58 謎のまま
テーブルには大量の食べ物。立席パーティ形式か、給仕の人も居ない。そうだな、特に俺は正体を隠しておきたいから助かる。サマトリ王子が近づいてきてルモナの件でお礼を言われた。そうだな、サマトリ王子と直接会うのは始めてだったか。とても礼儀正しい人のようだ。
「ところでどうだい、サイゴ。誰が優勝すると思う?」
「俺、と言いたいところですが、正直胸を張っては言えませんね。皆力を隠しているようだから」
「そうだよな」
腕を組んで考え込むアルベル王。
夜も深まり、そろそろ帰る時間に。
「ではこれで」
「ふふ、もう会えないことも覚悟していたが、今後も強冒険者との晩餐ということで会う機会はありそうだな」
「ははは、そうですね」
なんやかんやでルモナに会いたいわけだ。それは当然か、王族もまた人の子だからな。
そして準決勝当日。
「サイゴ対コクウ!」
馬車が走り去っていく。
色々考えたが結局彼の力の正体にたどりつくことは出来なかった。となると方法は1つ。
(ここまで俺の力がバレずに上がってこれたか。何、簡単なスキルだ。「時を止める」。戦闘開始後、そのスキルを使い、時が止まったところで他の魔法で相手にダメージを与え勝つ、それだけ。まあ、正直無敵だな。一応服装で謎を更に深めてやっているがあまり変わらないかもなぁ。ヤツが次に目を覚ますのは夢の中ってわけだ、あーっはっはっは!))
馬車が見えなくなる。
「タイムクラッ」
「ショックスタン」
彼がスキルを放つ前にこちらがスキルを。止まった彼を気絶させた。
「勝者サイゴ!」
これしかない。先手必勝。一応動き出しはあわせた。
それにしても恐ろしい相手だった。結局最後までどんな力を持っているかわからなかった。こちらにはまったく余裕がなかった。
何だか勝った気がしないな。これが試合に勝って勝負に負けたというやつだろうか。
宿泊場へ運ばれていくコクウ。その顔はとても穏やかで良い表情だった。
(勝った! わっはっは、やはり俺は無敵だ! むにゃむにゃ……)
続いて準決勝第2試合。
「準決勝第2試合、ラプノマ対ガトラ!」
ラプノマは相変わらず魔法陣付きの服を着ている。ガトラはローブを脱いでおり軽装。8本の尾が各自意思を持っているかのように自由に動いている。
馬車が見えなくなり試合開始。ラプノマが近づき接近戦を仕掛ける。お互い非常に身体能力が高いようだ。地面が凹んだり、爆発音が聞こえたりと派手にやりあっている。
ほぼ互角かと思っていたが徐々にラプノマが押され始める。ガトラの攻撃は速い上に手数が多い。8本の尾が凄まじい攻撃量を可能としていた。
いよいよ受けきれなくなりダメージを貰うラプノマ。食らって瞬時に後方へ飛んだ。
「このままではジリ貧で負けだな。残しておきたがったが仕方がない。ここで使うとするか」
「むっ」
ラプノマが服を脱ぎ始める。と、脱いだところから光が漏れる。いや、光なんて生易しいものではない。眩しすぎて見えない。
「私は常光人族のラプノマ。身体能力が高い種族だが、持っているスキルは1つだけ。さらにSPが無くなるまで常に光り続ける。敵味方関係なく目潰し行為を行うから常に光がもれないよう特殊な服を着ていたのさ。魔法陣? それはただの趣味だ」
ふむ、魔法陣は厨二的なものか。冗談はさておき相手が見えないってのはきつい。このレベルだとなおさらだ。それから「身体能力が高い」という個性を持つが弱点としてスキルは1つだけ、常に垂れ流しって言ってたな。亜人にはよくある話だが彼の場合はスキルとは噛み合っているんだよね。目くらましをしながら攻撃だから強力だ。そんなに弱点になってないな。
打撃音が聞こえる。しばらく音が続き、遂には音が止んだ。決着か? しかし、まだ眩しく目で見て確認できない。
「終わりました。私の勝ちです」
女の子が大声で勝利宣言を。ということはラプノマは負けたのか。防御力が高そうだったからな、ラプノマでも防御を固めたガトラを破ることが出来なかったと言ったところか。馬車がこちらに近づいてきた。
「男性が1人倒れているようだ。それにしてもまぶしっ!」
彼を保護しようとしている人たちが苦戦しているようだ。ずっと光っているからな。彼らは目をつむりながらラプノマの服を着せ、ようやくあたりは通常の状態に。ああ、でもまだ後遺症が残っている。それほど彼は眩しかった。
「勝者ガトラ!」
一応確認をしてからガトラの勝ちを宣言。
決勝は彼女とか。
決勝戦は3日後。それまではのんびりと過ごすことに。
そして決勝当日。




