52 音速を超えろ
試合終了後、草原闘技場宿泊移設に戻る。道具袋から書き写しておいた対戦表を見る。
ちなみに戦闘する場所は4つある。草原と、国が所有する闘技場、ギルドが持っている闘技場、川の水を闘技台のまわりに流している場所。基本ココと国の闘技場を使い、水棲系の亜人なら水上闘技場、時間がかかりそうで今日中に終わらない場合はギルドの闘技場を使う。
俺はAブロック第2試合で草原。第1試合は国の闘技場、つまり次の対戦相手を見ておきたくてももう終わっている可能性が高いな。残りの試合はと。草原1つと水上闘技場1つ、他は国の闘技場か。
ここから水上闘技場までは近いが、国の闘技場まではかなりの距離がある。下手すると全試合が終わってしまうくらいに。
水上闘技場の試合は今日1つだけ。となると動かずに草原で試合を見た方が良いか。「優勝候補」と目されている人物がこれから戦うしな。
ほどなくして、次の試合参加者が草原闘技場へ。俺はある程度見える位置に座り、彼らの戦いを見ることに。
「それでは第2試合! 炎の魔術師、覇炎リラオガ対、農耕戦士、スナーラ!」
今大会優勝候補の1人、リラオガ。俺と同じくらいの歳、短髪の男。彼のことは知っている。スクアでの戦いで一緒に戦っていたからだ。彼も俺と同じように、1人でキマイラクラスと戦っていた。強いのは間違いないだろう。
「見えなくなったら始めてください!」
馬車が見えなくなり試合開始。開始とともにリラオガの周りに炎がまとわりつく。「ヒッ」と対戦相手。相手があきらかに怯えてしまっている。うーん、残念ながら勝負になっていないようだな。彼は強者で有名だからな。動きからして、戦う前から名前で負けてしまっているように思える。
「プロミネンスクラッシュ」
「ヒィ!」
リラオガがスキルを放つ。スナーラは悲鳴を上げその場に座り込んでしまった。それを見たリラオガは炎の軌道をそらし、スナーラに当たらないよう配慮。馬車がこちらへ向かってきた。
「勝負あり! 勝者リラオガ!」
「やはり彼も強い」
正に圧倒的。戦いはリラオガの勝利で終了した。確かこの戦いは、Aブロックの最終戦だったな。ということは勝ち残っていけばAブロック代表を決める戦いで当たる可能性が高いわけだ。
戦いを見届け、俺は闘技場へと向かった。予想通り、戦いはもう終わってしまっていた。
次の対戦相手を確認しておこう。えーと、第1試合の勝者はダニドル。んー、確か特別枠の亜人の人か。
翌日からのB、C、Dブロックは草原で戦っている人達を見ることにした。
そうなんだよな、よくよく考えなくとも闘技場を破壊してしまうほど強い人はここで戦うことになるわけだ。となると勝ち抜けてくる可能性が高いよね。おお、俺って頭脳派!
勝ち残リ組で知っている人はアルベル王、その仲間、雷神カイネ、エニスの盾チナンメン、巨人族のシード、霧。他もかなり強そうで、ほとんどが力を出さずに圧勝していた。ここで戦った人の中から、誰が勝ち上がってくるかは正直わからなかった。
ミアたちも勝ち上がったようだ。彼女らもかなり強いからな。
そして、Aブロック2回戦が始まる。俺は今回も草原。多分毎回だろうか。
「Aブロック2回戦第1試合! 仮面の英雄サイゴ対音楽の国からの使者、ダニドル!」
音楽の国からか。お腹が結構出ているなと思っていたが、もしかしてそれを楽器にするのかな。馬車が見えなくなり試合を開始する。
「いきますよ」
一声こちらにかけてお腹を叩こうとするダニドル。やはり腹が打楽器のようになっていたのか。そして手で叩いて音を出すわけだ。なんだか嫌な予感がする。
手が腹に当たる前に後方へ猛ダッシュ。音が聞こえないくらいの位置まで逃げた。
「ほぉ、勘がいいのか、運がいいのか。何にせよ、よく逃げたものだ。あの音を聞いて、もし効果が出てしまったらサイゴの負けだったからな」
「しかしどうやって逃げたんですかね」
「簡単な話だ。音より速く走って逃げただけだな」
「音、よりはやい? そんな事が可能なのですか」
「うむ。現にやってみせたわけだからな」
「そ、そうですね……」
相手の近くまで戻る。ダニドルは諦めたかのように両手を上げこちらに話しかけた。
「気がつきましたか。まさかあの位置から逃げられるとは思いませんでした」
「ショックスタン」
スキルを入れて杖で叩き相手を気絶させた。
そしてやはり、口ぶりからして何か特殊なスキル技だったようだな。一応ステータスが高いから効かないとは思うけど、こういった相手は厄介だ、今後も気をつけよう。
「勝者サイゴ!」




