向かって良い笑顔で言ってきた。
「全てでしょうか?でも、しいて言うのなら.....匂いですね」
「匂い??」
俺って匂うんだろうか?
俺は思わず自分の腕を鼻に近づけてクンクンと匂いを嗅ぐ。
「あ、いえ、そうではなくてですね.....う~ん.....なんと説明したらいいのでしょうか?」
そう言ってリロロは考え込む。
犬耳がせわしなくピコピコと動いており、とても癒される。
「カズキ様が来られる前に、ミリア様とジン様が専属のメイドを募集してたのは知ってますか?」
「.....初耳なんですけど?えっ?そんな事してたの??」
「はい。その時にカズキ様の姿絵も公開されてたんですけど、あの、その.....カッコいいなぁって.....あの、思いまして.....それで応募したんです.....」
リロロは顔を真っ赤にさせながら続ける。
「それでカズキ様のメイドに選ばれた訳なんですけど、初めてお会いした時にその.....何と言いましょうか.....匂いがですね.....あの.....す、凄い本能に響いたと言いましょうか.....虜になったと言いましょうか.....あの、そんな訳です.....」
「お、おぅ.....ってか選ばれたって言うけど、そんなに大勢いたのか?」
「あ、いえ、これは後から聞いたんですけど、ミリア様がカズキ様にふさわしい人を選ぶ為に何かしてたみたいですよ?それに選ばれたのが私を含めて5人だったって事です」
「.....まさか、リロロ達の思考をいじったって訳じゃないだろうな?」
「いくらミリア様でも流石にそれはないと思いますよ?」
.....いや、実際に前科があるんだが.....主に被害者は俺。シャルミナの件でな!
「それに私達は全員、ちゃんと自分の意志でカズキ様を好きになったんです!」
そう言ってリロロはプクーッと頬を膨らませて怒る。
「スマンスマン。それと教えてくれてありがとな。まぁ、何だ.....頼りない事も多いと思うけど、これからもよろしくな?あ~、その.....リロロ。愛してるよ」
「はいっ!私もカズキ様を愛してます!」
そんな話をした後、俺達は宝樹祭をブラブラと2人で見学し、デートを楽しむであった。
この日のリロロは終始ご機嫌で、ニコニコと可愛くはしゃいでは笑い、その姿はとても可愛いと思えるのだった。
.....尚、この日の夜にテンションの上がり過ぎたリロロから、いつも以上に激しく襲われたのは言うまでもない事だった。




