78 魔神ソーシャム
「お呼びですか、ルアン様」
「ソーシャム様のお具合は?」
「はい、まだ眠っているようです」
「ふむ、無理もない。引き続き見張っていてくれ」
「ハッ」
「人間どもめ、今頃面を食らっているだろうな。こちらの準備は完璧だ。本来なら完全覚醒まで魔王様に守ってもらうのが一番ではあるが事情が事情。我々がお相手しよう。魔神、魔王、それどころか人間たちにも劣る我々がな。くくく、ふはは、ワーッハッハ!!」
北東以外の各国の王へ、ニドウに集まるよう緊急招集をかける。サマトリ王子もグランスモへ来ていたのでニドウに移動するだけではあるけれど。
ニドウへ行くために、タラテメンが管理する港へ。しかし海は凍りつき、船は使えない状態だった。
「氷が張ってしまっていて、船は出せませんね。氷はかなり厚いから馬車で移動することも可能でしょう。ですから陸路で進み、陸地と陸地が近いところで馬車移動、でどうでしょう」
王たちが相談、港の人の考えそのままの移動をすることに。予定の場所に到着。
海だけど馬車で移動、か。何だか不思議な気分だ。
馬車で凍った海を移動できるか実験。馬車が侵入しても氷は割れなかったが、非常に滑る。当然だ。
そこで国、街の鍛冶屋で特殊な馬車を作成。馬の蹄鉄にも特殊な仕様を。こうして自由に氷の上を走ることが出来るようになった。
海は見事に凍っていた。おかげで馬車で快適な旅ができたが。ニドウの港町に到着、そのまま王都へ向かう。王都リブラザーでは兵士たちが慌ただしく動き回っていた。
馬車で城へ。程なくして会議室に王たちが集まる。
「話は聞いている。まさか魔神がな」
「どうして復活したかはこの際どうでもいい。討伐隊を組み魔神を倒さなくては」
「しかし倒せるのか、我々で魔神を。まだ復活していないという可能性は?」
「無いわけではないが、復活したとして行動したほうが良いだろう」
「闇の者たちを最近見かけなくなったとか。魔神のいる島に集結しているかも」
言葉をぶつけ合う王たち。
しかしそうか。結局戦うことになりそうだな、魔神と。準備はほぼ完璧だからそこは良かったかもしれない。それにしても気候まで変わるとは。かなり恐ろしい敵なのだろうな。
ふと思いつく。ラスボスって寒いところが多いよなと。
が、すぐにその考えを改めた。よくよく思い出してみるとそうでもないな。厳しい場所にいるってのは共通しているかも。
おっと、冗談言ってる場合ではなかった。
「では、全国主力部隊を魔神のいる島へ」
話が決まったようだ。総力戦だな。出来れば人類側の勝利で終わらせたい。その日の夜から城で毎日酒宴が開かれた。景気づけにということだろう、とてもおいしい食事、お酒を味わう俺達。続々と各国の強者が集まってくる。ほとんど見た顔だな。
もうここへ来て何年になるだろうか。彼女たちについていって一緒にステ上げをしていた日々。なし崩し的にここまで来てしまった感も否めない。気がついたら人類の敵、最強の敵と戦うことに。
「お酒美味しー!」
上機嫌な彼女たち。
そうだな、戦う理由は何でもいいか。世界を救うためでも、彼女たちの笑顔を守るため、でも。
必ず勝つ。初めてかもしれない。ここまで熱い脈流を感じるのは。
王たちの会議からしばらく後、北東を除く、人類の総戦力がニドウに集結。
やはり見た顔、知り合いが多い。現実世界だったらここまで知り合いは増えなかったかもしれないな。
闘技場に皆を集めアルベル王が激励を。
「皆、よく集まってくれた。ここが最終決戦、ここだけは負けられない闘いだ。皆、力を貸してくれ!」
雄叫びを上げる人々。
いよいよ最終決戦だ。
馬車に乗り込み氷の道へ。前に作った氷用馬車を更に改良。揺れが少なく道中快適な旅だった。人間の進歩ってのは凄いものだ。
しかし氷の上を馬車で旅するというのはなかなかに不思議な気分になる。氷が厚すぎて魚は取れないけど。
とはいえ大きな木の上で暮らしたり、風にのって雲の上の大地にいったりと、いろいろな経験をしてきた。それらと比べれば現実でもあり得る氷上の暮らしなんて普通、とも考えられるかな。
「魔神が見えてきた。巨大な氷山、やつはそこに封じ込まれていた」
「氷山が小さくなっている。……かすかに動いているな。完全に復活していないようだがもうすぐといったところか」
大きな氷山の中に異様な形状の生物が。
一応人型だが、何千本とありそうな足、関節という概念がなさそうな太く長い腕、見ただけで恐怖させる恐ろしい顔。なんともおぞましい。これが魔神か。




