異世界ピクニック
「おぉぉぉっ!凄いなっ!」
俺は今、目の前に広がる幻想的な光景に凄く感動している。
俺達は宝樹祭が始まるまでの間の暇つぶしとして、ユグドレフィアの森の中にピクニックに来ていた。
この森を知り尽くしているシロさんのおすすめの場所って事もあり、結構期待していたのだが想像以上に凄い場所だった。
「フフフッ、どうだい?ここではあらゆる季節の草木を楽しめるようになってるんだ!私のお気に入りの場所の1つさ!」
シロさんが自慢げにそう言うのにも頷ける。
俺の目の前には、桜のようなカラフルな木や、青々と茂った立派な木、それに紅葉のように赤く染まっている木等が見える。
その足元には色とりどりの花のカーペットが敷き詰められている。
そして何と言ってもその草木の葉が少し半透明になっており、光を浴びてキラキラと輝いている光景は正に圧巻だ。
美しい景色を前に、嫁さんズは言葉を発する事も忘れて見入っていた。
「.....こんな場所が.....あるなんて知らなかった.....」
フローラはその光景を静かに見つめながらそう呟いた。
元々ユグフォレシアで暮らしていたフローラも知らない場所か.....
「そうだろう、そうだろうっ?ここは私の友達しか知らない秘密の場所ってやつなのさっ!」
シロさんは俺達が驚いている様子を見て上機嫌だ。
(ってかシロさんの友達しか知らない場所って事は、シロさんしか知らない場所って事なんじゃ.....)
俺は思わずそんな事を考えてしまうが、今そんな事を言えばこの空気をぶち壊してしまうのでなんとか口に出さずに俺の心の中だけに留める。
「本当~、綺麗な場所ね~」
「帰れっ!!」
何で母さんがシレッとここに居るんだよっ!
一体いつ現れたんだよっ!!
「ううっ、カズちゃんが冷たくて辛いわ~。悲しさのあまりに魔力が暴発してしまうかも~」
「サラッと恐ろしい事を言って脅してくんなっ!!ってか何で母さんがここにいるんだよっ!?」
「冗談よ~、冗談~。カズちゃん達が楽しそうな場所にピクニックに行くって聞いたから来ただけよ~?」
「.....誰から聞いたんだよ?」
「それは勿論カズちゃん達の会話を盗み聞.....か、感よ~?」
「.....オイッ、今なんつった?」
「あっ、も、もうこんな時間だわ~。帰ってご飯の準備をしないと~。じゃあママは帰るわね~?おほほほほっ~」
「待てっ!逃げんなっ!!つかそもそもご飯の準備なんて自分でしてないだろうがっ!!」
「じゃ、じゃあね~」
そう言って母さんは直に消えて行った。
くそっ!逃げられたっ!ってか何しに来たんだよっ!!この件はその他諸々含めて後でキッチリと問い詰めてやるからなっ!!
「な、何だったんだい?あまりの勢いに挨拶すら出来なかったんだが.....」
「.....何もなかった。いいな?」
「えっ?でも今確かにミリアーナ様が.....」
「そんな奴はここには来なかった。そうだよな?.....お願いします」
「まぁ、カズキがそう言うならそういう事にしておくよ.....」
シロさん、本当にスマンッ!
アレをまともに扱っていたら俺の胃が持たないんだよっ!
見なかった事にして最初から何も無かった事にしないと俺の精神がゴリゴリ削れちゃうんだよっ!
「ミリア様、何をしに来られたんでしょうか?」
「さぁ?何か用でもあったのかな?」
リロロとミラーカは、母さんが突然現れたと思ったらすぐに帰って行った事に首を傾げている。
「.....多分.....特に用はない.....」
「そうっすね。きっとカズキ様の顔を見に来ただけなんじゃないっすか?」
「そうじゃな。多分ソレが正解じゃと思うのじゃ」
「きっとミリア様もカズキ様に会えなくて寂しいのですわ」
フローラが特に用は無かったと言い、ネルとシャルミナもフローラの予想に賛同する。
リリーナの言う通り、多分その理由が大きいと思う。
でもつい最近までローグンで一緒だったと思うんだが.....
この世界に来てから母さんの過保護っぷりが増してる気がするよ.....
「ま、まぁそんな事よりもだな、今はこの景色を楽しもうぜ?折角なんだしさ」
俺は何とか誤魔化そうと必死で口を動かす。
「それよりもずっと気になってたんだが、ユグドレフィアって森の中のはずなのに明るいよな?普通は葉で光が防がれて薄暗くなるんじゃないのか?」
「あぁ、それは大丈夫だよ。ちゃんと光が届くように一部の葉は透明にしてあるんだ。薄暗い場所でずっと暮らすなんて不便だし気が滅入ってくるだろ?私はそこら辺もちゃんと考えてるのさ」
俺の疑問にシロさんが答えてくれる。
俺はシロさんの言葉を聞いて上を見上げると、確かに一部の葉が透明になっており、まるで葉は初めから存在しないかのように青い空が覗いている。
目を凝らして見ると辛うじて葉があるってのが分かるレベルだ。
「もしかしてここのキラキラ光る葉とかもそんな感じなのか?」
「概ねそうだね。この辺りの植物の葉は、少しだけ透明度を落としているのさ。そのおかげで光が反射して、風などで動く葉が輝いてるように見えるって訳さ」
「へぇ~、凝ってるんだな~」
「いつか友達が出来た時に見せようと張り切ったのさ!けど.....カズキが来るまで1人も友達出来なかったけど.....」
オイッ!素直に感心してる時に悲しくなるような事を言うんじゃないっ!!
見ろっ!変な空気になって嫁さん達も固まっちゃったじゃないかっ!!
「.....でも.....これからは.....カズキ様がいる.....わたし達も.....」
「そ、そうじゃな!カズキ様は勿論じゃが、妾達もおるのじゃ」
「はい!私達がいますよ!」
「うんっ!僕も遊びに来るよっ!!」
「私もですわ!こんな素敵な場所なんて滅多に見られませんもの!」
「そ、そうだね!もう私はにはちゃんと深い絆で結ばれた心友がいるんだしね!!」
フローラの一言をきっかけに、嫁さんズが次々とシロさんを励ましていく。
そのおかげか、シロさんも元気を取り戻したようだ。
.....ってかシロさんの言った親友の文字が違う気がするんだが、気のせいだろうか?
何か放っておくとドンドン取返しの付かない事になりそうな気がするんだが.....
き、気のせいだよな?シロさんはきっとそんな変な事にはならいよな?なっ?
何とも言えない不安が押し寄せてくるが、俺はシロさんを信じる事にしようと不安を振り払った。
こうして俺達はシロさん自慢の秘密の場所で、のんびりと楽しく過ごしてピクニックを満喫するのであった。




