8 抜けるかな
「私がここの店主だよ。おや、その顔は昔話を聞いてここへ来たって顔だね。人気の観光地だったのは昔の話さね、今はご覧の通りさ」
彼女の話によると、観光だけでは苦しくなってきたので街を立て直すために国には無断でこっそり賭博場を建設、街を活性化させようとした。しかし悪人どもが押し寄せ非常に治安が悪化。これはいけないと賭博場を廃止。こうして悪人は来なくなったが、伝説の剣目当ての客も来なくなってしまったとのこと。ここでは食べていけないのでこの地を売りに出しているけど、なかなか買い手がつかない、という話もしていた。
一通り愚痴をこぼした後、「せっかくだから伝説の剣抜いていって」ということで剣がある場所まで案内してもらう。彼女の後ろについて歩き、建物の中に入っていくと大岩がある場所に。
壁面に岩が少し盛り上がっているところがあり、台座のようになっている。その岩に剣が突き刺さっていた。選ばれた者にしか抜けないというこの剣を見て興奮する2人。「私から」と鼻息を荒げミアは剣の柄を握った。
「んぎぎ」
ミアの顔が真っ赤になっているが剣はびくともしない。手を離し、一呼吸置いて諦めのポーズを取り選手交代。今度はイリス。抜けるとしたら彼女かな、剣使ってるし。が、彼女も駄目。勢いをつけて何度か引っ張っていたが剣は抜けなかった。そして俺の番。だけど魔術士だからな、たとえ抜けても使えないんだよね。まあそのへんは置いておいて、とりあえず抜くことに。
まずは軽く引っ張ってみる。すると大岩、建物が微妙に揺れた。これはもしやと思い、思いっきり引っ張ってみる。大きな亀裂音とともに、剣が引っ張っている側に移動してきている。そして振動も徐々に大きくなり、大岩が崩れてきたところで剣を抜くことが出来た。
ただ、台座のような部分が残っていた。剣の刀身部分は台座に覆われている。
大きく口を開き、あっけにとられていた店主だったが、少しづつ冷静さを取り戻すと満面の笑みでこちらに話しかけてきた。
「これはこれは! ありがとう。これでこの土地は売れる!」
どうやらこの剣があるおかげでこの土地が売れなかったようだ。建物を半壊させて喜ばれるとはな。台座付き伝説の剣を持ち上げ店から出る俺たち。
「どうするの、それ?」
道具袋の中にいれてしまおう。ついでに彼女たちにもこの道具袋について説明を。「そんな便利なものが」と驚く彼女たち。一応、入れる前に装備できるか試す。『装備できません』、ですよね。
道具袋の口を大きく広げ、剣を持ち暗闇の空間へ突っ込んでむ。剣は闇の中へ入っていった。
伝説の剣を袋に入れ、俺達は宿屋へと向かった。
次の日、朝食後街から出発。それから10日、高い防壁に囲まれた街に到着。
「ここは要塞の街、エステンよ」
「堅固そうな街だ」
「昔、隣国と戦争していたことがあって軍事拠点として活躍したとか。ここから隣国が近いのよ。今は争ってないから平和だけど」
街の中は広く活気があった。あれは市場かな。新鮮な野菜や肉、そしてうまそうな匂い。こういう屋台の食べ物って美味しそうに見えるんだよね。お腹をすかせていた俺達は食欲には抗えず、勢いに任せて買食い。お腹が満足するまで食べ続けた。
食事休憩後、ギルドを目指し街の中を歩く。途中街の人に場所を尋ねながら歩き、ギルドを発見。そのギルドの前にはとても豪華な馬車が。ギルドから黄金の鎧に身を包んだ若者が出てきた。彼の所有する馬車かな?
「あの人はこの国の王子、アルベル王子! 世界でも屈指の実力者よ」
アルベル王子の後ろには数人の冒険者達が。王子とパーティを組んでいる人たちだろう。彼らもまた有名な冒険者だとか。
そしてイリスが突撃。おーい、相手は王子だぞ!
「アルベル王子とお見受けする。よろしかったら手合わせを」
「えーと、いいよ」
受けてくれた。それにしてもすごい度胸だ、俺には出来ないな。相手は王子だってのに物怖じせず交渉するとは。そもそも国際問題とかになったりしたらと考えてしまう。
俺たちはギルドの隣りにある訓練場へ行くことに。後ろに居た冒険者達がやれやれといった風で王子の後についていく。
試合は一方的だった。イリスの攻撃を軽くいなし、剣を突きつけ勝利。それを何度か繰り返した。
その後はミアの番。何度か負けた後、スキルをフルに使い王子に攻撃。しかしこの攻撃も全く通じず。ミアは手を上げ負けを認めた。
2人共全く歯が立たない。冒険を一緒にしてきたからわかるけれど彼女たちは決して弱いというわけではない。ここへ来るまでに出てくる魔物は彼女たちの手にかかれば瞬殺だった。本当にこの王子が強いのだろう。




