5 強すぎる
では杖で大岩を叩いてみよう。叩きつけようと杖を振りかぶる。いや、まてよ。さすがに木製の杖では折れるよな。ゲームじゃ折れないけれど。あれは不思議だね。中には耐久度があるゲームもあるけど。まあリアルに寄せれば面白くなるってわけじゃないらしいし、ここは気にしても仕方がないか。
道具袋から使えそうなアイテムを探す。硬い武器、となると強力な武器がいいかな。ゲーム後半で手に入る「デストロイヤーロッド」という武器を取り出した。
『装備できません』
駄目か。ステータス数値は高いから装備できるかと思っていたが。となると基礎数値が低いからかな。なんにせよ無理ならば仕方がない、他の武器を探すか。
低ステでも装備可能で頑丈そうな杖を探す。
「アイアンロッドってやつがあったハズ。あ、アレは店売り品だっけ。なら売ってしまって持ってないか。んー、なかなかみつからないな。お?」
みつけた。「ハンマーロッド」。鉄製で硬いはず。道具袋から取り出す、問題なく装備できた。名前の通り、先端はハンマーのようになっている。力試しには最適だな。
ハンマーロッドを振りかぶり、大岩へと叩きつけた。当たった瞬間、大きな衝突音とともに大岩を粉砕。
「やはり、力がつきすぎたか。それにしてもとんでもない破壊力だ」
「どうしました!」
遠くから声が聞こえた。派手にやりすぎたか。女の子二人が走ってこちらへ。
逃げようか? いや、もうかなり近くまで接近してしまっていて顔も見られた。逃げると余計ややこしくなりそうだ。ここは残ってうまく説明する方向でいこう。
「お兄さん大丈夫? これは!」
「岩が砕けて!?」
砕け散った岩を見て驚く2人の女の子。どうやって説明をしようかと考えていると、彼女たちは俺に背を向け2人で相談を始めた。
(この岩を彼が?)
(ほぼ間違いないわね。あの武器に岩を破壊した形跡がある。とするとこの人が)
「もしかしてギマさんですか?」
「いや違うけど」
「そうですか」
また2人で相談を。それにしてもギマさんの名前を聞くとは。有名なのかな?
ほどなくして話し合いが終わり、金髪ミディアムショートの子が真剣な目でこちらに話しかけてきた。
「我々は腕試しの旅をしている者です。かなりの腕前とお見受けします。よろしかったら一手、ご享受願えませんか」
「ええっ!?」
いきなりなにを。混乱している頭を整理する。腕試しをしたい、俺と戦いたいってことだな、うん。
どうしよう、断るか? いや、俺としても戦闘は経験しておきたい。早ければ早いほうがいい。襲われていきなり実戦になる可能性もある。ゲームじゃ最初の村や街ってよく焼かれるからな。
それとさっきの大岩殴りで加減はわかった。ここはひとつ試してみるか。
「いいよ、やろう」
「ありがとうございます! あなたのお名前は?」
「リクだ」
「私は不死鳥人族のミア。勝負!」
言うが早いか、こちらに飛びかかってきた。飛び蹴りだ。
それにしても素早さが上がった影響だろうか、まるでスローモーションの映像を見ているように、彼女の動きがゆっくりに見える。これなら余裕で避けられそうだ。一応隠し武器等を警戒して大きくかわそう。
そのまま走ってミアの後ろ側に。
「はやい、加減の必要はなさそうね!」
着地後こちらに向き直り構えるミア。
金属製の小手とすね当てと靴。他は軽装、手にはオープンフィンガーグローブのようなものを装着している。体術使いのようだな。
「フェニックスフォーム!」
スキルを唱えると彼女から赤い闘気が。髪の毛も赤色になっている。
前屈みになり、その姿勢のままこちらに接近、先程よりもあきらかに速い。このスキルは「バフ」かな。バフとはスキル、アイテムを使用し「一時期な能力の強化」を意味する言葉。
「ブレイズゲイザー!」
地を這うような軌道からアッパーカットが。その拳には大きな炎がまとわりついていた。
これは攻撃スキル。そうか、亜人か。人間では一種系統のスキルしか使えないが彼女たちのように人ではない「亜人」と呼ばれる者達は基本的に何でもあり。ただし、それなりのリスクを背負っていることが多いが。
炎の塊が俺を襲う。が、これを難なくかわし反撃の体制を作る。
小手に軽く打ち込めばいいかな? 杖を振り回し彼女に当てる。
「アゥッ!」
鈍い金属音とともに彼女の体が吹き飛ぶ。空中で回転しながら体勢を立て直し、地面に着地するミア。
俺の攻撃を受けた左腕は力なく垂れ下がっている。見たところ少し腫れているくらいかな、良かった。
「参りました……」
「本気のミアが子供扱い! ふふ、強いじゃないか。今度は私の番だ。私は有翼人族イリス、勝負だ!」




