60 魔精王
「ウグッ」
気を失うサマトリ王子。
もっと情報がほしいところだが、魔王イーダを放っておくわけにはいかない。ここは国の人達に任せ、草原闘技場へと向かうことにした。
街道は使わず、一直線に飛ながら草原へ。ドス黒い、瘴気を纏った女の子、イーダが草原の真ん中に。
「よく来たのぉ、さあ、前哨戦といこうか。出でよ我が眷属たちよ、血の契約に従いやつを滅ぼせ!」
地中から巨大な棺桶が突き出す。そこに力を注入するイーダ。棺桶が開かれ、3体の化け物が俺の前に立った。
異様に骨の数が多い骸骨、金属の鎖に巻かれているミイラ、首から上が花になっている人形の物体。
「久しぶりのシャバだー!」
「ギーハー!」
「ゴッポッポッポ!」
「コイツらは基本不死身だ。手加減せずにやってしまっていいぞ。あ、お前らは本気でやれ。正直期待してない」
「うっわ、そういう事言う? 久しぶりに戦う部下を励ますのが普通ってもんだろうがよー、イーダちゃん。なあ、アンタもそう思うだろ?」
「ああ、まあ」
見た目は恐ろしいがどうにも調子が狂う連中だ。
文句を言いながら襲いかかってくる3人。ふむ、実力は本物だ。1体1体がガトラほどの強さがある。流石魔王直属の部下と言ったところか。
「ほ、本当につええぞ! ぐあっ!」
3人を倒した。再び棺桶を出し、エネルギーを吸い取ってから彼らを棺桶に突っ込んで地中に戻すイーダ。
「ふむ、ここまでとは。では私がお相手しよう。魔王の力、存分に味わうが良いぞ」
溢れ出る瘴気全てが彼女の中へ。それとともに彼女の姿形がはっきり見えた。背中にコウモリのような翼、口元に牙。そうだな、吸血鬼に似ているかな。
こちらに一瞬で近づき拳を振るう。速い、しかも威力がありそうだ。受けるのをやめ後方へ飛んでかわす。拳が地面に触れていないのに、爆音とともに地形が歪む。
「デュアルソウル」
イーダがスキルをこちらに放つ。大きな人魂状の物体がこちらへ高速で近づいてくる。得体のしれないスキルに逃げを選択する俺。そしてこちらの動きに対してしっかりついてくる。追尾型か。更にこの人魂が通ったところの草木は枯れ、生物は干からびている。危険な技であることは間違いないな。
「ブリードレイ」
口から血を吐くようにしてスキルを放つイーダ。赤く小さな液状の粒が散弾銃のような攻撃を展開、当たった場所は穴だらけに。
「ムーブスロー」
隙きを見ながらこちらもスキルを使う。だがほとんど弾かれた。唯一効いたのはラックフォール。よりによってこれか、ほとんど効果がないんだよね。
やはり魔王は完全耐性持ちが普通か。それでも1つくらいは当たる可能性があると。となると魔王戦前はスキルをできるだけ使わないのが吉か。
「嬉しいぞ。まさか私と対等、それ以上に渡り合える者がいようとは。さて、そろそろ終いとするか。お主の持つ神器で私を思いっきり攻撃してみよ。なに、私は不死身だから大丈夫だ。もし出来ぬのなら人々がどうなるかわかるだろう?」
凄んではいるがなんとなく感づいた。殺し合いというよりも力の見せ合いという風なものを対戦中ずっと感じていた。
そうだな、多分そういうことなんだろう。
言われるがまま、神器を持ち本気で殴りつける。
「うぐっ、これは!?」
衝撃波が発生。しかもいつもより強力な破壊力を感じる。強烈な衝撃波は、辺りを飲み込み、俺以外の存在を許しはしなかった。
草原全体に及ぶほどのクレーターが出来上がる。凄まじい破壊力だ。そうか、いつもは瞬時に武器が壊れててしまっていたからここまでの破壊力を出せなかったんだな。力のステが少し上がっているのも少しは影響しているかな。
「おっほー、凄い破壊力だ!」
羽音を出しながらこちらにピンク色のコウモリ似たモノが近づいてくる。どうやらイーダのようだ。
「が、まだこれでは魔神には勝てないな」
「色々聞かせてくれ。アンタが知っていること」
「うむ、いいだろう。とその前に神器は?」
「握っているが?」
「あ、ああー!! じ、神器がーー!!」
何だか軽い。おお、そうか。魔王との戦いを経て土台が砕け、真の姿を見せたといったところか。はっはっは、それにしても驚きすぎだぜイーダ。まだ強くなるのか、的な驚きかな。
刀身はどんな形状をしているのかと手を前に出し剣をかざす。
……柄から先が無くなっていた。
しばらく無言が続く。重苦しい雰囲気の中、イーダが口を開いた。
「そ、そうだな。とりあえず神器の件は置いておくとして」
刀身部分は砕け散って無くなっている。ま、まあこの件は後で。
イーダが語りだす。




