65 不遜
それからこの国は武器防具を生産するのに適しているため、あまり離れたくはないという理由もあったようだ。それはそうだな。俺が敵なら武器防具を生産しているところを真っ先に潰したいところだ。
王の話ではこの国では「賢剛合金」より強い金属も手に入るようだった。賢剛合金より強力な金属はまともに流通していない。それより強い金属が少数というのもあるが、そこまで強い人間もそこまで居ないという理由もあった。
またいずれこの国に来ることになるかもしれないな。
王と話しをしていると、後ろから人の気配が。おや、一体誰だろう。緊急事態でも起きたのかな。
「王様まだー?」
「ライズ! 待っておれと言ったであろう! それから客人に無礼だぞ、謝りなさい!」
「へいへい、ごめんちゃいー。はやくしてくださいね~、俺っち暇じゃないんで」
適当に謝り、手を振りながら帰っていく男。大きなため息とともに呆れた表情を見せるアクエルヌ王。「すまんな」と王様に謝られてしまった。
王に対して不遜な態度を見せていたあのライズという男、なんとこの国の神器使いだという。とにかく素行不良で、今回も悪さをして王に呼び出されたとのこと。
聞いたところ窃盗から女の子に乱暴まで何でもありの悪党。だが、神器使いということで許されてきてしまった。そのため悪党ぶりが日々悪化しているという話だった。
「はぁ~、どうしてうちは個性の強すぎる神器使いしか居ないのか」
「個性?」
「ああいや、忘れてくれ」
城から出る。
しかし大変だな。でもそうか、強いからと言って清廉潔白なわけではない。むしろ一般人とは常識的にもずれる人物が多くなるのではないだろうか。それにまだ若そうだった。増長しやすいんだよね。
当然その男の行動を支持するわけではないけれど。
リクに戻り3人と合流しようと彼女たちいる場所に行くと、先程の男が仲間を連れて彼女たちに言い寄っていた。
「ねー、付き合ってよ」
「連れが来たんで。じゃあね」
俺を見るなり彼女たちはこちらへ来て、俺を捕まえそのまま引きずり店から出る。
本当はぶっ飛ばそうとしたけれどちょっとした絡みに殴ってしまっていたのではいけないという彼女たち。「私達も成長したわね、普通の女性になったわ」というミア。
そもそも普通の女性なら最初にぶっ飛ばそうと考えないと思う。だけど成長したのは確かなので彼女たちの話を頷きで返した。
「ねー、待ってよ」
先程の男たちが俺たちの後をつけてきたようだった。男たちはこちらを取り囲む。かなりしつこいタイプのようだな。
「まーいいや、面倒だ。よそ者だし男は殺してしまっても。女の子には後で遊んでもらおう」
ふむ、清々するほどの悪党ぶり。王様が頭を抱えるのもよく分かる。しかも神器使い。そこそこ強いわけだ。一般人では力ずくに出られたらどうしようもないだろう。
こんなんでも神器使いか。となると彼女たちではきついか? いや、彼女たちはかなりの強さにはなっているはず。遊び呆けている神器使い程度ならもしくは。戦いながら少し様子を見るとしよう。
俺に襲いかかってくる男たち。一般人に毛が生えた程度の強さだった。彼女たちはそれを軽くあしらう。
「情けない奴らだ。じゃあ俺の出番っと。それにしても生意気な女どもだ。腕一本くらいは覚悟してもらおう」
来るか。腐っても神器使い。状況次第では場を無茶苦茶にしてこっそりサイゴに変身、ぶっ飛ばせばいいか。彼女たちにヤツは神器使いであることを告げる。彼女たちは萎縮するどころかむしろ闘志が燃えあがる。誰が戦うかもめ始めた。彼女たちらしい。
ん? なんだか森の中から妙な気配が。こちらにも気を配らないと。
イリスが前に出る。ライズは剣を手に取る。長大なロングソード。その長さからイリスの剣の間合いに入るのは苦労しそうだ。武器的にもなかなか厄介な相手だな。
ライズが突きを放つ。あれ、なんか遅くね? なかなかイリスまで辿り着かない。
イリスも困惑の表情を見せる。流石に遅すぎる。もしかしたら釣りか? この剣に触れるとスキルが発動、窮地に立たされるとか。そう考えたのだろう、一旦後方に身を引く。
「へー、やるね。俺様最速の突きをかわすとは」
むう、これは本気で言っているのかどうかわからない。ライズは息を切らし気味だ。もしかして。
もう1度同じ突きを。今度は伸びてきた剣を力強く叩く。すると手がしびれたのか剣を持っていられなくなり手を離してしまう。勢いよく飛んでいった剣は回転しながら最後は地面に突き刺さった。




