56 猛者続々
今日の試合はすべて草原闘技場でおこなわれる。残りの全試合を見ることにした。この後戦う相手が出てくるわけだ、見ておいたほうがいい。勝った人は残っていてくれと係員に言われているのもあるけれど。
「Bブロック決勝! ランスマスタープチフ対瞬殺のコクウ!」
この試合の勝利者が次回俺とあたることになる。じっくり見させてもらうとしよう。
プチフはその名の通り槍の使い手。通常の槍はもちろん、ハルバード、投げ槍、十字の槍と様々な槍を使いこなす。彼の周りにはたくさんの槍が地面に突き刺さっている。
対するコクウは今までどんな相手も瞬殺してきた超強豪。彼がシードを倒した男だ。今大会屈指の謎に包まれた男で、毎回開始とほぼ同時に相手が倒れ、身動き1つとらずに勝利を手にしている。
装備しているものはバグ・ナクに似た武器と、軽装な防具。近接格闘タイプかな? ものすごい速さで動いているかスキルを放っているのか。考察は尽きない。まずは目で確かめるとするか。
馬車が見えなくなり試合開始。開始と同時にプチフがその場に倒れた。今回もコクウが瞬殺か。うーん、スキルを使ったような気配はあった。口元が動いていたからね。
身体はまったく動いていないと思う。俺の目でもまったく動きを捉えることは出来なかった。超スピードなどではない、はず。もし動いていたとしたらお手上げだな。
ふむ、強力なスキルを持っているといったところだろうか。後で対策を考えなくてはな。
「Cブロック決勝! 消剣のナトキン対暴れ戦棍ラプノマ!」
ナトキンは王子と仲の良い冒険者。消剣とは剣を振るう速度が早いため消えて見えるところから。
対してラプノマ。雷神カイネを倒したのは彼。とんでもない身体能力、これだけで勝ち上がってきたようだ。相変わらず魔法陣付きの衣装を身にまとっている。
試合開始。
開始と同時にナトキンが剣で攻撃を仕掛ける。確かに速い。剣が消えているように見える。しかし、これを楽々と受けるラプノマ。彼は強いな。
「ちっ、強すぎるぜ。しゃーない、決勝まで残しておきたかったが奥の手だ。「サイファーブレイク」」
剣でラプノマを、いや、握っていたはずの剣がない? 本当に消えている。見えない斬撃がラプノマを襲う。
ラプノマはこれに対し、かなりの間合いを取り逃げに専念。どういう原理かわからないが剣が見えなくなっている。が、剣は確実にそこに存在している。そうだな、俺もこの場合は間合いをとって戦うかな。
「くそっ、当たらん」
焦りからかナトキンが大きく空振った。その瞬間をラプノマは見逃さず、一気に近づきメイスをナトキンの鼻先に突きつける。
「まいった」
ラプノマの勝利。またもや身体能力だけで勝ってしまった。彼も謎が残ったなぁ。
「Dブロック決勝! エニスの盾チナンメン対八尾竜人族のガトラ!」
優勝候補チナンメン。大きな盾に重鎧。スクア戦時のときキマイラクラスの攻撃を楽々凌いでいた。
対戦相手、見た目はローブを着た普通の女の子。だが騙されてはいけない。彼女は数々の対戦相手を余裕でなぎ倒してきた猛者なのだ。彼女も優勝候補の1人。
草原に変わった装置が設置されていく。彼らは特殊ルールで戦うようだ。
そのルールは、アイテムは使わず防御し続け、最後まで立っていたほうが勝ちという一風変わったルール。しかしコレ盾持ちのチナンメンが圧倒的に有利なのでは? いや、受けたってことは勝算が。それよりもプライドが高そうなチナンメンが自分に有利な提案を? それほどに彼女が強いのか?
(やれやれ、このルールなら何とか勝てそうかな。プライド? 欲? そんな物はパーティの盾をする者なら不要なもの。不要どころか邪魔なもの。まだいけると欲を出し、散っていったパーティ。このくらい倒せるとプライド高く死んでいった奴ら。それではいけない、盾ならば真っ先に逃げる算段を考えなくてはならないのだ。そして戦いが有利になるよう心がけること。今回のようにな。今回もいつもと同じさ。いつもどおり生き残るだけさ)
「開始!」
合図とともに投石機からチナンメン、ガトラに向かって石が飛ばされていった。まずは小さめの石。2人とも余裕で耐えた。徐々に大きくなる。投石機が先にダウン。石の重量で投石機が壊れてしまった。
次はシードが。石を持ち上げ彼らに投げ飛ばした。しかし、大きな岩でも彼らはびくともしなかった。
そこで硬い金属。これを彼らに浴びせた。これは強力なようで、チナンメンが地を削りながらその場から後ろに。それでもダメージはないようだ。
ガトラは。まったく動いていない。涼しい顔で金属球を受けている。




