77 氷の大地
軽く乾杯の音頭を取った後、無言で料理を食べ続ける俺たちがそこにいた。想像以上に美味しかったからつい料理に夢中に。いけないな、皆と語らいながら今後のことでも相談しようと思っていたんだけど。皆も必死に前に並んだ料理に食らいついている。らしいと言えばらしいけれど。
しばらく食べて落ち着いたところでミアが話を。
「これからどうする?」
戦う準備は整った。修行をするにも「天上の大地」以上の場所がなさそうだった。後はのんびり、はやいかもしれないが余生を過ごすか。神様から特に連絡もないしね。結局ここから帰ることはできなさそうだけど、それはそれでいいかな。彼女たちと過ごしていると楽しいしね。
そうすると観光かな。
「何処か行きたいところはある?」
特に意見はなかった。北東の大陸には行ったことがないから行ってみないかと提案。皆その案を受け入れる。別にサメさんに会いたいんじゃないから!
グランスモに来ていたアルベル王に呼ばれた。アルベル王、最近忙しく動き回っているようだな。国が1つ滅んでいるから当然かも知れないけれど。
今回は珍しく2人だけで話をしたいとのこと。大切な話かな? まだなにか世界の秘密があったとか。
「これからどうするんだ? リク」
「ええ、北東の大陸へ行こうかと」
「それはいい。特にダイム、食べ物は美味しく絶景だらけでね。恋人と過ごすには丁度いい」
「ん?」
「話ってのはそれなんだ。ある意味国からの最後の仕事の要請、「子孫繁栄」だ。ルモナは俺が言うのはなんだけど、世間一般から見てもカワイイと思う。それからどの国も一夫多妻制だ、全員でも良いからな。住むところは俺が用意する。考えておいてくれ。いや、考えず本能のまま動いてくれ!」
王からの突然の提案。
うん、全く想定外の話だった。そうかー、子孫繁栄かー。彼女たちを気にしていなかったと言えば嘘になる。しかし今までは彼女たちの「強くなりたい」という意思を汲んでそちらの方面はノータッチだった。たまにラキスケで全裸を見てウヒョー言うくらいだったな。
だからといって国から言われたから子作りしようぜってのも変な話だよな。まあ後は自然にでいいんでないかな。
ルモナを力強く押してきているのは信頼してもらって嬉しいような。ただ俺とルモナの話になるからね。これからどう転ぶかはわからない。もしかしたらお義兄さんの期待には答えられないかもしれない。
「考えておきます」
城から出て皆と合流。
「どうしたの? なにか難しい話?」
「たしかに難しい話ではあるかな」
「はっきりしないな。相談できない悩みか?」
心配そうに俺を見る彼女たち。いかんな、恋だの子孫繁栄だのと言われたからだろう、どうにも意識してしまう。くっ、アルベル王め、人の心を動かすのがうまいぜ!
とりあえず、予定通りいこう。ダイムへ。後は成るように成れ、だ!
その日の夜、ベッドで毛布をかけて寝ていたが、肌寒く感じ目を覚ます。
実際少し気温が落ちているかな。どこに行っても年中温暖な気候だったから不思議に思い、原因を探ろうと着替えて外に出る。やはり肌寒い。息をすると白い気体が。
海の方へ行ってみる。
「これは……」
見渡す限り、海が凍っている。そりゃ寒いわけだが一体全体コイツは何が起きているんだ。港にいる人達が慌ただしく走り回っている。海が凍っているため船は動かせそうにない。
何が起きたか聞いたが皆知らないようだった。ミアたちが起きてこちらに。彼女たちも知らないようだった。
ダイムへ行こうと思ったが異変が起きているため、グランスモへ行くことにした。今ならアルベル王もいるしな。トラブルが起きた場合は対処してくれるだろう。
グランスモに到着。兵たちが慌ただしく動いていた。城へ行くと王の使いの人に呼び止められ、しばらくこの街で待機していてくれと言われる。
5日後、アクエルヌ王に呼ばれる。城には重々しい空気が。アルベル王たちもいる。会議に参加している人たちは覇気がなくうつむき気味だ。
「海の表面が凍りつき、広大な氷の大地を形成している。つまりこれは……」
言い淀むアクエルヌ王。顔には大量の汗が。そしてその重い口から出た言葉は。
「魔神ソーシャムが復活したと見て間違いないだろう」
魔神? 復活しないのではなかったのか。皆動揺している。一体どういうことなんだ。学者さんが王の代わりに説明を始める。
文献に魔神が存在していたときは、地図の真ん中の島を中心に海が凍りついていたという。そのため次回魔神が復活した際にも海が凍りつくだろう、と文献に載っているとの話。
正直何故復活したのかわからないというアクエルヌ王。暗黒粒は魔王を倒したことによってほぼ散った。本来なら復活することは出来ないはず。
「わからないことだらけだ。だが対策は立てなくてはならない。魔神討伐隊を」




